テレビからの逆輸入番組がYouTubeを席巻? とんねるず『みなさん』名物企画続編から考察
石橋貴明が自身のYouTubeチャンネル「貴ちゃんねるず」で、2018年まで放送していたテレビ番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ)の名物企画“買うシリーズ”の続編として、『コレ貴ちゃん買い取りまSHOW』を実施した。正統派の続編として、テレビからYouTube上に逆輸入したことが話題になっている。これまでテレビ番組のコーナーを本家がYouTubeへ逆輸入するケースはなかったが、なぜ逆輸入は行われてこなかったのか。今回は、上記の例から芸能人YouTuberによる逆輸入企画について考えてみたい。
2023年11月9日に投稿された動画では、「コレ貴ちゃん買い取りまSHOW」と題した企画を実施。この企画は『みなさんのおかげでした』内の“買うシリーズ”で購入した商品を、プロの鑑定士に鑑定してもらい、希望があれば実際に買い取ってもらうという内容だ。今回はMCをカンニング竹山が務め、かつて買うシリーズで時計を購入した武井壮、絵画を購入した芸人・永野のほか、ダレノガレ明美、KABA.ちゃん、芸人・みなみかわも出演。出演者たちがガチな査定結果に一喜一憂する様子を、博識な石橋が軽快なトークで盛り上げている。
動画を見た視聴者からは、「YouTubeなのにテレビと同じ感覚で見れるの凄い」といったクオリティを称賛する声をはじめ、「めちゃくちゃおもしろかった」とシリーズ化を望むコメントが殺到。さらにナレーションをテレビ同様、服部潤が担当したことで、コメント欄は『みなさんのおかげでした』の“完全復活”を喜ぶ声で溢れかえっている状態だ。
テレビ番組の逆輸入を遡ると、2021年2月にお笑いコンビ・ガレッジセールのゴリが、人気コント番組『ワンナイR&R』内の企画で生まれたキャラクター・ゴリエをYouTubeで復活させ、再ブレーク。さらに宮迫博之も同番組内で人気を博した、轟さんをYouTubeで復活させており、これまでもキャラクターの逆輸入が行われていたことがわかる。その一方で、石橋のようにコーナーを丸ごとYouTubeにもってくる事例はなし。芸能人YouTuberが増えるなか、コーナーの逆輸入はなぜいままで行われてこなかったのだろうか。
2023年11月9日に公開された動画をみてまず目につくのは、出演者の石橋はもちろんのこと、貴ちゃんねるずには『みなさんのおかげでした』で総合演出を務めたマッコイ斉藤が参加しており、テレビと同じ座組みで制作をしていることがわかる。さらに逆輸入にはテレビ側とのコネクションも大切で、さまざまなテレビ局で多くの人気番組を手掛けてきたマッコイの存在は大きい。今回の動画の撮影に協力したスカパー東京メディアセンターは、マッコイが番組審議会委員を務めるスカパーJSATグループ運営とあって、ここでもテレビ側とのコネクションが活かされている模様。“買うシリーズ”は、座組みやテレビとのコネクションをフルに活かし、権利などの政治的問題をクリアしたことで、YouTubeへの逆輸入が実現したというわけだ。
(参考:スカパーJSATグループ 2023年度上半期番組審議会)
今回のケースのように、本家がテレビ番組のひとつのコーナーをそのまま持ってくることは、複雑な問題もあり少しハードルが高いかもしれない。しかし仮に、YouTubeで芸能人YouTuberが人気コーナーを復活させることができれば、当時の視聴者とYouTubeで初めて企画を見る視聴者を巻き込めるため、大いにバズる可能性があることは、今回の完全復活劇で明らかになったのではないだろうか。今回の名物企画の逆輸入は、YouTubeの新しい時代の到来を予感させる、そんな出来事といえそうだ。