『ストリートファイター6』に実装された“モダンシステム” 格ゲーとコマンドの切っても切れない関係性

ジャンルを牽引してきたトッププレイヤーたちの反応は?

 ジャンルを牽引してきたトッププレイヤーたちの一部は、この変化について、おおむね「人口が増えることはプラス」としながらも、「従来の操作方法を代替するには至らない」「キャラクターによって向き・不向きがある」「試合中の駆け引きを大きく変える可能性がある」などとコメント。諸手を挙げて賛成とはいかない、複雑な反応を発売前から示していた。一方で、発売後には、一部の操作に活用するなど、前向きな姿勢も見せ始めている。なかには、操作の大部分を同システムで代替するプレイヤーも現れた。

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 文化性やゲーム性の面から考えると、モダンシステムは格闘ゲームがこれまで築き上げてきたものを破壊してしまう可能性もある。なぜなら同ジャンルはこれまで、入力難易度や入力時間ありきのバランスの上に、対戦を成り立たせてきた部分もあるからだ。

 たとえば、格闘ゲームというジャンルにおいて、劣勢からの重要な切り返しとされる「昇龍拳」に類する技(発生に無敵があるため、相手に攻撃を重ねられても“差し合い”や“じゃんけん”にならず、一方的に状況を返せる技)では、瞬時の入力が難しいことが駆け引きの一部となっていた。人間の反応速度・入力速度などを考えると、技を出すためにはトッププレイヤーでも5F程度の猶予が必要だと言われているため、従来のシステムでは、咄嗟の切り返しとして繰り出すには、ある程度の読みが必要だった状況が多くあった。

 しかし、モダンシステムでは、反応速度は従来どおり求められる反面、入力速度については、これまでのような猶予が必要ない。つまり、実装前には考慮しなくてよかった(あるいは、切り返された場合、相手が上手だったと割り切れる)場面で、同必殺技を打たれてしまう可能性が生まれてくることになる。

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 こうした変化をポジティブにとらえるか、ネガティブにとらえるかは、それぞれのプレイヤーの技術レベルや考え方、環境によるところも大きい。トッププレイヤーはもちろん、そのほかのベテランプレイヤー、格闘ゲームに慣れ親しんできた人が一概に否定的なスタンスを取らないのは、新規参入がないとジャンルが先細りになってしまうこと、もしくはすでに先細りとなりつつあることを実感しているからだろう。これは(想像ではあるが)先述したカプコンの葛藤と同質のものだ。

 これまで格闘ゲームが築き上げてきた歴史において、コマンド入力が担ってきた役割は、文化的にもゲーム的にも大きかった。その重要性は、参入障壁の高さと表裏一体だった部分もある。

 とはいえ、モダンシステムはまだ、実装されて間もない仕組みだ。大会での結果や、一般プレイヤーの反応、環境に対する影響度などを踏まえ、アップデートも施されていくだろう。長年、界隈を賑わせてきたコマンド入力をめぐる参入障壁の高さと、文化性・ゲーム性の維持の問題。今回、大きなチャレンジをおこなった『ストリートファイター6』には、ジャンルの草分けとして、今後、格闘ゲームが進むべき道を提示してほしい。

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