にじさんじ・長尾景に感じる“親近感”の正体とは フレンドリーかつ現実味のあるパーソナリティが共感を呼ぶ
垣間みえる高いポテンシャル 先輩・フミとの「フ景罪」とは
なにかしらの物事に取り組むとき、1つの物事だけに専念することをシングルタスク、同時並行で2つ3つの物事を進めていくことをマルチタスクと呼ぶ。
マルチタスクと一口にいっても、仕事で電話を受けながらメールの返信をする、会議に参加して会話に耳を傾けたり意見を述べたりしながら議事録も作成する、手元で何か作業を進めながら他の人たちに指示を飛ばすなど、その形はさまざま。
基本的には簡単なタスクを複数こなすことがイメージできるが、長尾のように“まったく別種のゲームを同時にプレイしてクリアする”というのは、並大抵のことではないはずだ。
長尾景はこれを配信のスパイスとして取り入れ、“マルチタスク芸”として披露してみせたことがある。
たとえば、時限爆弾のマニュアルを見ることのできるサポート役と、そのサポートをもとに爆弾を解除するゲーム『Keep Talking and Nobody Explodes』と、超定番レースゲーム『マリオカート8 デラックス』を同時にプレイし、ステージクリア&CPUに勝利することはできるだろうか? 長尾景ならどちらのゲームも同時にクリアできてしまうのだ。
そもそもゲーム配信という行為自体が、「ゲームをプレイする」「送られてきたコメントを読み、返事をする」という2つをこなすことが常に求められるマルチタスクな行為でもある。想像以上に大変な労力がかかるのは想像に難くない。
それにくわえて2つのゲーム、うちひとつは2人のプレイヤーがシングルタスクで取り組んだうえでクリアできる/できないを楽しむものだ。
つまりこの配信での長尾景の仕事量をかぞえてみれば「配信のコメントを見つつ喋る」「カートを操作する」「爆弾解除のマニュアルを読んで理解する」「爆弾を解除する」と、4人分の仕事量を一気にこなしていることになる。
しかも、実際には爆弾解除のマニュアルを暗記したうえで挑戦しているので、場合によっては思い出すのに脳のリソースをさらに割く必要があるだろう。
恐ろしいことに、長尾はこの挑戦を約1時間ほどの配信内ギリギリで達成したわけでもなく、何の変哲もなく平然と2つのゲームをクリアしている。しかも、何度もだ。
このような作業量を難なくこなしていけるのは、長尾景本人が持ち合わせるスキル・ポテンシャルが抜きんでていることを示している。
とはいえ、彼の抜きんでた能力は主役を張るときではなく、サポート役を務めているときだと感じるファンは多いはず。彼がソロ配信ではなく複数人以上のコラボ配信も多くこなすからだろうか。
長尾は多くの面々とコラボ配信をおこなってきたが、なかでも彼を一躍有名にした人気コンビがある。前述した先輩・フミとの「フ景罪」だ。
彼らの公式プロフィールにもある通り、フミは神社に祀られている神様で、長尾景は魔を討伐する祓魔師。ジャンルでいえば、どこか距離感が近そうな2人なのだが、実際に交流を深めるキッカケとなったのはデビュー直後のやりとりにある。
「ホントに神様……? やっぱり化け狐なんじゃ……?」という軽口を端に発したコミュニケーションは、フミによる公開天罰(2人でのコラボ配信)となって形になったのだ。
プレイするゲームは『マリオカート8 デラックス』で、「今日は俺が勝つわけにはいかない。忖度していく!」と配信序盤に早々と宣言。
くわえて事前に「どのくらい走れるのだろう?」とフミの過去配信をチェックしたところ、どうやっても自分が勝ってしまうことにも薄々気づき、参加するリスナーにも「フミさんを良い感じに勝たせるように忖度プレイしてくれ!」と要望を出し、参加リスナーと長尾の両者でフミを勝たせようとしていくことになった。
高圧的な態度を見せつつも、その実ゲームはあまり得意ではないフミ、下手な態度をとりつつ“わざと負ける”接待プレイと実利的なアドバイスを送る長尾。
この2人による組織・社会上の上下関係をまるでトレースしたかのようなリアリティある関係性・繋がりは、その後数年に及ぶコラボ配信・ふたりの関係性におけるコアとなり、多くのリスナーを笑わせ、愛されるコンビとして知られていくことになっていったのだ。
ちなみに、先に述べた『Keep Talking and Nobody Explodes』と『マリオカート8DX』を同時にプレイできたのも、フミとのコラボ配信に向けて長尾が爆弾解除のマニュアルを暗記してしまったことがきっかけであったりする。
「フ景罪」での活動だけでなく、『Minecraft』で桜凛月、セフィナ、先日にじさんじから卒業したナラ・ハラマウンと結成した「めにまにカンパニー」などでも、自身の高い能力・パフォーマンス力を、サポート役として周囲に還元しつづけていこうとするが見られるはずだ。
そんな自身の高いポテンシャルを活かすようにスタートしたのは、英語習得だ。海外タレントも増えてコミュニケーションする機会も多くなったことを考え、自身の英語力を磨くために「誕生日までに英語で会話できるようになるケイナガオプロジェクト」と称し、海外在住のメンバーと英会話をする企画配信をスタート。
メキメキと英語力を高めたことで自身のスキルアップという狙いもしっかりと果たし、現在では日本語、英語を両方操れる貴重な日本側のタレントとして公式番組やコラボ配信などに「喋れる組」として呼ばれることがしばしばあるほどだ。
「滅私奉公」「スキルアップ」というとすこしビジネスライク過ぎるかもしれないが、彼の配信で感じられる現実味あるフィーリングは、筆者としてもかなり共感を覚えるところなのだ。