なぜ我々はにじさんじ・不破湊に“沼って”しまうのか 天性の人たらしが持つ「底知れぬ魅力と独特の空気感」について考える
現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。
メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ数年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加してきた。
育成プロジェクトであるバーチャル・タレント・アカデミー(VTA)からも新規ライバーがデビューし始めており、現在約150名のメンバーが所属・活動しているにじさんじ。その層の厚さで今後も大きな影響を与えるだろう。
今回記していくのは、にじさんじに所属する男性タレントでも屈指の人気者である不破湊だ。
2019年11月28日にTwitter(現:X)に初投稿し、11月30日にYouTubeで初配信をおこなって、グウェル・オス・ガール、白雪巴らとともにデビューした。
紫をキーカラーにしつつ、黒色と混じった深い色味を彩るスーツ姿や、スポーティな印象を感じさせてくれる戦闘服、太めのヘアバンドを巻いたラフなスタイルなど、デビューから現在までさまざまなビジュアルを披露してきており、その姿に多くのファンが注目している。
なお、彼のキービジュアルはデビュー時の衣装から変更されており、現在はスーツ姿を主に使用している。普段の配信でも見せてくれるそれは、「バーチャルホスト」という名を体であらわす、彼にピッタリな服装だ。
聞いているようで聞いていない? おっとりとしたムードでサラリとボケる独特の感性
不破湊といえば、話を聞いているようで聞いていない、返事をしているようでしていない、会話の合間に挟まれる独特の言い回しの数々……どこか不思議な雰囲気が魅力だ。そのくせ、関西出身ということもあって“お笑いのイロハ”をしっかりと熟知し、抑えるべきポイントではサラリとボケたがる。そんな一面に虜になるファンも多い。
会話や雑談の最中に唐突に繰り出される小ボケ・ツッコミは、にじさんじ内外のタレントはおろか、彼のファンやスタッフすらも置き去りにすることがしばしば。急発進・急停止・鋭いコーナリングが断続していくような独特のテンポは、見たものに「不思議な人」という印象を抱かせる。
一人語りが主となる個人配信と、多人数での会話が主となる公式配信とでは、トークの温度感がかなり様変わりするようにも感じられる。
男性タレントでホストというと、ハキハキとしたしっかり者なイメージや会話をリードしていくような姿を期待するファンも多いはず。だが以前までレギュラーとして活動していた公式番組『にじクイ』や、カジュアルなゲーム大会での不破湊を見ている人からすれば、しっかり者な一面よりも、どことなくゆるゆるなムード……言葉を選ばず言うならば“テキトーな会話”をしている姿を思い出すだろう。
その実、個人配信での彼といえば、自身の身の回りに起こったパーソナルな話題に触れるときや、ゲームをプレイしている際に思い通りにいかなったときでさえも、感情を爆発させることはかなり少ない。フラストレーションをしっかり抑え込み、繊細に言葉を選んで声に出すタイプで、安心して見ていられる人物といえよう。
もちろん、何度もそういったことが重なれば「おい! いい加減にしろぉ!」とキレ芸を披露することもあるが、どちらかといえば「ニャハハハ」と柔らかい笑顔を浮かべ、事も無げに状況をコントロールしてしまう姿の方が、筆者としては印象深い(だからこそ、唐突に発せられる天然ボケに笑わされてしまうのだが)。
こういったこともあり、リスナーからのコメントにリアクションを返していく穏やかな通常配信と、同僚らとの会話で見せるボケ主体の言動とでは、「不破湊」というライバーから受け取る印象がかなり変わるはずだ。