PERIMETRON・佐々木集&神戸雄平に聞く、クリエイターが音声コンテンツを配信することの意義 “人間性”を出せるからこその価値とは

PERIMETRONが音声配信をする理由

 音楽家・常田大希が主宰するクリエイティブチーム「PERIMETRON(ペリメトロン)」。常田が所属するKing Gnuやmillennium paradeのアートディレクションを行うほか、近年ではMr.ChildrenのMV製作や新潮社のティザー映像なども幅広く手掛けている。

 Interfmで放送しているラジオ番組『PERIMETRON HUB』は、チーム所属のプロデューサー・ディレクターの佐々木集とデジタルアーティスト・神戸雄平の二人がメインパーソナリティを務めるトーク番組だ。第一線で活動するクリエイターの近況や裏話が聴けるラジオ番組として人気が高い。今回はFocusriteのオーディオインターフェイス『VOCASTER』を使用してもらいながら、番組収録の合間にインタビューを敢行した。

クリエイターの人間性が重要視される時代だからこそ、求められる“雑談”音声コンテンツ

ーー『PERIMETRON HUB』はどんな番組ですか?

佐々木集(以下、佐々木):名前のとおり、番組が僕らの「HUB」になるような形で、たとえば気になる人や業界の近い人、時にはまったく関係ない人まで、いろんなゲストを呼んでお話を聞いていくという形で2018年ごろに始まりました。初めは(常田)大希とやっていたんですが、最近は僕と神戸の2人で進行することが多いですね。内容は雑談に近くて、PERIMETRONの事務所でざっくばらんに喋ってる様子をそのまま流しているような、緩めのトークラジオみたいな感じです。

神戸雄平(以下、神戸):僕はたまにKing Gnuやmillennium paradeのMVを作ったときとかにゲストで呼ばれて3DCGの話を聞かれる……みたいな感じだったんですけど、気づいたらレギュラーになっていました(笑)。なんでなん? 僕もレギュラーになった理由を直接聞いていないんですよ。

佐々木:クリエイターが出てくる番組、というコンセプトはありつつ、僕らの中でも特に神戸は普段家にこもって制作しているタイプだから、「なんかいろいろ溜まってるかな」って(笑)。

 真面目な話をすると、当時は僕や神戸みたいな裏方的なクリエイターがしゃべるようなコンテンツがあまりなかったんですよ。ミュージシャンとか前に立つ人がラジオに出ることはよくあるけど、クリエイターが制作の裏話をするようなコンテンツは少なかったので、その点では神戸が適任だろうと。

神戸:なるほど。たしかに基本的には家にこもって作業してばかりなので、唯一外に出て話す機会をもらえてるような気はします。

佐々木集

ーー1ヶ月分を事務所でまとめて録音しているそうですが、この方式の理由は?

佐々木:ほかにも仕事がある中で毎週ラジオ局に向かうのが難しくて、事務所でまとめて録れるように相談させてもらったんです。

神戸:収録だとリアルタイムの放送ではないので、タイム感やリスナーとのキャッチボールの速度は失われてしまうところがちょっと残念なのですが、かといって「週1で毎回ラジオ局に来て録ります」と言われたら"仕事"になっちゃいそうだから複雑だよね。いや、これも仕事ではあるんだけど(笑)。

神戸雄平

ーーたしかに『PERIMETRON HUB』は普段のクリエイターとしての"仕事"をしていないお二人のプライベートに限りなく近いトークを聴けることが魅力だと思っています。

佐々木:肩肘張って喋って意味ありげなこと言っていても伝わらないこともあるし、だったらむしろこれぐらい「無駄な話を垂れ流す」みたいなコンテンツのほうが面白いんじゃないかと思う瞬間もありますね。結構無駄な話でできてるじゃないですか、人間って。

神戸:それでいうと、僕はこのラジオと別に、PERIMETRONの別のメンバーと二人でPodcastをやっていて、そっちでは酒を飲みながらもっと無駄な話をしてる(笑)。

ーー最近は雑談のPodcastが人気を集めていますよね。ここまで盛り上がっているのはなぜだと思いますか?

神戸:実際やってみて素直に楽しいんですよね。ラジオと違って配信時間の制限もないし、ずっと喋っちゃう。僕はPCに直接マイクを挿して録っているだけなんですけど、サービスや機材も増えて参入障壁も下がってきましたよね。あとは友達としゃべる口実にもなるので、Podcastが仲の良い友達と改めてしゃべる機会になってくれるというか。

佐々木:いまはクリエイターもアーティストも、人間性が重要視されてきていますよね。その人が持ってるスキルや作品と同じぐらい、ファンがそのポリシーに寄り添えるのかが重要な気がしていて。「推し」みたいな言葉が流行るように、「その人の内面とか、裏の素顔が見たい」っていう欲求に応えるコンテンツが求められていると思うし、Podcastはまさにそういうオフっぽいところが人気なんだと思います。

ーー音声コンテンツが人間性を見せられるプラットフォームになってきているということがとても興味深いなと思います。これまではSNSが本来そういう場だったと思うのですがそれが移り変わってきているのかなと。

神戸:クリエイターが人間性で評価されるのは良い面と悪い面があると思っていて、SNSはそれが現れやすいんですよね。「昔こういう悪いことをしていた」とすぐに晒されて広まってそれがその人の印象に作用してしまう。人間性を評価して作品に興味を持ってくれる人が増えている一方で、そういう部分を見るとみんな人に興味もちすぎじゃない? と僕は思っちゃいますね。

佐々木:本来であればSNSを通して作品だけが評価される世界の方が個人的にはクールだと思うんですが、そうもいってられないなと最近感じています。僕は自分の人間性とかパーソナルな部分を出してSNSを使っていたんですけど、もう少しピエロ的な使い方の方が実は正しいような気がしていて。今の時代はキャラクターを作ってそれぞれのSNSに合わせた発信をした方が求められるんだろうなってことは理解しているんですけど、それをやるには疲れちゃうんですよね。

ーークリエイターとして活動しているなか、ラジオやPodcastなどの音声コンテンツを始めてみて、新しい発見などはありましたか?

佐々木:けっこう自分の仕事だけをしていたら、「新しく出会った人の話をじっくり聞く」タイミングって意外と少ないんです。この番組のおかげで出会えなかった人と出会えたり、ほかの人の意見やこだわりを知ったりできるのは嬉しいですね。

神戸:『PERIMETRON HUB』っていう番組の名前にちなんだグッズを出そうと考えていたときに、思いつきで「ハーブティーとかどう?」なんて言っていたら、リスナーの方にハーブにとても詳しい方がいて。いまその方と一緒にグッズの商品化を考えているところなんです。こういう体験も、この番組がなかったらありえなかったことですね。

佐々木:双方向的に全然知らない人と会話ができるのは嬉しいよね。よくメールをくれるリスナーさんのことは名前も覚えるし、「娘がもう13歳になります」とか届いて、そんな経ったの! みたいな経験もあります。親戚のおじさんみたいな気分(笑)。

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