「約70年前のアニメ制作現場」や「24年前のオタク部屋」にタイムスリップするメタバースがすごい 新鮮さと懐かしさが同居する“新たな遊び場”を体験

東映「ONN'ON STUDIOS」体験レポート

 日本のアニメ最大手、東映アニメーションは、2022年の12月16日、メタバースプロジェクト「ONN'ON STUDIOS(オナノンスタジオ)」を立ち上げた。

 「オナノン(ONN'ON=On and on)」には「延々と」という意味があり、その名の通りいつまでも終わることなく拡張し続けるメタバース空間を創出する、という目的で立ちあがったプロジェクトだ。

 東映アニメーションは60年以上の歴史を持つ。そんな同社の歴史をアーカイブし、新たな遊び場を生み出す意欲的な取り組みを体験させてもらったので、今回はそのレポートをお届けする。東映の過去の歴史に最新のVR空間でダイブするという、新鮮さと懐かしさが同居する独特の感覚を覚えた。

設立当初の東映動画にタイムスリップ

 「ONN'ON STUDIOS」は、ソーシャルVRアプリ『VRChat』で利用できる。現在、2つのワールドを展開しており、その1つが「Onnon_ToeiDogaStudio1956」だ。

 これは、“東洋のディズニー”を目指して作られ、日本で初めて包括的で持続的にアニメーション制作を行うことを目的にした東映動画スタジオの初期の社屋を再現したもの。1956年当時の第一期棟を完全再現したもので、アニメーション制作の現場を追体験できるものになっている。

 ログインすると、ワールドは正面玄関から始まり、当時の大泉学園のスタジオの概観写真がさっそく飾ってある。建物に入ると、右手には受付があり、並んで奥には事務室がある。まだパソコンなどなかった時代の事務机はシンプルで、当時の作品の資料などが置いてあるのが見える。

 事務室の向かいにあるのは撮影室。ここには、3台のマルチプレーン・カメラが置いてある。これは、異なった距離にセル画を置くことで、遠近感を生み出すために使われた撮影台だ。撮影台の下にも空間が作られており、下から照明を当てるなど、様々な効果を生み出せるようになっている。

 外に通じる扉が開いているが、外には『レインボー戦隊ロビン』のベンケイ像や『白蛇伝』のポスター、当時の大泉学園の東映スタジオの航空写真に、現在東映アニメーションミュージアムに展示されている同スタジオの模型の写真が飾られている。このVR空間は、まずこのミニチュア模型を作成し、それをVRのモデルに起こすという順番で制作されたそうだ。

 撮影室を抜けて奥に進むと、ライブアクション・スタジオがある。ここでは、東映撮影所の俳優さんらを使って、アニメの動きの参考にするための実写映像を撮影していたそうだ。設置された机で、アニメーターたちはデッサンをしていたという。机には『白蛇伝』の設定画も置かれている。

 ライブアクション・スタジオの隣にはアトリエがあり、ここでキャラクターデザインやイメージボードなどが制作されていた。当時のアニメーションの企画は、絵描きスタッフ主導で立ち上げられていたそうで、このアトリエで生まれた絵やキャラクターをベースに企画が考えられていたとのこと。このアトリエには、当時使われていた絵具や設定資料などが置かれていて、当時の雰囲気を感じ取ることができる。

 東映動画スタジオは3階建てとなっており、入口向かいにある階段から上階に上がれるようになっている。2階に上がるとまず目に入るのは所長室。ここには、大川博 初代東映動画社長の写真が飾られている。

 所長室の隣にあるのが企画室。ここでプロデューサーや演出陣が企画を練っていたそうだ。企画室の奥には演出室があり、ここにも木の机が並んでいる。まるで朝の連続テレビ小説『なつぞら』の世界に迷い込んだような気分になった。

 企画室の向かいは撮影室やライブアクション・スタジオを2階から見下ろせるようになっており、ここで改めてマルチプレーン・カメラの大きさを実感できる。

 3階にはアニメーターの部屋(原画・動画)がある。机が左右にずらりと並べられていて、ところどころに原画など当時の資料が置かれていた。簡便な仕切りの向こうには制作進行室があり、さらに奥にはトレース室を発見。原画や動画からセルに転写する作業も当時は手作業だ。さらに奥には彩色室があり、ここでセルに色を塗っていた。セルのトレースと仕上げが隣り合っているのは、たしかに作業効率が良さそうだ。

 すぐ隣には編集室がある。当時はフィルムで撮影を行っており、編集作業もフィルムを切り貼りしていた。そして、隣り合って試寫室が構えられており、ここで編集した映像を確認していたようだ。当時は、ビデオもパソコンもない時代なので、映像の具合を確認するには映写するしかなかった。すぐ脇には録音室もあり、ここで映写をしながら、アフレコ作業も行っていたようだ。

 すべてのアニメ制作機能を網羅しており、スタジオを回ると、当時、アニメがどのような手順で作られていたのかがよくわかる構造になっている。机やロッカー、壁の汚れなどもリアルで、東映動画の初期を体感できる空間だ。

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