視聴者を魅了した「VCR GTA」の筋書きなき展開 大盛況のイベントで生まれた反省と期待

社会を回すための“ロールプレイ”の重要性が色濃くなっていく

 ロールプレイという言葉には、いろいろな意味合いが込められている。

 たとえば「ゲーム上の役職をまっとうする責務」だ。

 警察ならば人を守るために戦って罰する、救急であれば人の救助をする、トラック運転手になれば指定された地点に行き物資を運ぶ、コンビニ運営をすれば商品を入荷・販売するなど、社会を回していくためのロールプレイをしていくことが求められる。

 ならず者のギャングとして動こうにも、活動資金を稼ぐため仕事に就く者も多く、表の仕事/裏の仕事と分けて活動する者が見られた。

 表の仕事/裏の仕事の折り合いでカオスとなっていたのは救急隊であろう。

 一時的な入隊も含めれば20人~30人以上が参加していたが、最初から最後まで辞めることなく毎日のようにサーバーに入って活動していたのは10人ほどで、半分近くが何かしらのギャングと共に活動し続けていた。

 そのため、サーバーにインしているタイミングや折り合いが悪いと救急隊が2〜3人しかおらず、10時間以上にわたって救助のため街中を奔走するということもあったほど。27日午後には救急隊が1人のみで、その1人も死んでしまい、実質救急隊が0人となってしまうという状況にもなったほどだ。こういったこともあり、連絡を取り合っていた救急隊同士で仲良くなるあたたかな交流が生まれた。

 

 これが警察となると、より状況は厳しかった。事件処理は細かい部分まで記載が必要とされるために膨大な時間を割かざるを得ず、さらには事件事故が途切れなく発生し、プレイングも慣れて覚えるまでに時間がかかったりと、単純にかなり難しいロールとなったのだ。

 ロールプレイに加えてもう一つ、"自分はこのように動きたい""こうやって楽しみたい"という個々人の活動方針もまた重要になる。

 初めて『GTAV』をプレイする配信者にとって、先にも書いたようなゲーム内ギミックやアトラクションはかなり魅力的で、「もしも次があるなら、〇〇〇をやってみたい」と口にする配信者は数多かった。それだけでなく、「汚職警官をやってみたい」「事件や事故を起こさない善良市民になりたい」とキャラクター性にこだわったプレイングをしようとする配信者も見られるほど。

 メイドの服装で警察を厳しい口調とともに救助したかと思えば、10分後に事件を起こして文句を言いながら警察に捕まる。そんなプレイングが連続していったのは、彼らの“ロールプレイ”をうまくこなしたからに他ならない。

 少し突っ込んだ話を書こう。

 先にも記したように、『GTA』といえば"クライムアクションゲーム"。現実ではできない違法行為ができるからこそ楽しくておもしろい。それをウリとしているからこそ、参加する配信者の多くは違法行為をしようとギャングになったり、ちょっとした悪事に手を染める。

 つまりゲームの特性上、善よりも悪がフォーカスされているがゆえ、プレイヤーも視聴者も悪事を期待してしまいがちだ。そのなかであえて"善"側である警察をプレイするとなると、視聴者から批判的な声をぶつけられることも多くなる。

 くわえて配信を視聴するという行為による特性ではあるが、多人数が参加していてもあくまでも個々人の配信者を通してリスナーが楽しんでいるため、その配信者の立場・状況のみが視聴者に与えられ、相手側の事情はほとんど知りえないことが大半だ。

 しかも、サーバーがリセットされる時間は24時間のうちで10分ほど。視聴者はおろか参加している配信者たちも、警察・ギャングどちらかの状況・情報しか知らないのが常であった。

 たとえば、犯罪を未然に防ぐために警察側が張り込み調査を行ない、ギャング側も武器を揃えきったうえでこれから強盗スタート!というタイミングで、警察が突入して逮捕してしまうといった形が多くなった。

 警察側は張り込みに、ギャング側は武器の準備に、それぞれかなり時間をかけて準備してぶつかり合う見せ場であるのだが、虚を突かれた形となるギャング側が不利となって負けることが増えていくことになる。

 こういったケースが増えた結果、好きな配信者のハイライトシーンになる瞬間を潰され、怒った一部の視聴者が警察官側の配信のチャット欄を荒らすようになり、SNS上でも不平不満の声もあがるほどに。

 配信を見ているとどうしても生まれてしまう"一方に偏った情報・状況"にくわえ、警察やギャング同士の敵対関係、以前からの交友関係や信頼関係などが折り重なり、非常にアツい攻防や煽り合いが見ものとなる。

 だが、一部の視聴者からかなり攻撃的な口調のコメントが書き込まれる状況が生まれてしまった。この点は終盤までかなり尾を引いた。

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