新しい音楽の楽しみ方をもたらしてくれる「寝ホン」とは

「寝ホン」は新しい音楽の楽しみ方

 寝転がりながらでも音楽などを楽しめるリラックス向けイヤホン、通称「寝ホン」がこのごろちょっとした注目を集めている。

 そもそもは、普通のイヤホンのなかで“寝転がっても楽しめる”ものを(そういった用途で)使い始めたのがきっかけだが、BOSE『Sleepbuds II』のような睡眠導入用の音楽が流れるイヤホンが登場したり、寝転がって使うことを最優先にしたデザインの製品が誕生したりと、最近ではメーカー自らが“寝ホン”を謳うものが増えてきた。

 実際、寝転がりながら使えるイヤホンというのはなかなか便利だ。睡眠導入用としてだけでなく、寝転がりながら音楽を聴きたい人やタブレット等で映像を見聞きしたい人、自然と寝落ちするまで音楽を楽しみたいなどと言ったユーザーにとって、とても重宝する製品となっているからだ。ということで、今回は睡眠導入用ではなく音楽再生をメインとした、より幅広い活用ができるタイプを紹介していきたいと思う。

しっかりした装着感、快適な聴き心地 
AZLA『ASE-500』


 ドライバーとケーブルを除くすべてにシリコンを使用することで、寝ながらの使用とともに長時間の利用にも配慮された製品。ドライバーユニットはOLE WOLFF(オレ・ウルフ)社と共同開発した5.7mm径のダイナミック型を搭載し、ドライバー自体をシリコン筐体で包み込むユニークな構造を採用することで、小型化とフィッティング向上を両立させている。

 イヤーピースは、AZLAの最新モデル『SednaEarfit MAX』(SS/MS/ML)と『SednaEarfit MAX for TWS』(S/M/L)の計6種類が同梱されている。無印とfor TWSでは軸の長さが違うため、個人の好みや状況に応じてベストなフィット感を追求することができる。ちなみに、付属のポーチもシリコン製のものを採用するなど、オールシリコンにこだわった演出も心憎い。ラインアップは3.5mm 4極プラグ採用の「スタンダードモデル」に加えて、USB Type-C対応DACケーブルが付属する「UCモデル」、Lightning対応DACケーブルが付属する「LTモデル」の3バリエーションを用意。ボディカラーはそれぞれSky Blue、Black、White、Pinkの4色となっている。(形式:ワイヤード)

野村ケンジ的インプレッション

  シリコン素材のイヤホン本体は、耳からの出っ張りもほとんどなく寝ながらの使用にはかなり快適。寝転がっていても、装着時にズレてきて勝手に外れるようなことはなかった。イマドキのイヤホンはTWS(完全ワイヤレスイヤホン)が主流で、寝ホンも同じくTWSが多いものの、“朝起きたらどこかに行ってしまって見つからない”という状況を避けたい人には、こういった有線タイプがオススメだ。

 サウンドは、聴き心地のよさが魅力。フォーカスはしっかりしているものの刺激的な表現でもなく、ライト志向の軽快な音で纏められている。おかげで、ヴォーカルもアコースティック楽器も、自然な音色で聴き心地がよい。イージーリスニングや長時間楽しみたいひとにピッタリのサウンドといえる。

装着感のよさが魅力の
1MORE『 ComfoBuds Mini』

 1MOREは元Foxconnグループ会社に在籍していたメンバーたちが2013年に設立した新進気鋭のイヤホンブランド。同社は現在完全ワイヤレスイヤホンからヘッドホンまで多数のポータブル製品をラインアップしているが、そのうち「ComfoBuds」シリーズのひとつがこの『ComfoBuds Mini』だ。

 既存の『ComfoBuds Z』を寝ホンとしてさらに進化させたのがこちら『ComfoBuds Mini』で、さらなるコンパクト化を推し進めたほか、耳からの出っ張りを少なくして寝転がった際の装着感をグレードアップ。

 さらに、ケースも含めて小型化するなど、持ち運びの容易さなども向上している。また、睡眠導入用としても活用出来るよう、スマートフォンとの接続に加えてイヤホン本体に30種類のリラックス系サウンドを内蔵、アプリから操作を行うことでこちらを楽しむことが出来る。いわゆる、睡眠導入用とリスニング用がハイブリッドされた“寝ホン”に仕上がっている。

 ANC機能も搭載されており、バッテリー持続時間はイヤホン本体で最大6時間、専用ケースからの充電を併せると最大24時間の連続再生が可能となっている。小柄な専用ケースはワイヤレス充電にも対応しているのも嬉しいポイントだ。BluetoothコーデックはSBCとAACに対応し、IPX5の防水機能も持ち合わせている。カラーはホワイトとブラックの2色が用意されている。(形式:完全ワイヤレスイヤホン)

野村ケンジ的インプレッション

 イヤホン本体はとても小さく、軽快な装着感を持ち合わせている。長時間装着していてもストレスはあまり感じなかった。ただし、素材の成果表面加工のせいか、イヤーピースが少々落ち着かず、自然に落ちてしまうことまではないがやや不安定に感じた。お気に入りの市販イヤーピースに交換したほうが良さそうだ。

 サウンドは、クリアネスを意識したキャラクターで、音数の多さよりも表現力の高さや聴かせどころの絶妙さに配慮したイメージ。おかげで、ヴォーカルは距離感がとても近く表情まで感じ取れた。また、高域が刺激的にならず、リラックスして音楽を存分に楽しむことができた。“寝ホン”としてはベストなサウンドキャラクターと思えた。

超快適な装着感の”ながら聴きモデル”
GLiDIC 『TW-4000P』

 寝ホン利用を含め、ながら聴きを追求したミドルクラスのTWS。他に類のないユニークなイヤホン本体デザイン、ノズルレス&スティックレスなインナーイヤータイプ、シリコン製ジャケット採用など、装着時のストレスを最小限に抑える工夫が随所に採用されている。イヤホン本体同様に専用ケースも小さめで、メーカーは“販売数上位100モデルのうちケースサイズにおいて”最小サイズをアピールする。

 シリコン製ジャケットが“着せ替え出来る”点も面白い。本体カラーバリエーションはホワイトとブラックの2色だが、それぞれに専用の着せ替えカラーが同梱されていて、服とのカラーコーディネイトや気分、好みなどによって着せ替えをすることができる。なかなかユニークな発想だ。

 Bluetooth規格はVersion5.3に対応と接続性にも注力されているほか、SBCとAACコーデックに対応。連続再生時間はイヤホン本体が約6.5時間、専用ケースからの充電を合わせると約13時間使い続けることができる。IPX4の防滴機能も備わっている。(形式:完全ワイヤレスイヤホン)

野村ケンジ的インプレッション

 全くストレスフリーな装着感を持つTWSで、寝ホンだけでなく様々なシチュエーションで役立ってくれそう。ただし、インナーイヤー型が耳からこぼれ落ちやすい人は使いこなしに注意が必要。筆者もそうだが、ふとした動きで耳からこぼれ落ちてしまいそうになる。屋外などでの使用は諦め、この製品本来の目的である寝ホンなど室内利用をメインとすべきだろう。であれば、多くの人で問題なく活用できるはずだ。

 そのサウンドは、いい意味で普通のイヤホン。中域中心のバランスを保ち、ヴォーカルやメイン楽器がしっかりとした存在感を主張する。ワイドレンジさよりも音色を大切にしている印象で、高域の伸びは控えめだがヌケは悪くない。低域も最低限必要な量感は持ち合わせているので、装着さえしっかりできていれば不足に思うことはないだろう。総じて、ダラダラした姿勢で聴くにはもってこいの製品といえる。

快適な装着感のセミカナル型
ADV,『 Sleeper TWS』

 寝ホンを得意とするADV.は現在いくつかのバリエーションを展開しているが、そのTWSバージョンといえるのがこちら。イヤーピース一体型の(イヤホン全体を覆う)シリコンカバーによって、快適な装着感を実現するとともに、高い遮音性も確保。フィードフォワード型のANC(アクティブノイズキャンセリング)機能と相まって、低周波を中心に最大23デシベルのノイズ低減性能を確保している。また、イヤーフィンの採用によって耳からの脱落にも配慮されている。

