『Weekly Virtual News』(2023年3月27日号)
ぽこピーランド開園に湧くVRChatと、ミライアカリの活動終了に揺れる人々。VTuberとソーシャルVRの現在地を考える
史上最高のVTuber・バーチャルテーマパークとなった「ぽこピーランド」
甲賀流忍者ぽんぽことピーナッツくんのテーマパークが、『VRChat』に建った。年中無休、世界中からアクセスできるバーチャル遊園地ワールド「ぽこピーランド」が、3月24日にオープンとなった。公開初日からたくさんの人が詰めかけており、プレオープン期間にはぽこピーの二人と親交のあるVTuberなどが多数訪れている。
現実のテーマパークに比肩する敷地の中には、ぽこピーの二人の好きなものや世界観がこれでもかと詰め込まれている。「VTuberのテーマパーク」としてこれ以上となく完璧だ。VRChatのワールドとして見ても、そのクオリティは史上最高クラスと断言できるレベルだ。制作期間は1年以上だが、むしろ1年くらいでこのクオリティのワールドが、企業制作ではなく有志制作であるというのは驚異的だ。
ファンにとってはもちろん、ぽこピーを知らない人にとっても「純粋におもしろいテーマパーク」として楽しめる。そしてなにより、身体やプロフィールを自由な世界観でデザインできるVTuberが、自身の世界観を「空間」として拡張できることを、「ぽこピーランド」は示している。この最高のテーマパークは、VTuberの持つ可能性を黎明期ぶりに提示してきた、大きなマイルストーンとなるかもしれない。ぜひ遊びに行ってほしい。
ミライアカリが活動終了。様々なVTuberの進退報告が続く
VTuber業界には大きな衝撃が起きた。最初期のVTuberとして特に著名な一人・ミライアカリが、3月31日をもって活動を終了することを発表したのである。同日に最終配信が実施され、所属のGOOM STUDIOも合わせて運営終了となるようだ。
活動終了に至った理由として「運営と当人で価値観のズレがあった」と述べられており、直近は数ヶ月ほど動画投稿・配信がない状態ではあった。2017年10月のデビュー以来、一度は所属変更なども経て、前向きな活動を続けてきた一人だっただけに、引退は率直に寂しいところだ。
活動休止中のキズナアイ、実質引退の輝夜月に続くミライアカリの活動終了により、俗に“四天王”と呼ばれた面々で活動中となるのは電脳少女シロのみとなる。様々な意味で、「時代が一区切りついた」と感じる状況ではあるが、それだけVTuberが長く続いてきたカルチャーであることを示しているとも言えるだろうか。5年以上に渡る彼女の足跡を振り返りつつ、3月31日にその道程の最後を見届けたいところだ。
佃煮のりお運営のグループ「のりプロ」では、所属メンバーの胡桃澤ももと逢魔きららの卒業・個人勢転向が発表された。胡桃澤ももは一般的なグループ卒業だが、逢魔きららの場合は事情がやや特殊だ。2月15日に家庭の事情から活動をいったん終了したのだが、このタイミングで「家庭の事情も考慮しながら、自分のペースで活動継続」という形の、個人活動再開となったのである。
一度活動終了をはさんでからの再開は、まだ事例として少ない。とはいえ、あらゆる活動において「途中で休止・終了を挟む」ことはめずらしくない。名義など維持のまま個人勢に転向する胡桃澤ももの一件もふくめ、長くVTuberを続けられるようはからう「のりプロ」の体制は次代のモデルケースになるだろうか。
去る話もあれば続く話もある。茨城県公認VTuberの茨ひよりは、令和5年度の活動がめでたく茨城県議会にて可決した。2018年より続く活動もまもなく5年目に突入する彼女は、いまやご当地VTuberの代表格と言える存在だ。次年度の活動にも引き続き期待したい。
また、2021年に「埼玉バーチャル観光大使」に就任した春日部つくしは、任期延長が決定した。彼女もまた2018年から活動を続けてきたVTuberの一人だ。バーチャル埼玉県民として埼玉の魅力を個人で発信し続け、ついに公認になった彼女は、「続けること」の大切さを誰よりも示しているだろう。
新機軸のトラッキングデバイスが登場。HTCの再躍進は続くか
新型XRヘッドセット『VIVE XR Elite』が大きな好評を呼ぶHTCから、驚くべき新規プロダクトが発表された。外部センサー不要で動作するという、「Self-Tracking Tracker」と称される新型ボディトラッカーだ。
本体に搭載された2基カメラでトラッキングを実現する方式とのことで、ジャイロセンサーでトラッキングしている『HaritoraX』や『mocopi』とは毛色が異なる。形状もフラットで、特徴的な突起がある『VIVEトラッカー』と比べて、だいぶスリムになった。
性能は未知数なものの、GDCでのタッチアンドトライ動画を見る限り、なかなかの精度のようだ。『VIVE XR Elite』の勢いで、トラッキングデバイスでも大きな一手を打てるか。老舗HTCの躍進に期待したいところだ。