なぜ「恋愛あるある」はいつの時代も人気なのか “モテそうな女と本当にモテる女”、微妙な差を表現するTikTokerから分析

「恋愛あるある」の人気をTikTokerから分析

 TikTokをいまだ利用したことがないユーザーにとっては、Z世代が利用している馴染みのないSNSという印象があるかもしれない。自分が10代だった頃にTikTokが存在しなかったとしたら、異質に感じても無理はない。しかし人間の悩みや関心は普遍的だ。実はTikTokでは、どの世代もが懐かしく感じるテーマが今も支持されている。本記事ではTikTokで人気のテーマと、人気のクリエイターを深掘りする。

 本記事の主人公は「🌸おもち」という名前のクリエーターだ。「恋愛」におけるあるあるを一人芝居で演じる動画が支持されている。例えば「モテる女性とモテない女性」の特徴、「浮気をしている彼女と浮気の心配がない彼女」の特徴などを演じ分けている。話し方や服装、髪型に変化をつけるなど芸が細かく、共感を集めている。

 「飲み会でモテそうな女と本当にモテる女」という投稿では、サラダを取り分けて家庭的な側面をアピールする「モテそうな女」と、男性がコンビニで食事を済ませてしまうことに共感を示す「本当にモテる女」の2役を演じている。コメント欄では、「聞き上手が1番モテ要素よなぁ」「聞き上手になる これ鉄則」と共感を集めている。

@omochi_527 好きな人と終電逃した時どうしてる?#演技#本命彼女#おすすめのりたい ♬ bye bye - AYANE

 「終電逃した時本命になれない女となれる女」という投稿では、同じシチュエーションでの判断のテンポの違いを演じ分けている。コメント欄では「好きなタイプの問題だと思うなこれは」「自分で終電の時間確認しとけばよくない?」と、一言物申したいユーザーの意見が多く寄せられた。

 おもちの動画はなぜ人気なのだろうか。その理由はTikTokのユーザー属性と、2種類のエンゲージメントを集めやすいおもちの投稿の特徴にあるだろう。

 TikTokは他のプラットフォームに比べて、ユーザーの年齢層が若い。博報堂が発表した「コンテンツファン消費行動調査2022」調査によると、日本のユーザーでは「10代」のユーザーの割合は全体より多く、32.3ポイントの違いがある。Instagramのストーリーズよりも、世代間の差分が大きい。

 TikTokを利用する若年層の関心事は何だろうか。auじぶん銀行の「Z世代とミレニアル世代の大学時代の価値観に関する調査」によると、Z世代の大学生が抱えている悩みでは「お金」が最も多く、「勉強」「友人関係」に続き、「恋愛」が4位に入っている。今に限った悩みではなく、ミレニアル世代が大学生だった頃のランキングでも「恋愛」が第4位だ。

 勉強と違って、人間関係は「努力が必ずしも報われる」わけではない。特に恋愛は相手の価値観や趣向によって効果的な行動が異なり、どのようにがんばれば良いかがわかりづらく、正攻法がない。恋愛に悩んでしまった10代が時間を費やして、恋愛における正解が何かをTikTokで探そうとするのは納得がいく。

 そのため「恋愛」におけるあるあるや、ノウハウは動画はTikTokで人気だ。ノウハウを取り上げた動画に付けられる「#恋愛心理学」というハッシュタグがついた動画は全部で54億回視聴されている。

 恋愛の動画の中でも、おもちの動画がTikTokで支持を集める理由は2種類のエンゲージメントを集めやすい工夫にありそうだ。エンゲージメントが多い動画は「おすすめ欄」に表示されやすい。

 1つ目はブックマークだ。ユーザーが後から見返したい有益な情報を発信している動画を保存しておく「しおり」に当たる機能である。

 おもちが取り上げているのは態度、振る舞い、スタンスといったテキストベースでは伝えづらい要素だ。例えば「クラスの好きな男子には自信のある振る舞いをしよう」とテキストで書かれた恋愛指南書よりも、おもちが演じる2タイプの女性が示す表情の差分の方が参考になることも多いかもしれない。ヘアメイクのハウツーのように、言語化しづらい要素であるため、動画を見返したくなるノウハウだ。ブックマークが多いのもうなずける。

 2つ目はコメントだ。恋愛は普遍的なテーマなため、自分も一言言いたいユーザーが多いだろう。おもちは動画に添えたキャプションに「みんなならどうする?」「これは白?黒?」といった問いかけを入れている。「違い分かった?」という問いかけに対しては、255件のコメントが寄せられた。うまくユーザーのエンゲージメントを引き出している。

 ここまでおもちを取り上げた。おもちが発信する「恋愛あるある」や「モテ指南」はすっかり大人になってしまった読者の参考にはならないかもしれない。しかしおもちが再現するのは、デートで終電を逃した時、異性の関心を集めたい飲み会など、若い頃に一度は経験したようなリアルなシーンばかりだ。甘酸っぱい気持ちを思い出すために見るのも面白い。

(source)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000361.000026860.html
https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/99664/

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