クリエイターとPCのいい関係って? BABYMETALのアートワークも手掛ける田中紫紋が見た『ASUS Zenbook Pro 14 OLED (UX6404VI)』の可能性

 『報道STATION』のオープニング映像(2004年〜2012年)、BABYMETALのアートワークやMV制作、ライブ映像などで知られる映像作家/デザイナーの田中紫紋氏は、ガジェット好きのクリエイターであり、自身のキャリアやクリエイティブにも、ハードやソフトの進化が大きく影響しているという。

 今回は、そんな幅広いフィールドで活躍している田中氏に“PCとクリエイティブ”というテーマでインタビューを実施。これまでのキャリアを辿りながら、PCの活用法や求める機能などについて聞いた。また『ASUS Zenbook Pro 14 OLED (UX6404VI)』を実際に使用してもらい、デザイン、スペック、使い勝手などをチェックしてもらった。

学生時代からガジェット好きで、最新アイテムで映像制作も

——田中さんが初めて出会ったPCとは?

田中:『Performa575(Macintosh)』ですね。高校の時に父親が買ったものを勝手に弄っていました。簡単なお絵描きなどで遊んでいたんですけど、ちゃんと触ったのは文化祭で演劇をやることになって、脚本を作ったのが最初ですね。当時は映像クリエイターを目指していたわけではなくて、機械いじりが好きでした。

——高校卒業後は武蔵野美術大学に進学。

田中:中学、高校とサッカーをやっていたんですよ。たまたま強いチームに入ってしまって…。神奈川県大会の準決勝で中村俊輔がいた高校と対戦したこともあるんですけど、とにかく上手い人がいっぱいいて、そこで「サッカーは無理だな」と。「楽しく受験勉強ができる大学ってどこだろう?」と思って美大を選びました(笑)。武蔵野美術大学の視覚伝達デザイン学科に入ったんですけど、大学時代の環境がすごくよかったんですよ。1年生のときに授業の一環で作った映像がすごくウケて。いまもよく一緒に仕事をしている藤井亮くん(豪勢スタジオ)もそうですけど、当時の仲間とはずっとつながってますね。

——田中さんが大学に入った2000年前後は、PCを使った映像制作が少しずつ始まった時期ですよね。

田中:『iMac』が出始めた頃なんですが、当初はPCで映像編集することはほとんどなかったですね。大学に入った時期は完全にアナログで、アニメーション制作も1枚1枚撮影してテープで編集していました。3年生くらいのときに(Adobeの)「After Effects」を触り始めて“これは楽しく使える”という気持ちになったのを覚えています。卒業制作の時にはデジタルで映像編集するのがもう普通だったという感じですね。僕は、とにかく機械自体が好きだったので、当時はMacの専門誌を全部読んで、システムや機能などをずっと調べていました。美大生は皆、機械は持っているけれどシステム的なことに興味がない人が多かったので、マシントラブルの相談にもよくのってました。

 

——アナログからデジタルに移行する時期をリアルタイムで体験した、と。

田中:そうですね。大学の卒業制作は、新聞紙でオブジェを作って、それを少しずつ撮影する“コマ撮り”の作品だったんです。最終的にはデジタルで編集したんですけど、手法としてはスーパー・アナログでした。その作品をたまたまテレビのプロデューサーの方が見てくれて、「『報道STATION』のオープニング映像を作ってくれませんか?」というお話をいただいたんです。ちょうど『報道STATION』がはじまるタイミングだったんですが

——すごい! その時点ではもう卒業してたんですか?

