視聴者を魅了した「VCR GTA」の筋書きなき展開 大盛況のイベントで生まれた反省と期待

「界隈がいずれ学んでいってくれる」大盛況だからこそ生まれる反省と期待

 この状況に配信者が思わず本音をこぼすようになったのは、企画も中盤にさしかかった5日目~6日目以降だ。

「捕まった側は当然言い訳をする」
「警察側の負担が大きいのは感じている」
「そっちからすれば一瞬のことかもしれないけども、こっちからすれば1時間とか平気に時間にかけている」
「一部の分かってない人らはおバカさん」
「この話を表でしないといけないくらい警察が可哀想な状況になっている。界隈がいずれ学んでいってくれる」

VCR GTA | 事件は寝てる間も起こってるぞ!!【にじさんじ/叶】

 だるまいずごっど、葛葉、叶、AlphaAzurが道路脇で一瞬語り合った会話は、リスナーに釘を差し、リスナーのコメントをたしなめる内容でありつつ、彼ら自身がこの企画をいかに楽しんでいるかがその口調からうかがい知れる。この4人を中心に10時間以上にわたってサーバーに入り浸る配信者が多く、この企画を心の底からを楽しんでいる状況だったのは太文字で記すべきだ。

 そしてこれだけ配信者たちが“ガチ”で楽しんでいるからこそ、ファンやリスナーも本気になって喜び、悲しみ、ゆえに怒る。瞬間的な感情の爆発を誘うほどに、この企画は悪魔的な魅力を持っていたのだ。

 そんな状況にあって、運営は毎日のようにルールや設定を変え、マンネリ化を防ごうと努力しているのが伝わってくる。

 7月26日ごろからはギャング側・警察側でもリスナー数・視聴者数が多く、組織の中心と目されていた配信者やVTuberがまったく別の職に就くことが増えた。特にギャング側として動いていた渋谷ハルが警察側に就くことになったことが知られると、なんとX(旧Twitter)トレンドにランクインするほどの衝撃的な一報となった。

「渋ハル警察」がまさかのトレンド入り

 複雑な心境を口にするリスナーがかなり多かったが、警察側・ギャング側の動きやさまざまある役職がどのようなものかを配信者/リスナーともに知れるキッカケにもなるし、なにより『GTAV』の奥深さを知り、楽しめるチャンスにもなったはずだ。

釈迦と見る、GTAストサバ爆笑クリップ

 

 さてこの企画が終了したいま、どういった影響・インパクトがあったのかをいくつか見てみよう。

 このストリーマーサーバーがスタートしたあと、ゲーム販売サイト・Steamの販売ランキングで『GTA V』が上位にランクインしただけでなく、全参加者の視聴者数が約42万人を超えた日もあったとのこと。

 配信関連の統計を取る海外サイト・Streams Chartsによれば、開催期間中だった7月4週目には、YouTube・Twitchでの視聴ランキングにはSHAKA、葛葉、橘ひなの、赤見かるびら企画の参加者が軒並み顔を揃えた。

 さらに、2023年6月にTwitchで配信されたカテゴリーでは雑談についで『GTAV』が2位となり、世界大会などで熱気を帯びている『VALORANT』『League of Legends』などを抑えてのランクインした。さらに、2023年6月にTwitchで最も視聴された男性・女性ストリーマーに、SHAKA、だるまいずごっど、関優太、赤見かるびの4人がランクイン。

「一国の人気ストリーマーを揃えて一斉に同じゲームをプレイさせる」この企画が与えたインパクトは、世界レベルで絶大だったかが伝わってくるはず。

 初回となった今回は、『RUST』『ARK』などの企画にも負けず劣らずの人気・注目を集めて大盛況となったが、一方で予期せぬほどの批判的なコメントが大量に投稿されるなどネガティブな側面も目立ってしまった。

 そんななかでも、プレイヤー・リスナーともに「めちゃくちゃおもしろい」「見ていて楽しい!」という声が次々と上がっている。先述した「ストグラ」へ参加する者もいれば、『GTAV』のストーリーモードを楽しむ者もでてきており、スト鯖GTAが与えた喪失感がひと際のようだ。

 おもしろいからこそ、反省点が見出せる。もしも今後数回にわたって企画が開催され、ルールの精査・プレイヤー同士の温度感・リスナーの理解度がそれぞれ進んでいけば、今回よりもっと楽しめる企画へと成長していくはずだ。

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