“幻の魚”を30年ぶりに捕獲 生き物系YouTuberが起こした歴史的快挙の数々を振り返る

 生き物系YouTuber・マーシーが、大阪・淀川で撮影中に大阪では約30年間見つからなかった幻の魚「ツチフキ」を捕獲し、論文に掲載されたことを報告した。今回は、マーシーの快挙を中心に、生き物系YouTuberが伝える歴史的な発見と動画の意義を紹介したい。

 マーシーは、自身が運営するYouTubeチャンネル「マーシーの獲ったり狩ったり 」(チャンネル登録者数39.3万人)で、釣りや投網、外来種駆除などに関する動画を投稿する生き物系YouTuberだ。普段は琵琶湖をフィールドに生態系保全活動にいそしみながら、生き物の魅力や問題点を視聴者にわかりやすく解説している。

 とくに同チャンネルでは「ガサガサ」と呼ばれる網で生き物を追い込む企画が人気で、4時間で3452匹のウシガエルを大量に捕獲する動画が反響を呼び、大きな話題となったこともある人物だ。そんなマーシーが2024年1月3日に投稿した動画で、かつて捕獲したツチフキと自身の氏名が論文に掲載されたことを発表し、ちょっとした話題となっている。

 マーシーによると、該当の個体を捕獲したのは2022年8月のこと。琵琶湖博物館学芸員・川瀬成吾氏らとともに大阪の淀川を訪れたマーシーが、外来魚を捕獲し、保全活動を行う様子を撮影していた際の出来事だったという。

 今回の動画では投網にツチフキがかかったときの様子が公開されているのだが、なんと大阪でツチフキが発見されたのは1994年以来のこと。約30年ぶりの大発見に川瀬氏も「超絶レア」「淀川でツチフキはほんとヤバいです」と発言する一方、マーシーは前日に琵琶湖でツチフキを捕獲していたため、まったくといっていいほど驚きはなし。「俺ヨドゼゼラの方が欲しい……」と、お目当ての魚が捕獲できずに少し残念そうに見えるのが面白い。

 今回の論文掲載という快挙についてマーシーは、「偶然も偶然」としながらも、「光栄なお話です」と感想を述べている。なおマーシーが捕獲した個体は、30年ぶりの発見であることを証明、研究する目的で琵琶湖博物館で標本にされ、現在も同館に保存されているとのこと。そのほかにも同館には、マーシーがこれまでに捕獲、寄贈したアフリカの古代魚・ポリプテルスの仲間やアピストグラマの標本も保管されているという。

 なおツチフキを発見、捕獲した様子を収めた動画は、「マーシーが捕獲した」という証拠として、大きな意味をもつコンテンツとなったことが、この動画から読み取れる。

 今回取り上げたマーシーをはじめ、YouTubeの生き物ジャンルには、おろちんゆーやうごめ紀、ちゃんねる鰐など、人気クリエイターが勢揃い。彼らのチャンネルでは、珍しい種や絶滅危惧種に指定されている生き物に遭遇する、貴重な瞬間を収めた動画がたびたび公開されている。なかでも、おろちんゆーが日本固有種で、見つけるのが困難といわれる蛇「ジムグリ」を発見した動画は238万再生を突破。

【激レア】山の中で珍しいヘビに遭遇した

 うごめ紀が50年間使われていなかった井戸から未記載種(新種とほぼ同義)の可能性があるヨコエビを発見した動画は、152万回再生を記録するなど注目の高さがうかがえる(数字はどちらも1月11日時点)。

50年も使われてない井戸からスゴイ生き物が…

 生き物系YouTuberたちの動画は冒険心がくすぐられるようなものが多い印象だが、マーシーの今回の大発見から、YouTuberたちが珍しい生き物を発見する動画が、ときとして生物の研究にも大きな影響を与えるケースがあることがわかる。滅多にお目にかかれない生き物たちとの遭遇という歴史的な瞬間を収めた動画は、エンタメという枠を越え、世界中の視聴者や研究者にロマンを伝える、意義のあるコンテンツといえるだろう。

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