イライラ系アクションから再び配信者経由でのヒット作 『Only Up!』人気の理由は“ジャンルのオープンワールド化”にあり?

『Only Up!』ヒットの理由は?キーワードは、「イライラ系アクションのオープンワールド化」

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 実況・配信文化の浸透・台頭から、重要ジャンルのひとつに成長しつつある「イライラ系アクション」。第3、第4の存在を目指すタイトルが続々と開発・リリースされるなかで、なぜ『Only Up!』がその座を射止め、ヒットタイトルとなれたのだろうか。理由のひとつと考えられるのが、同タイトルが自由な攻略ルートを持つ点だ。

 『Getting Over It with Bennett Foddy』『Jump King』『Pogostuck: Rage With Your Friends』といったジャンルの前例たちはすべて、2Dによる平面的なアクションをゲーム性の中心としていた。そのため、攻略法が画一的になりやすく、その点が長所にも短所にもなっていた。一方の『Only Up!』は先にも述べたとおり、3Dの美しいグラフィックを特徴としている。フィールド上にはほかのタイトルとは比較にならないほどの多種多様なギミックが用意されており、プレイヤーは360度の視点操作をおこないながら、それらを吟味しつつ、自身にとって最適な方法で上を目指すことが可能だ。

 こうした性質の違いには、「それぞれのプレイを一律の攻略法で語らせない」というメリットがある。どのように進めるかは各プレイヤーの自由。そこには新しい攻略法を見つける喜び・楽しさも同居する。特に実況・配信文化においては、クリアした立場からのマウンティング的アドバイスをおこないにくく、それが動画コンテンツをより楽しく見せている実情もあるだろう。

 界隈では、海外発のRTA(Real Time Attack)動画も注目を集める。その動画では、アクションを得意とするプレイヤーでも数時間、場合によっては10時間以上かかろうかという道のりを、わずか20分ほどのタイムで駆け抜けている。過程には、一度クリアした人でも気づかなかったような驚くべきテクニックなども登場。このような楽しみ方すべてが、自由な攻略ルートを持つ『Only Up!』ならではの魅力といえるのではないだろうか。それはいわば、自由な発想で目的の達成を目指す、イライラ系アクションの“オープンワールド的進化”と呼べるのかもしれない。

Only UP Speedrun in 16:58 (World Record) 🇺🇲

 リリース当初は「賛否両論」だったSteam上での評価も、日が経つ(影響が広がる?)につれ、少しずつ良化の気配を見せている。2023年7月6日現在では、1段階上の総合評価である「やや好評」へと変化した。

 まだまだ支持を広げそうなイライラ系アクション『Only Up!』は、同ジャンルの前例を超えるヒットを記録できるか。その先には、RTA in Japanにおける一競技として、フリークたちの目に触れる未来もあるのかもしれない。

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