「占い」を主軸にした対話型ADV 選択が運命を動かす『The Cosmic Wheel Sisterhood』の画期性に迫る

 スペイン・バレンシアのゲーム開発チームDeconstructeamの新作『The Cosmic Wheel Sisterhood』は「対話型アドベンチャーゲームゲーム(以下ADV)」の魅力とメカニクスを「占い」をモチーフに見事に進化・深化させてみせた今日的な傑作アドベンチャーゲームだ。ここにはユニークで宇宙的な世界観、新機軸のメカニクス、普遍的かつ今日的なストーリーからしか生まれ得ない新しい果実があり、筆者は本作をここ数年にリリースされたADVの中でもきわめて大きな達成であると感じている。当記事では、本作の独自の魅力と画期性について評価・検証していきたい。

カード作成と対話

 『The Cosmic Wheel Sisterhood』は、1人の魔女の人生が織りなす壮大な、そして魅力的なキャラクターたちの様々な思惑が交錯する、閉じているようでいて「広がり」のある、不思議なADVである。

 主人公・フォルトゥーナは「コヴン」と呼ばれる魔女団から1000年間の流刑に処され(「彼女の予言がコヴンを壊滅の危機に陥れるから」というのが流刑の名目だ)、孤絶した居住空間(二階建ての、なかなか居心地良さそうな家であるが)に幽閉されていた。そこで地球時間にして200年という時を過ごした後、精神的限界から聖霊(的存在)ベヒモス・エイブラマーを禁断の詠唱によって召喚し、未知の契約——代償を支払い、エイブラマーをしもべとする——を結ぶことに同意する。

 元々、フォルトゥーナは我々にとっても馴染み深い「タロットカード」を操る有能な魔女だったらしいが、流刑に伴って保守的なコヴンの長・エイダーナにカードデッキを奪われてしまった。しかし優れた占い師である彼女は、自分だけのオリジナルカードを創作できる能力を得ていた。

 この「カード作成」が、本作におけるメイン要素のひとつである。カードは序盤から10種類以上作ることができ、作成できるカードはタロットでおなじみの四大元素(空気、火、水、土)によってその性質を変える。プレイヤーはカードを構成する3つの要素(スフィア、アルカナ、シンボル)を選択し、それらをカード上に好きなように配置できる。スフィアはカードの「背景」を、アルカナとシンボルは大きさや数、向きを任意に調整できるので、プレイヤーの個性とセンスを細かに反映することができる。

 カードを選択して、細かくデザインする作業は想像以上に楽しく、思わず時間を忘れてしまう(ただし、カードデザインの違いによってその効力やストーリーに影響が及ぶことはないようだ)。タロットや占いに触れてこなかったプレイヤーでも、心のおもむくままにカードを作成し、個性豊かな訪問者たちと対話を続けているうちに、本作がどのようなゲームなのか、そしてやるべきことを自然に掴むことができるようになっている。その意味で、非常に「入りやすい」ゲームだ。

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