 ドライバーは6mm口径のダイナミック型を搭載する。サウンドキャラクターはスリーピングモードとゲームモード2つのプリセットEQを用意し、自由に切り替えることができる。コーデックはAACに対応。本体のみで最大5時間、専用ケースからの充電を併せると最大15時間の連続再生が可能となっている。カラーバリエーションはなく、“グレーベージュ”といった表現がマッチしそうなアースカラー系の色合いが採用されている。

 シリコンで覆われているボディで装着感はなかなか良好。セミカナル型のためかイヤーピースがやや大きめサイズとなっているが、セミカナル型としてはベストな遮音性を確保出来るため、コンセプトとしては悪くない。ただし、筆者でもギリギリのサイズ感だったので、次のモデルではアジアンフィットのような小さいサイズのシリコンカバーを付属して貰えると嬉しいところだ。(形式:完全ワイヤレスイヤホン)

野村ケンジ的インプレッション

 そのサウンドは、けっして音数は多くなく解像度もそこそこなのだが、存在感をしっかりと主張するヴォーカル、充分な広がり感を持つ音響空間など、絶妙なチューニングが施されていて音楽がとても躍動的に聴こえる。クラシックなどはややライトな音色にも思えるが、空間的な広がり感を充分に感じるので、これはこれで好ましい。

 いっぽう、ANCの効き具合は最低限とはいわないまでもそこそこのレベル。騒音レベルの多いところで使うためのものではなく、室内での睡眠時に利用するなど、あくまでもシチュエーションに合わせたセッティングとなっている。実際、室内での睡眠時に必要なノイズキャンセリングはこんなもので充分と思えた。

ウェアラブルデバイス然とした多機能さ
Anker 『SLEEP A10』

 イヤホン内部のスリープ用サウンドとスマートフォンからの音楽再生の2つが楽しめるようになっている製品。片耳約2.9gという超軽量のイヤホン本体を実現しつつ、イヤーフィン付のシリコンカバーや独自設計の2層構造イヤーピースなどを採用することで、圧迫感が少なく耳にやさしいフィット感に仕上がっている。

 環境音の自動検知して自動でスリープミュージックの音量を調節してくれる「ノイズマスキング」機能を搭載。ノイズを気になりづらくするというユニークな方法論で、より快適な眠りを実現しているという。また、睡眠時をモニタリングして入眠時間や起床時間、眠りの深さを記録してくれたり、入眠時に自動で睡眠モードに切り替わり再生していた音楽を停止してくれたり、起床アラームを鳴らしてくれたりと、単なるイヤホンというよりもウェアラブルデバイスとして大いに活躍してくれる製品となっている。なかなかの高機能モデルだ。

 BluetoothコーデックはSBCとAACをサポート。連続再生時間は音楽モードが最大6時間(専用ケースからの充電を合わせると最大47時間)、睡眠モードが最大10時間(専用ケースからの充電を合わせると最大80時間)となっている。IPX4相当の防滴性能も備わっている。
(形式:完全ワイヤレスイヤホン)

野村ケンジ的インプレッション

 イヤホン本体のサイズがかなり小型なので、装着感はとても軽快、長時間の装着時にもストレスは少ない。ただし、主にイヤーピース部分で本体を支える構造のため、耳穴に負担が集中することから、ひとによって好みが分かれるかもしれない。

 そのサウンドは、“リラックスミュージック”という表現がピッタリ当てはまる聴き心地のよさ。ヴォーカルも各楽器の音色もしっかりと伝わってくるが、刺激的な表現がいっさいなく音楽に集中! というよりも環境音楽を再現しているといったイメージで、普段聞き慣れた音とはずいぶんと趣が異なる。とはいえ、フォーカスが甘かったりディテールが伝わらなかったりすることはなく、充分な音質は持ち合わせている。見方を変えると、BGM的に楽しむことに最適なサウンドといえるかもしれない。機能性も含め、“寝ホン”として活用するには理想的な製品のひとつだ。

【野村ケンジ的総評】

 このように、“寝ホン”と呼ばれる製品は特徴的な音や機能性を持つモデルが多く存在している。結果として、ユーザーの環境や使い方によってベストな製品は異なってくるだろう。とはいえ、睡眠誘導と音楽再生を両立する製品がこのジャンルで優位性が高いのは確か。まだまだ始まったばかりの製品ジャンルなので、この先も機能、音質の両面で更なる進化が押し進められていくだろうから、今後の動向にも注目したい。

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