tofubeats「自由」MVで使用された映像制作手法“バーチャルプロダクション”とは? 使用の経緯と可能性について語られた説明会レポート

「バーチャルプロダクション」が秘める大きな可能性

制作を通して感じたバーチャルプロダクションの可能性と展望

 最後に「今後のバーチャルプロダクションの展望」について、馬場氏はバーチャルプロダクションという手法がまだ黎明期にあると強調し、「その魅力が十分に伝わり、普及が始まったとき、どのような映像を作るべきかが問われる」と述べた。また、ビンテージのカメラレンズを再現するなど、今後の発展が期待されており、これらが実現すれば制作可能な映像の幅がより広がることに期待を寄せた。

 Murasaqi氏はソフトウェアとハードウェアの進化について、ゲームエンジンを用いたCGレンダリングソリューションはリアルタイムレンダリングへと進化し、その結果、レンダリング時間が短縮されると予想した。これにより、「(現状では)映画制作用に最適化されたソリューションであるバーチャルプロダクションも、個人制作者を含む多くの人々が利用可能になる」と、個人制作の現場に変革がもたらされる可能性を語った。

 賜氏はバーチャルプロダクションの活用がCM、ミュージックビデオ、地上波ドラマなどの制作現場にも広まっていることを指摘し、それらは今後も促進していくだろうと予想。さらに「大規模なスタジオを自社で持つか、またはバーチャルプロダクションが可能なプロダクションと共同で仕事を進めるか、という選択肢が企業側に提示される」と語り、その次代においてはCGの知識を持つ人材の育成が重要であると主張。「ゲーム業界から映像業界への人材の流入など、業界間の垣根がなくなることも予想される」と、映像業界だけでなく他業界との連動・相互作用も予想した。

 なお、本MV制作でのバーチャルプロダクション活用に関して、すでに松竹社内からも高い期待が寄せられているという。今後、代官山メタバーススタジオでは、バーチャルプロダクション使用希望者にヒアリングを行った上で、ただ単に背景として使用するだけではなく、LEDウォールを活用した意義ある映像制作に挑戦していく予定だ。またMV制作にも引き続き取り組む一方で、本MV制作で得た知見を生かしつつショートドラマを始め新たなアウトプットにも挑戦していくとのこと。

 代官山メタバーススタジオは、多様なクリエイターと共創し、先端技術とクリエイティブ制作を繋ぐことで、映画・演劇事業における新たなコンテンツ及び制作手法の開発に取り組むラボとして機能している。スタジオ活用の可能性は、ほかにも動画配信、SNS向けの縦型動画、ドラマ撮影、スチール撮影など多岐に渡る。そのため、今後は放送局を始めとする多様なメディア制作者にアプローチしながら、ブランドの強化も目指していくとのことだ。

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