『Weekly Virtual News』(2023年7月24日号)

CAPSULEにFLOWも……VR世界に乗り込む著名人と、自販機の前に集まる“バーチャルなひと”

「CAPSULE」も「FLOW」もVRChatにやってきた

 あの「CAPSULE」が、『VRChat』にやってくる。音楽ユニット・CAPSULEが、昨年末発売のアルバム『メトロパルス』の世界観を再現した空間で、8月5日にVRライブを開催するとのことだ。

 先んじて、『VRChat』には会場となるワールドが公開されている。『メトロパルス』収録曲『バーチャル・フリーダム』に登場した邸宅がもととなっている、いわば「MVの世界に入り込める」という施策であると同時に、ライブのティーザーも兼ねているというものだ。体感できる「イベントコンセプト空間」として、おもしろい仕掛けである。

 ライブの全体プロデュースを手掛けるのはANNIN。Activ8とアソビシステムによるアーティストプロダクションだ。Activ8自体も制作協力に関わり、演出監修にはバーチャルアーティスト・キヌも携わる。「CAPSULE」含めて制作布陣は実に強い。なにより、かつてキズナアイを手掛けたActiv8と、そこから生まれたANNIN、そしてキヌを始めとしたバーチャル発クリエイターらが作り出すという、いくつかの文脈が合流する注目イベントと言えるだろう。

 「CAPSULE」は『VRChat』初上陸となるが、今年で二度目の上陸を果たすアーティストもいる。昨年は「コードギアス」シリーズとのコラボとしてVRライブを実施したミクスチャーロックバンド「FLOW」が、凸版印刷主催のイベント「VIRTUAL REMIX JAPAN」内でVRライブを開催する。

 今回もメンバー全員がアバターとなって登場し、これまで主題歌を担当した数々のアニソンを披露するイベントになるとのことだ。『VRChat』現地ではもちろん、「ZAIKO」での配信も予定されている。VRの没入感は強大であり、代えがたいものだが、雰囲気だけでも感じられる通常配信も需要もまだまだある。それがゆくゆくはVRのエントリーポイントとなることも多いにあるだろう。

 音楽ライブとVR空間は、”世界観”を空間全体に適用できる点で相性がいい組み合わせだ。「CAPSULE」や「FLOW」のように、精力的なアーティストたちが今後も進出してくる可能性は少なくない。

VRChatに進出する瀬戸弘司が、「サキュバス酒場」に挑む

 著名人の進出というトピックだと、YouTuberの瀬戸弘司は『VRChat』へ大きく進出し話題になっている。先に進出した散財小説ドリキンなどの手引きもあり、先日ついにディープな場所として名高い「サキュバス酒場 LILITH」へ上陸を果たしたようだ。その様子はYouTubeへ投稿されている。

 「サキュバス酒場 LILITH」はその名の通り、「サキュバスが接客するバー」という体裁のイベントであり、『VRChat』開催ユーザーイベントの中でも極めて人気が高く、入場倍率も高いイベントのひとつである。動画内では、コミカルなバターの姿で来場した瀬戸弘司が、次々に現れるキャストを前にメロメロになる様が映されている。

 「VRへの没入」がいかに強力かを示すわかりやすい事例でありながら、「VR世界が大きな比重となって暮らしている人の存在」「VRと現実の連関(VRをきっかけに日常生活すら変わり、前向きになる人の存在)」「イベントを動かす、無償で好きでやってる人たち」などなど、ディープな『VRChat』の世界の魅力もピタリと言い当てている。それらを総合して、瀬戸弘司は「未来」という言葉を持ち出している。

 『Vision Pro』が描くであろう世界とはまったく異なる、ディープで魅力的な世界の良さが、健全なベクトルとともに発信されており、こうした人々にも注目されているのが日本国内の『VRChat』なのかと感じられる次第だ。

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