szri×もちうつね、ボカロP歴わずか約1年のルーキーたちが語るVOCALOIDの魅力 「人間のネガティブな一面や尖った個性を大きな武器に」
「波の高い部分を当てるためにずっとガチャを回し続けてる」(もちうつね)
──先ほどの話の延長にもなりますが、もちうつねさんは曲のみならず映像もご自身で手がけていますよね。それはやはり創作の基盤に、ゲーム制作があったからなんでしょうか。
もちうつね:実はそれとは全く関係ないんですよ。元々ゲームを作ろうとした中で最初に音楽制作に着手したんですけど、そのまま音楽方面へと走り始めてしまったので……(笑)。アニメーションに関しては完全な素人のままです。
ただ、映像制作に関してはボカロに再燃したころ、いよわさんの作品に触れた影響がかなり大きいですね。いよわさんがご自身でMVを作られているのを見て、「すごいな、自分にも出来るかな」と思って。ある種の“自己洗脳”でここまで来た感じですね。
szri:ええーっ。すげえ……。
もちうつね:「おくすり飲んで寝よう」が実質初めてのアニメーション作品で、イラスト歴も1年半~2年ぐらいなので、まだ全然わかっていない部分も多いですよ。
──可愛い系統のタッチに関しては、きっかけになった作品などはあるんですか。
もちうつね:明確なルーツはないかもしれません。SNSで流れてくるいろんなイラストレーターさんの作品を参考にすることはあるんですけど、スタイルに関しては一から自分で生み出したところもあるというか。
正直、僕の絵って、お世辞にも綺麗な方ではないと思っているのですが、ただそのラフさも個性になり得ることに気づいて。だから最近は下書きも描かないで、直接描いちゃうことが多いですね。
──映像も楽曲も手掛けるとなると、トータルの制作にはかなり時間もかかるのではないかと思うんですが。
もちうつね:そうですね。自分を犠牲にしてというか、命を削りながら作ってるところはあります(笑)。最近はずっと、曲と映像を作って食う寝るをしてるだけ、みたいな生活をしてますね。
作品にもよるんですけど、1曲作るのに大体3ヶ月ぐらい、調子が良ければ2ヶ月ぐらいですかね。大体そのくらいはかかるんですよ。音楽自体は割とすぐできるんですけど、まだ成長途中というのもありイラストが苦手で。アイデアがポンポン出てくるわけじゃなくて、どうしても行き当たりばったりというか、偶然の産物であることが多いんです。今後その辺りは安定させたいですね。
──制作のリズムに波が出やすいんですね。
もちうつね:波の高い部分を当てるために“ずっとガチャを回し続けてる”、みたいな感覚です。90の出来のものは沢山浮かんでくるのですが、世の中に出すならばやっぱりそれを100にしなければいけないなというのもあって。そうするとどうしても時間がかかるので、そこが今後の課題だな、と。
──szriさんもやはりそういった状況になることはありますか?
szri:近しい部分はありますね。僕の場合は歌詞が全然出てこなかったり、メロディーがハマらなくてそこだけに時間使っちゃう、とか。メロディーと歌詞の音ハメなんかは得意というか、あまり苦労なくできるんですけどね。普段なら1ヶ月ぐらいとか、調子がよければ20日ぐらいで曲は作れるんですけど、「アナフィラキシー」に関しては2ヶ月ぐらいかかりました。
──そうした制作のなかで、意識しているポイントなどはありますか?
szri:サビのメロディーは特に力を入れて作っています。リスナーの方が何回も聴きたくなる、リピートしたくなるようなサビの制作に注力して、中毒性を出せるようにしてますね。
くわえて曲が始まってから、冒頭20秒以内にサビが流れるような構成も意識しています。サビそのものに力を入れるプラス、それをちゃんと聴いてもらえる導線作りも一緒におこなっていますね。音作りやミックスが少し苦手なので、そこをごまかすために構成を早くしているのもあるんですけど(笑)。
──先ほどもちうつねさんのお話の中でも、ミックスや音作りのことに触れていましたね。
szri:「アナフィラキシー」に関しては、初めてやる音作りだったこともあって、かなり時間がかかりましたね。ミックスをかなり丁寧にやったのもありましたし。
クラブミュージック、ベースミュージック系の音作りに初挑戦してみたくて、この曲はサブベースやエレクトロっぽいドラムも入れたりしたんです。やってみたものの自分的にはまだまだで、改善点もいっぱい見つかったし、レーベルに所属しているような先人の方々のすごさを再確認しましたね。それこそ、もちうつねさんのエレクトロも聴いていて、尊敬させられますね。
もちうつね:僕は僕で、前回のボカコレで初めてszriさんの存在を知って「とんでもない化物が現れたな」って思ってましたよ。絶対表彰台に上がってくるだろ、って怯えてました(笑)。「アナフィラキシー」も好きな曲で、直近で出演したDJイベントでも流させていただきました。
szri:そうだ、使って下さってたんですよね。ありがとうございます(笑)。
もちうつね:とてもアガれるような曲ですし、自分の「おくすり~」を流す時に、「薬」と「アナフィラキシー」という単語で繋がりがあるので、そういう意味合いも込めて使わせて頂いたりしてて。
──szriさんはいかがですか? もちうつねさんの印象として。
szri:僕ももちうつねさんの「おくすり飲んで寝よう」をボカコレで初めて聴いた時、いちリスナーの目線から「すごい新人が現れたな」と思っていたんです。それで、もちうつねさんのTwitterを見にいったら18歳って書いていて。「自分より若いじゃん、すごっ!」って驚きましたね。中高生のころからSoundCloudに触れてる人がいるって、すごくいい環境だなって思いました。
──大学生であるszriさんもかなり若い世代だと思っていましたが、さらに下の年代のもちうつねさんが現れるという。今ルーキーで活躍されている方は10代、学生さんがやはり多いようですね。
szri:そうですね、18歳とかその辺りの世代が多い気がします。
もちうつね:それよりも若い年齢の方もいますし、凄いですよね。
szri:実は今回のボカコレ、制作期間がテスト期間と被るので……結構ギリギリで頑張っています(笑)。それこそ、僕も最近は曲作るか寝てるか、みたいになってて。
もちうつね:時間が足りないよね。
szri:本当に足りないですね。ボカロPだけ1日48時間欲しい(笑)。