ドレスを着たプリンセスが“魚釣り” レッドオーシャンの釣り動画は差別化が肝に?

 YouTubeでいま、プリンセスが釣りに挑む「悪食プリンセス グラトニーヌ」がじわじわと人気になりつつある。ドレスと可愛らしい声が特徴的なプリンセスは、一体どのようなクリエイターなのか。今回は、これまでの釣り動画と一線を画す「悪食プリンセス グラトニーヌ」の魅力と、釣り系コンテンツと広がりを解説する。

 「悪食プリンセス グラトニーヌ」は、“プリンセス”が釣りをする様子や魚を調理する動画を中心に投稿するYouTubeチャンネルだ。2021年8月にチャンネルを開設すると、可愛らしい外見と声で視聴者を魅了。チャンネル登録者数25万人を擁する、注目のクリエイターだ(2023年12月2日時点)。

 チャンネルで1番人気の動画である「現地調達ってこと…釣り具全部…。」をみてみると、冒頭で華やかなレースがあしらわれたドレスを着たプリンセスが登場する。釣り具を持参せず、調達したものだけで釣りを楽しむという企画説明を行うと、ドレスや端々に現れる「ですわ」といったお嬢様言葉で、視聴者を独特な世界に引き込んでいく。企画準備のため訪れた海岸では、マナーの悪い釣り人がそのまま置いていった釣り糸や針などを拾い、今回の道具として持ち帰る様子が写っているのだが、その服装はスカートやバレエシューズなど、釣り人とはかけ離れたもの。時折「くそっ」と悔しがりながらエサとなるミミズやナメクジを自らとる様子もまた、一般的なプリンセスのイメージとは大きく異なり、かなり興味が唆られる。

 釣り動画となると釣りの腕前も気になるところだが、プリンセスの釣りに関する知識や腕前はどうなのか。今回は海岸で拾った竹を釣り竿とし、そこに空のペットボトルを巻きつけてリールとして使うなど、アイデアが光っている。釣り針に生きているミミズをつける手際もよく、釣れた赤エイを締める手際もお手のもの。ほかの動画では、モリで魚を突く姿がみられることから、長年釣りを楽しんでいる経験者であることは間違いない。

 視聴者たちはこのチャンネルやプリンセスをどう見ているのか。コメント欄をみると、豊富な知識をもつプリンセスがサバイバルする様子に、「異色すぎておもしろい」「お嬢様が戦闘してるコンテンツは初めて」など、目新しさに言及する視聴者が多い模様。このチャンネルで、海に餌をつけた針を投げ込む際などに発せられる「ロイヤルエントリー」という言葉を、チャンネル登録に用いて「ロイヤルエントリーした」と表現する視聴者も出てきているなど、その世界観に魅了される人が徐々に増えていることが読み取れる。

 YouTubeには「釣りよかでしょう。」のような正統派釣りチャンネルのほか、「マルコス 釣り名人への道」などの女性YouTuber、釣りと魚調理をかけ合わせた「きまぐれクック」など、さまざまな釣り系チャンネルがある。釣りよかでしょう。は、巨大魚を釣る動画で人気を集め、マルコスなどの女性クリエイターは「釣り×女性」という意外性で、男性のみならず女性からの支持も大きい。きまぐれクックはというと、魚料理に重きを置くことでほかの釣り系チャンネルと差別化を図っており、釣りというジャンルのなかでも実にさまざまなチャンネルが存在することがわかる。

 この「悪食プリンセス グラトニーヌ」に関しては、お嬢さまという面ではVTuberの壱百満天原サロメが思い浮かぶが、釣りとプリンセスを融合させたものはこれまでにはない発想だ。ここにサバイバル要素を足してきたことも秀逸で、「釣り×プリンセス×サバイバル」という構図をもったこのチャンネルが今後、釣り動画のエンタメ度をさらに高めていく未来をも予感させる。釣りやサバイバルというプリンセスとは無縁なイメージをうまく取り入れたグラトニーヌは、YouTubeにおける“釣り界のプリンセス”として、釣り系ジャンルの可能性をさらに広げる存在といえるだろう。

関連記事