『スーパーマリオRPG』リメイクは“完全復刻版”に ファンの不安を杞憂にした模範解答

示された“原作リスペクト”の姿勢。杞憂だったファンが抱えていた不安

 とはいえ、『スーパーマリオRPG』は、もともと復刻が絶望視されていた作品。リメイク発表の折には、歓迎する声がある一方で、オリジナルに含まれる一部の要素が再現できないのではないかという懸念も、ファンのあいだでは広がっていた。実際に、バトル終了後に各キャラクターが見せる勝利のポーズは、諸般の事情から変更となっている。全方位的な面白さを備えながら、一部に尖ったネタを盛り込んでいた同作だけに、オリジナル版と寸分違わぬ形でのリメイクを望むファンには、不安材料も少なくなかったというわけだ。

 しかし、蓋を開けてみると、予想以上に原作をリスペクトしたリメイクであることが明らかとなってきた。オリジナル版に収録されたBGMと切り替えられる機能や、ほとんどが原作のまま再現されていた数々の小ネタなどはその一例。「ピーチのXXX」が削除されなかったことに、(文字どおり?)興奮したプレイヤーもいたのではないだろうか。

 なかでも、多くのファンに懸念されていたのが、裏ボスの「クリスタラー」について。スクウェアとのコラボタイトルらしい造形を持つ同敵キャラクターは、森羅万象を司る火・水・土・風のクリスタルを従え、マリオたちの前に立ちはだかる。オリジナル版では、バトル時に『FINAL FANTASY IV』の戦闘楽曲のアレンジ版「対クリスタラー戦」が、勝利時に「ファイナルファンタジー」シリーズから「勝利のファンファーレ」が、バトル後に同シリーズから「プレリュード」が、BGMとして流されていた。

 『スーパーマリオRPG』をめぐっては、任天堂とスクウェアのコラボ作品であることが復刻できない主な理由であると考えられていたため、「クリスタラー」の存在や、それにまつわるさまざまな要素は、「リメイク版で再現されないもの」と暗黙のあいだにカウントされていた背景がある。しかしながら実際は、それらもほぼ完全な形で再現されていた。オリジナル版の発売当時から並々ならぬ気概を持って制作されたことがわかる『スーパーマリオRPG』だったが、その精神は、リメイク版の制作にも脈々と受け継がれていたのだ。

 少なくないファンにその出来を心配されていたリメイク版『スーパーマリオRPG』は、27年ぶりに現代によみがえる“完全復刻版”と言って差し支えないものだった。今後は口コミでさらにプレイヤーを増やしていくことも考えられるだろう。そのなかには、原作を知らずに手に取る人も少なからずいるはずだ。このようにして新たな層にリーチし、その文化的価値を示すことこそが、リメイク/リマスターの意義だと言える。『スーパーマリオRPG』が示した結果は、同トレンドにおける模範解答と言うべきものなのではないだろうか。

© Nintendo/SQUARE ENIX  Characters: © Nintendo, © SQUARE ENIX

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