『Weekly Virtual News』(2023年8月21日号)
「にじ甲」に「ぽんぽこ24」など毎年恒例の祭がつづいたお盆のVTuber界隈 VRChatには“身近になる”機運あり?
毎年恒例の祭がやってきたお盆
お盆期間ということもあり、直近のニュースは比較的まばらなほうだ。とはいえ、お盆の入口に開かれた「にじさんじ甲子園2023」は、例年通りの盛り上がりを見せてくれた。
練習期間は(パワプロの中とはいえ)甲子園制覇の監督も複数現れており、その意味では例年以上の強豪同士の熱い戦いが今年も繰り広げられた印象だ。毎年恒例ながらしっかり盛り上がるところに、このイベントがしっかりと根付いているのを感じられた。
その翌週に、こちらも恒例のVTuber企画「ぽんぽこ24」が開催された。甲賀流忍者ぽんぽことピーナッツくんによる24時間放送には、今年もVTuberをはじめ各業界から選りすぐりのゲストが集った。個人企画の中でも最大クラスのものが、今年で7回目の開催を迎えるところにも、VTuberというカルチャーの熱量を感じさせる。
ビブラスラップの自作でバズったヘアピンまみれや、パラレルシンガーとしてメジャーデビューを果たした七海うららなど、話題や旬のバーチャルを迎えることが多いのもこの企画の特徴だ。「POKOROCK '23」には注目を集めるバーチャルアーティストが一挙出演し、P丸様。のような越境的なポジションのゲストもいた。公募CMも合わせて、「バーチャルの最前線」を知ることができる絶好の機会が、「ぽんぽこ24」というイベントである。
業界の動きとしては、配信プラットフォーム『17LIVE』が、にわかにアバター投稿プラットフォーム「VRoid Hub」との連携を発表した。「VRoid Hub」に登録された(使用許諾の下りている)VRM形式のアバターで『17LIVE』上での配信ができるということである。これまでLive2Dなどには対応していた中で、興味深い動きである。
直近の『17LIVE』はVTuberへのプッシュを強めている。6月には公式のバーチャルガールズユニット「武士来舞(BUSHILIVE)」もデビューしており、バーチャル配信者限定のオフラインイベントも開催している。今回のVRM対応も、こうした強化施策の一環だろう。とはいえ、もともと『17LIVE』は2018年からバーチャル配信者の誘致を進めており、ここの配信だけで生計を立てたバーチャル配信者も出ているなど、下地のある環境であったことはおぼえておくとよいだろう。
韓国のバーチャルアイドル「ISEGYE IDOL」は好調だ。新曲「KIDDING」が、韓国音楽チャート「Melon」にて上位(一時9位にいたとのこと)にランクインし、好発進を見せている。
MVも「バーチャルな存在が現実で歌い踊る」というコンセプトとなっており、タレントのパフォーマンス力はもちろん、映像技術的な面でも注目に値する。各タレントの3Dアバターも、市販アバターからワンオフデザインのものへ置き換わりが進みつつあり、さらなる活躍に一層期待できる。
大手にとどまらず。国内にとどまらず。VTuberのシーンを盛り上げるプレイヤーは、年々増えつつある。それこそ、業界に深く関わる人ですら「あの人は何者?」と、時折口にしてしまうほどに。
モバイル版に体験型店舗。『VRChat』はより身近になる?
『VRChat』では、予告されていたモバイル版のα版がリリースされた。まずはAndroid版から、有料課金プランの加入者のみがアクセスできるため、いわゆるαテストと言える段階である。そこそこの端末スペックが要求されるほか、ワールドやアバターの表示制限はQuest版に準ずるため、一定の制限こそあれど、動作は比較的問題ないという報告が多い。
没入感はさほどではないものの、ソーシャルVRの「ソーシャル」の部分は、スマホ越しでもおそらく体感できるだろう。「アバターとなった世界中の人とのアクセス」を体験できる入口が、いよいよ『VRChat』に開かれようとしている。
同じく「VRChatの入口」として注目できそうなのが「スグバース」というサービスだ。こちらは「VRChatを体験できる店舗」というサービスで、予約して訪れれば誰でもVRで『VRChat』を体験できるというものだ。環境を整えるのがそこそこ大変なVRを、「ある場所に行けば体験できる」というのはなかなか便利だ。今秋よりサービスインとのことで、こちらも期待したいところだ。
『VRChat』の新たな進出事例として、台湾政府が「優れた台湾発製品」へ授与する賞「台湾エクセレンス」が名乗りを上げた。9月23日〜12月25日の期間限定で、バーチャルイベント「台湾バーチャルフェスティバル2023」が開催されるとのことだ。
『VRChat』にテーマパークを模した特設ワールド「TAIWAN EXCELLENCE WORLD」がオープンし、ゲームやアトラクション、台湾についての学習や、台湾製品の見学ができる催しになるとのことだ。日本にとっても身近な台湾について、楽しく知ることができるよい機会となるだろう。こうした大型の案件に、日本の著名なクリエイターも多く関わっているのは、もはや『VRChat』あるあると化している。
余談だが、8月17日にガートナージャパンが、恒例となる「ハイプ・サイクル」を発表した。メタバースは「過度な期待」にあった2022年から一転、NFTやWeb3ともども幻滅期へと進んでいる。「過度な期待」の後釜に君臨しているのは生成AIだ。余分な熱量は抜け落ち、メタバースは社会実装へ向けて歩みを進めている――これは、現場の動向を見ていても、たしかに感じるところだ。
『ぽんぽこ24 vol.7』開催直前 「これでファイナルです」VTuber界の枠を超えて注目されるイベントの見どころとは
VTuberの「ぽんぽこちゃんねる」が、2023年8月19日20時から翌日20日20時までの24時間、『ぽんぽこ24 vol.7…