田中:はい。小さい映像制作会社に入ったばかりだったんですけど、学校経由で「こういう話が来てる」と連絡がきたので、入社してすぐに休職させてもらって、『報道STATION』のオープニング映像の制作に取り掛かりました。ちょうど地デジ放送の準備が始まった時期で「良いデジカメで撮影すればハイビジョンに対応したキレイな映像が作れます」とか、いろいろ提案してました。「パソコンはどんなのがいい?」と言われたので、当時、いちばんスペックが高いのを要求したら、すぐに送ってくれたんですよ。六本木に部屋を借りてくれて、1か月間こもりきりで作ったのが『報道STATION』の最初のオープニング映像ですね。

——その後はフリーの映像クリエイターとして活動。2010年には藤井亮さんとともに制作した『サノヤス・ヒシノ明昌TV CM“造船番長”』でカンヌ国際広告祭PR部門銀賞を受賞したことも大きな話題になりました。そして2011年からはBABYMETALのアートワーク、MV制作、ライブ映像などを手がけはじめますね。

田中:たまたま知人がアミューズさんにいて、さくら学院のホームぺージのデザイン制作を依頼されて。その後、BABYMETALのクリエイティブにも関わるようになりました。最初は「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のMVを制作しました。公開してからずっと「BABYMETAL」というワードでTwitterでエゴサーチをしていたのですが、ある時から急に英語のツイートが増えだして、再生数もドンドン伸びて行ったのをよく覚えています。

——BABYMETALのシングル、アルバムのアートワークは基本、メンバーの写真は使われてないですね。

田中:そうですね。デジタルで音楽を聴く事が当たり前になりつつある時期だったので、アートワークのアイコン的な存在意義がそれまでのモノとは変わっていくと思い、画面上での視認性を大事にして、小さい表示でもロゴが一発でBABYMETALとわかるように意識しています。

——BABYMETALの作品で、特に印象に残っているのは?

 

田中:まずは『LIVE AT TOKYO DOME』(ライブ映像作品/2017年)のアートワークですね。BABYMETALにとってマイルストーン的なライブで、セット、映像、グッズなど、色々なモノを作らせてもらいました。CGと手書きの組み合わせだったり、手法的にも色々取り入れ始めた頃でした。後、『LEGEND - METAL GALAXY』(ライブ映像作品/2020年)のジャケットは“太陽と月”をモチーフにしているんですが、アートディレクターの依田耕治さんと共同で制作しました。基本的に制作はスタッフさんとよく話して自分が好きなことを取り入れていくスタンスです。

——すべてのアルバムジャケットに携わるほか、BABYMETALライブで使用する映像も制作しています。

田中:もともとは「BEBYMETAL DEATH」という曲に合わせて試しにCG映像を作ってみたのがきっかけなんですよ。BABYMETALのライブは基本的にMCがないので、曲をつなぐための映像が必要だねという話になって。“紙芝居”風の映像もそうですけど、手描きの絵とCGを組み合わせることも多いです。手描きのアニメーションやレトロな映像も大好きなので

——ここからは、田中さんが制作に使用しているPC環境などについて聞かせてください。現在はMac、Windowsの両方を使っているそうですね。

田中:現在のメイン機はWindows(デスクトップ)ですね。いちばん大きい変化は、クラウドサービスが登場したことなんです。以前はMacとWindowsの住み分けがハッキリしていて、“クリエイティブに関わる人は100%Mac”だった。特に「Final Cut Pro」が映像編集のメインだった時期は、Macを使っていないと仕事にならなかったんですよ。ファイルの互換性などもWindowsとMacではかなり隔たりがあったり、トラブルも多かったんですけど、クラウドの出現によって、基本的にはファイルフォーマットという考え方が僕としてはなくなった。そうなると自分の(PCを選ぶ)基準は操作性の好みやコストパフォーマンス、更新性なんですよね。

——そんな田中さんには今回『ASUS Zenbook Pro 14 OLED (UX6404VI)』を使っていただきました。クリエイターの立場から、このPCをどう評価されますか?

田中:じつは「そろそろPCを買い替えようかな」と思っていた時期にこのインタビューの話をいただいたんですけど、想定していたスペックにかなり近かったんですよ。僕が考えていたのは、プロセッサがCorei9の13900Kで、GPUがRTXの4070Ti。その構成でPCを自作して、置き場所をどうしようかと考えていたんですけど、似たようなスペックだったんです。しかも薄くて軽いコンパクトサイズのノートパソコンだったから、ちょっとビックリしました(笑)。

関連記事