『Weekly Virtual News』(2023年11月13日号)
えのぐ・富士葵の独立に、おめがシスターズは“リアルの姿”へ――VTuber業界の変動は続く
岩本町芸能社の廃業、富士葵の独立――相次ぐVTuber業界の変動
VTuber業界の変動が続く。先週は業界の古株企業で、VRタレント特化の事務所・岩本町芸能社ががひとつ幕を下ろすことをアナウンスしたが告げられた。VRタレント特化の事務所・岩本町芸能社だ。VRアイドル『えのぐ』や、VRデュオ『Marpril』などを手掛けてきた2017年創業の企業が、2024年3月に倒産・廃業することが発表されたのだ。
そして、創業以来の所属グループタレントである『えのぐ』は、2023年12月末に独立し、自らが所属する合同会社を新設すると発表した。現メンバーである鈴木あんず、白藤環、日向奈央の3名が社員となり、経営にあたるとのことだ。
11月6日実施の配信は、さながら記者会見の様相を示した。質疑、応援、懸念。様々さまざまな声が飛び交うなか中、アイドルであると同時に経営者として、3人とも真摯な応対を心がけていた3人の姿が印象だった。平坦な道ではないことは本人たちも自覚しているようだが、「世界一のVRアイドルになること」という夢は、岩本町芸能社からしっかりと彼女へ引き継がれているのだろう。
『Marpril』もまた、岩本町芸能社の倒産・廃業にともない、フリーへと転向すると発表した。黎明期から業界を盛り上げてきたひとつの老舗が終わるものの、そこで育まれた才能(タレント)は歩みを止めない。順風満帆とは決して言えない事務所だったかもしれないが、黎明期を走りきったその足跡は、残された者たちの活動とともに記録されることを願いたい。
同じく、古株である富士葵とキクノジョーのコンビも、LOGIC&MAGICのサポートと、音楽レーベル『「Acro」』の所属を終了し、完全な個人活動へと転向することを発表した。円満な独立となったらしく、プレゼントや手紙の窓口業務はLOGIC&MAGICが好意で継続するもようだ。
今後はより音楽活動に注力するらしく、11月17日開催のワンマン「『Aria』」 が、新体制下での初ライブとなる。すべてを自分でこなす必要があるが、だからこそ自由な活動と表現ができる「個人勢」となった2017年来のVTuberは、どのような歩みを続けるだろうか。
先々週には、「HIMEHINA(田中ヒメ・鈴木ヒナ)」の運営企業・LaRaが、Brave groupとの経営統合を発表しており、2017年から2018年に産声を上げたVTuber・バーチャルタレントたちが、相次いで体制変更を続けている。おめがシスターズも「顔のマスク」を作成し、「リアルに会いに行けるVTuber」へと発展したばかりだ。長く生き、活動形態をも柔軟に変化させていく姿は、後輩たちにとってひとつの参考材料になるだろう。