古田新太、“おじさん”になったマーベルヒーローをどう演じる? 「大嘘がつける」オーディオコンテンツを演じる楽しさ

 Amazonが提供するオーディオブックサービス「Amazonオーディブル(以下、Audible)」は、6月28日よりオリジナルポッドキャストシリーズ『Marvel’s・ウェイストランダーズ』の日本配信を開始する。

 本シリーズは、2021年に英語版の配信が開始されたが、日本語での配信は初。6つのシーズンで構成されており、マーベルのキャラクターを日本人俳優や声優が演じる没入型のオーディオコンテンツとなっている。

 その第1弾が、スターロードことピーター・クイルを主人公とした『Marvel’s・ウェイストランダーズ:スターロード』だ。物語は、ヴィランが勝利した世界を舞台にしており、ピーターと相棒のロケット・ラクーンが50代に差し掛かった時代となっている。かつての栄光を失った2人は、ヴィランたちが支配権を握った地球に降り立ち、困難に直面することになる。

 すっかりおじさんになったピーター・クイルを演じるのは、日本映画や演劇界に欠かせない演技派俳優、古田新太だ。今回、主演の古田に本作の魅力や声の芝居の面白さなど多岐にわたる話を聞いた。(杉本穂高)

“のんきなおじさんヒーロー”は「キャラクター通りに演じよう」

――今回のオーディオドラマについて、オファーを受けたときはどう感じましたか。

古田:オイラは元々、マーベル作品が好きでしたから、「おお、ピーター・クイルをやれるのか」と思うと嬉しかったです。ピーターは映画でも観ていて、のんきな奴だとわかっていたので、そういうキャラクター通りに演じようと思いました。

――映画とポッドキャストの設定は別だと思いますが、意識はされましたか。

古田:映画の『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』から30年後の設定なんで、あまり気にせず、実年齢に近い形で演じました。気取った奴じゃないので、ロケットとの掛け合いが楽しく聴こえたらいいなかという感じで気楽にやりましたね。ロケットはヒステリックで、ピーターは楽天家。その対比が面白くなればいいなと。

――ヒーローの晩年というのは、ユニークなアプローチですよね。

古田:ピーターは、いまだにガーディアンズのことを誇りに思っているんです。ロケットは、そんな過去の栄光は早く忘れろと言っているんですけど、その一方で「いつまでも俺たちはスペース・カウボーイだ」と思っている。それが哀れでもありおかしくもあるんです。

音声コンテンツは「大嘘がつける」のが魅力

――こうしたスーパーヒーローを演じることは、役者にとってどのような意味があると思いますか。

古田:ヒーローだろうが怪人だろうが特に意識はしないです。昔は悪役やアウトローを演じるのが好きでしたけど、いまはなんでもやりたいですね。

――では、古田さんは普段仕事を選ぶ時、役柄にはあまりこだわらないのでしょうか。

古田:スケジュールが空いてれば受けるという感じです。その姿勢でいると、色々な役ができて楽しいんですよ。こういう役しかやらないって決めている俳優さんもいますけど、固定のイメージがついてもどうかなと思うので。映画、ドラマ、舞台、ラジオ、アニメ、なんでもやります。過去にはスーツアクターの怪人のアフレコもやったし。今回の仕事はそれに近い感覚。ラジオドラマみたいにもっと好き勝手にできるかなと思っていたら、意外と縛りが多くて。

――縛りとはどんなものだったのでしょうか。

古田:英語の台詞のタイミングで日本語をしゃべらないといけないんです。台詞の尺も決まっていて、もちろんそれに合わせて台本も書いてあるんですけど、映画と日本語じゃタイミングとか色々違いますからね。

――外国映画の吹替とも異なる難しさでしょうか。

古田:映画だとリップシンクがあるんです。リップを見れば口が動いているのがわかるわけですけど、オーディオドラマはそれなしに向こうの役者の間や尺に合わせないといけない。これは初めての体験でしたね。

――英語の芝居を聴いた上で、その抑揚に合わせてしゃべるわけですか。かなり難易度が高そうですね。

古田:そうなんです。文法も違いますからね。しかも、アメリカの俳優はやたら、「Oh~!」とか言うでしょ(笑)。でも、日本語でそんなこと言うとおかしいので、「ええ~」みたいなことを言いながら誤魔化していました。

――やはり役者としては、縛りが多いものより自由にできた方が楽しいものですか。

古田:そうとも限らず、不自由さにも楽しさがあるんです。上手くハマった時に、自分で自分を褒められる。「オイラ、上手いなあ」って(笑)。今回も、「オイラ、こんなに上手くやれんのか」って思いましたよ。やっぱり英語圏の人の感情と日本語の感情は微妙にズレるので、そこが上手くハマったときは快感でしたね。

――役者にとって、こうしたオーディオコンテンツの魅力はどんなところにあるのでしょうか。

古田:今回は結構縛りがきつかったけど、オーディオの芝居は本来、大嘘がつけるんです。漫画原作のきれいな男の子役もできるし、オオサンショウウオなんていう生き物とかにもなれるわけです。オイラもこれまで犬だってやったことがあるし、声の芝居は想像の世界だけでやれるので、楽しいです。

――舞台の芝居とも異なる自由があるわけですね。

古田:舞台は舞台で大嘘の世界ですけど、声の芝居はもっと大嘘がつけるから。

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