分散型SNSはTwitterの後継足り得るのか? 僕らがSNSを使う理由とともに考える
ツイッターのように短文を投稿してやり取りする非営利のSNSソフトウェア『Misskey』が脚光を浴びている。イーロン・マスク氏がTwitter社のCEOに就任してさまざまな仕様変更を行うなかで、Twitterに代わるSNSとして注目された分散型SNSの一つであり、日本人開発者によって作られたものだ。
分散型SNSといえば過去にも『Mastodon(マストドン)』が話題になったが、今回はこうしたSNSサービスの仕組み、そしてこれらが今後発展していくうえでの課題について考えてみようと思う。
分散型SNSとは サーバもサービスも分散する、Web3的なSNS
そもそも分散型SNSとはなにか。FacebookやTwitterなど、現在の主要SNSは一つのサービス・サーバにユーザーが集う仕組みなのに対して、分散型SNSにおいては話題やユーザーに応じたインスタンス(サーバ)が多数存在し、ユーザーは自分の所属するインスタンスを決めてユーザーIDを登録する。
Twitterでたとえると、「釣り」「ライブ」「友人」などの趣味やレイヤーに応じた複数のアカウントを持っているユーザーがいるかと思うが、分散型SNSではこうした話題に対応するインスタンスがある、というイメージだ。異なるインスタンスのユーザーとやりとりをすることもできる。
2016年に公開された『Mastodon』はTwitterに代わるSNSサービスとしてたびたび注目を集めている。Twitterでユーザーアカウントの凍結が増えたり、APIの使用条件が変わったりといった動きがあるたびにMastodonはユーザーを増やしており、現在でも話題になっている。
『Misskey』もこうした分散型SNSソフトウェアの一つだ。仕様はオープンソースで公開されており、インスタンスを個人で作成することも可能だ。WEBブラウザから覗くインターフェイスはDiscordにも近く、TwitterとDiscordを使ったことのあるユーザーなら簡単に仕組みを理解できるだろう。
多くのインスタンスにはフォローしていないユーザーの投稿もリアルタイムで閲覧できる「ローカルタイムライン(LTL)」という仕組みがあり、LTLを眺めるだけでもインスタンスの雰囲気や特徴をつかめるので、登録したらまずはLTLを見てみるのが面白いだろう。Twitterの「リツイート」のような拡散機能や、DiscordやSlackのように投稿へスタンプを付けて反応する機能もある。
そして分散型SNSには相互に通信可能なプロトコルが策定されている。『Misskey』と『Mastodon』はまったく違うサービスであるが、ともにW3Cの策定したプロトコル「ActivityPub」を採用しているため、投稿を相互に閲覧できる。たとえばMisskeyのソフトウェアからMastodonのインスタンスの投稿を読むことも可能だ。これこそが分散型SNSの大きな特徴で、Twitterのような中央集権型のSNSが「一つのソフトウェア・サービスで一つのインスタンスを閲覧する仕組み」であるとたとえるならば、こうした分散型SNSは「複数のソフトウェア・サービスによって複数のインスタンスが連合する仕組み」である。これらの連合状態は「Fediverse(Federated(連合)+Universe(宇宙)のかばん語)」と呼ばれている。
少し乱暴な例えだが、どのキャリア、どのメーカーの携帯電話でも電話番号があれば相互にやりとりできるようなものだ。SNSというサービスの特性を考えるとこの実装は自然で、むしろ単一の企業が提供するサービスがここまで肥大化してしまったことの方が不自然にすら見える。分散型SNSの仕組みはシンプルで、だからこそ可能性を感じる。個人的にはぜひTwitterに代わる選択肢として普及してほしい。下の画像はMisskeyを起動してMastodonの私のアカウントを検索した様子だ。