『ゲイと女の5点ラジオ』しょうちゃん×ヴァジャが語る“どこにも属せない私たちの番組作り”

『ゲイと女の5点ラジオ』流の番組の作り方

「5点の私たちのために、安心できる居場所をつくりたい」

――先ほど少しお話もありましたが、ポッドキャストを始めるまでの経緯を教えてください。

しょうちゃん:元々は私が働いていたゲイバーに、ヴァジャさんがお客さんとしてやってきて。でも仲良くなったって言っても、あくまでも店員とお客さんの関係というか。

ヴァジャ:プライベートで遊んだりすることはなかったよね。でもコロナ禍でお店が営業できなくなったとき「お店のためになにか情報発信できないか」という話になったんです。正直、途中からママはあんまり乗り気じゃなかったんですけど、私はもうなんか「この機会に日本中に発信しよう!」みたいなモードになっていて。たまたま音響や音楽の知識があったので「こんな機材を使って、こんなことをしたら」とか、色々としょうちゃんに提案してたんです。

しょうちゃん:で、じゃあもうお店は関係なく二人でやろうよ、ということでポッドキャストをはじめたんです。

――番組の方向性はどうやって決めていったんですか?

ヴァジャ:人って他人には自分のきれいな部分を見せたがりますけど、面白いのは人に見せたくない部分、隠しておきたい部分だと思うんです。実際、私が人生で経験したいろいろな失敗をゲイバーで話すと、みんなめちゃくちゃ爆笑してくれて。ゲイバー以外では、そんなこと話せなかったんですよ。なんか恥ずかしいし、多分ドン引きされるだけなので。でも、しょうちゃんたちに話して笑ってもらったら、すごく救われた部分もあって。それで、じゃあそういう人の醜いところとか、恥ずかしいところ、100点満点でいえば5点くらいの話をみんなでしようよ、と。それで5点ラジオです。

しょうちゃん:リスナーさんからもそういう5点なエピソードを送ってもらって「私たちダメダメだけど、何とかやってこうね」っていう。なので冒頭では毎回「生きること、お疲れ様です」と挨拶しています。

――番組内では「ネオおばさん」というコンセプトも提唱されていますよね。

ヴァジャ:30代も後半になってくると、「お姉さん」と呼ばれたときに、なにか気を遣われている感じというか、違和感みたいなものを感じると思うんです。かといって「おばさん」と呼ばれたいわけでもない。そんな話を二人でしてたんですよね。

しょう:その会話のなかで、なんとなく生まれたのが「ネオおばさん」っていう呼び方で。

ヴァジャ:本当はもっとカッコいい呼び方を考えたかったんですけどね。なにか横文字の。けど結局変えないまま、ここまで来ちゃったっていう。

しょう:前提として、私たちはおばさんたちのことをすごくリスペクトしてるんです。決しておばさんになりたくないわけじゃない。ただ、いまはまだ「おばさん」というカテゴリがしっくりこないので、その準備段階として「ネオおばさん」を名乗っているっていう感じです。

ヴァジャ:「おばさん」とは言っていますが、性別もあまり関係ないと思っていて。男女関係なく、自分の立ち位置がわからなくなる時期ってあると思うんです。年齢だけをみれば「おばさん」であり「おじさん」なんだけど、自分の感覚だったり、外見、社会的な立場がそこに追いついていかないというか。結婚していない人だと、特にそうじゃないでしょうか。

――「私はひとりでも強く生きていく」といった決意を込めた言葉ではない、とポッドキャストで話されていたのも印象的でした。

ヴァジャ:そうですね。たとえば私、あんまり友だちがいないんですけど「友だちなんていらない」と積極的に思っているわけじゃないんです。結婚にしてもそうですね。主義として独りであることを選んできたのならそれはカッコいいですけど、私は気づいたら独りだったっていう感じなので。だから誰かと一緒にいたいときもあるし、話を聞いてもらいたいこともある。そういうときに通っていたのが、ゲイバーだったんです。なんの約束もしていなくても、そこに行けばとりあえず誰かが話を聞いてくれる。私たちのラジオやポッドキャストも、そういう場所になればいいなと思っています。

しょうちゃん:本当にそうだよね。私は元々、いつか自分のお店を持ちたいと思っていたのですが、それもやっぱり居場所がつくりたかったからで。いまやっているのはゲイバーじゃなくてポッドキャストとラジオだけど、「どこにも属せるところがないな」と思っている人に居場所を提供したいというのが、一番の思いかもです。

――居場所をつくるために、意識していることはありますか?

しょうちゃん:誰かを傷つけるようなことは言わない、ということですかね。なんていうか、ゲイと言えば毒舌みたいなステレオタイプってあるじゃないですか。

ヴァジャ:おネエ言葉で毒を吐く、みたいな。

しょうちゃん:そういうのはポッドキャストでもラジオでも絶対やりたくないんです。あとは下ネタも。とにかく誰も傷つけない配信っていうのは心掛けていて。やっぱり誰もが安心できる居場所をつくりたいので。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる