分散型SNSはTwitterの後継足り得るのか? 僕らがSNSを使う理由とともに考える

分散型SNSはTwitterの後継足り得るか?

分散型SNSの欠点と普及への課題は「インスタンス」の信頼感

 分散型SNSにも弱点はあり、たとえばインスタンスが閉鎖すると自分のユーザーIDは失われてしまう。これは当たり前のことではあるのだが、個人が運営するような小規模なインスタンスを自身のホーム・グラウンドとすることにはある程度のリスクがあるということだ。

 たとえば2017年に公開されたMastodonの日本初のインスタンス「mstdn.jp」は、当時大学院生だった個人エンジニアが自宅のサーバで運営を始め、世界最大のユーザー数を記録するほどの巨大インスタンスに成長。その後運営が企業に委譲され、数度の移譲を繰り返したうえで、一度はサービスの終了も発表された(のちに撤回され、現在は米国企業が運営している)。サーバーの移譲やサービスの終了がアナウンスされるたびにインスタンス上では大きく話題になり、「どこに引っ越すか」ということが盛んに議論されていた。

 今後、巨大なサーバを運営する企業が現れて信頼を求めたユーザーが集中、運営企業が広告の投稿を始めてタイムラインが見づらくなる……というような流れも考えられるし、そもそもこうしたリスクを踏まえたときに企業参入が起きず、現状のままユーザー圏がなかなか拡大しない、ということもあり得る。

 WEBサービスの拡大に資本の参入が必要だとも、それが特別良いことだとも思わないが、歴史を振り返るとこうしたコミュニケーションサービスは多くの場合企業の資本で拡大しており、自然とこうした予想も立つ。もっとも、自分のアカウントを維持するためにインスタンスを自身で立ち上げる、というのも一つの手段だし、こうした手段が取れることはTwitterにはない大きな利点だともいえる。

そもそもSNSを何に使っている?

 と、ここまで「分散型SNSがTwitterを置き換える可能性」について考えてきたが、そもそもみなさんはSNSを何に使っているだろうか?

 私はTwitter歴12年になるが、ツイートの回数は一月に数度。特にここ数年でツイート頻度はグッと減った。現在は複数のアカウントを持っており、プレイしているゲームの最新情報やショップの入荷情報を追ったり、ニュースを見たり、友人の投稿を読んだりしている。また、特に地理や気象、電車の運休情報などを調べたい時にはTwitterの検索が非常に便利で、大雨で止まった新幹線の中では自分の状況を確認するのに大いに役立った。反面、「趣味の会話」や「友人との会話」にはほとんどTwitterを使用していない。

 私のようなユーザーは「Misskey」に直ちに鞍替えすることは難しいだろう。大手新聞社のニュースにパッとアクセスしたり、土地に根差した情報を網羅的に検索したり、といった活用はいずれも「とても多くのユーザーが一つのサービスに集まっていること」を前提としているからだ。

 反面、「趣味について語る場が欲しい」「仲間数人と掲示板のようにインスタンスを運用したい」といった用途においてはこうした分散型SNSは直ちに役立つだろう。自分の趣向に合致するインスタンスを探したり、作ったりするのも面白いだろう。いくつかのインスタンスを見てみたがいずれもどこか牧歌的で、コミュニケーションを取ること(また、取らないこと)それ自体を楽しみたいユーザーが多いように感じた。古い例えだが、15年以上前に個人サイトや掲示板を巡回していたようなスタイルでさまざまなインスタンスを見たり、ユーザーと交流することができる。

 加えてMisskeyもMastodonもTwitterほどの知名度がなく、仕組みが少しだけ難しいため、テクノロジーにある程度明るいユーザーが多い。こうしたユーザー属性も相まって『VR Chat』にも近い、ネットリテラシーの高い人々が専門的な意見交換を行う場所としても活用できそうだと感じた。広告も「おすすめ」も「スペース」もない、ゆったりとした、それでいて専門的なタイムラインに魅力を感じるなら、ぜひ覗いてみてはいかがだろうか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる