ビデオゲーム界に「大ガールズファッション時代」到来の兆し? 『ガルモ』のシンソフィア最新作『ファッションドリーマー』から考える

 2023年2月9日に配信されたNintendo Directにて、Nintendo Switch用ファッション&コミュニケーションゲーム『ファッションドリーマー』が発表された。

ファッションドリーマー [Nintendo Direct 2023.2.9]

 本作はオシャレを楽しむための仮想空間で、自分だけのコーデ(コーディネート)やオリジナルアイテムの作成などを行い、“ファッションインフルエンサー”を目指すゲームだ。NPCやオンラインで繋がるほかのユーザーのコーデに“いいね”をするといった簡単なコミュニケーションで、自分の影響力が大きくなったり、相手が持っているファッションアイテムが手に入るといったソーシャルな楽しさも擬似体験できる。

 パブリッシャー(販売会社)はマーベラス、デベロッパー(開発会社)はシンソフィアのタッグで、2023年内の発売を目指して、開発が進んでいる。

“ガールズファッションのシンソフィア”を決定的にした傑作シリーズ『ガールズモード』

 ゲームの映像をチェックしてみると、男性ファッションの要素も見受けられるものの、比重としてはガールズファッションが大きくなりそうな印象を受ける。シンソフィアが開発する、ガールズファッションをテーマとしたゲームといえば、任天堂がパブリッシャーを務めた『ガールズモード』シリーズを思い出すゲームファンは多いだろう。

 『ガールズモード』シリーズの1作目はニンテンドーDS用タイトル『わがままファッション ガールズモード』として2008年に登場した。プレイヤーはアパレルショップの店員となって、来店した客のオーダーに適したファッションアイテムや、コーデ一式を提案していく。ショップの利益を上げることで、新たなアイテムを仕入れ、自分のショップを持ち、そして人気店に成長させていくといった目標の達成を目指していくゲーム性だ。

 ファッションアイテムの種類は1万点以上。髪型やメイクを変えて自分自身のおしゃれを楽しんだり、ファッションコンテストのコーデを担当したりと、経営シミュレーション的な側面もありつつ、“オシャレ”を軸としたさまざまな楽しさが、1作目の時点で詰め込まれていた。

 当時はニンテンドーDSが老若男女を問わず、幅広い世代にヒットしていたこともあり、本作もまた大ヒットを記録。子どもだけでなく、普段ゲームをプレイしない人も楽しめるゲームバランスを保ちつつも、コアなゲーマーも舌を巻く斬新さ、楽しさを両立しており、雑誌『CONTINUE』の「GAME OF THE YEAR 2008」ではみごと1位に選ばれている。本作を通してオシャレの楽しさに気付いたゲームファンも多かったのではないだろうか。

 その後、同シリーズはニンテンドー3DSでも続編を出し続け、2作目~4作目までをリリース。登場するファッションアイテムのさらなる増加だけでなく、タイトルごとに新たなコンセプトも取り入れれて変化を付けていった。

 現時点での最新作である4作目『Girls Mode 4 スター☆スタイリスト』では、アイテムの種類が1作目の倍となる2万点以上という大台に到達。さらに、本作では歌手を目指す3人の女の子を、主人公がスタイリストとしてバックアップし、彼女たちがオシャレの力で夢を叶えていくというストーリーを展開した。彼女たちがプレイヤーの施したコーデを身にまとい歌って踊る、さらにコーデのテイストによって歌う楽曲が変化するといった要素は、ゲームの柱のひとつとなっていた。

Girls Mode 4 スター☆スタイリスト 紹介映像

 こうした要素のために、豪華なクリエイター陣が関わっていたことも『Girls Mode 4』の特筆すべき点だ。シナリオは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』や『ガールズ&パンツァー』など、数々のアニメ作品を手掛けた吉田玲子が担当。メインキャラクターのデザインは『おとめ妖怪ざくろ』や『輪るピングドラム』の星野リリィが手掛けている。

 15曲用意されたゲームオリジナル楽曲は『Paradox Live』などを手がけるエイベックスグループの油井誠志がプロデュース、ライブシーンの振り付けはPerfumeの楽曲や“恋ダンス”などの振付師であるMIKIKOが担当するなど、いま振り返っても錚々たるメンバーである。

 なお、シリーズ1作目、2作目の発売に際しては、任天堂元社長・岩田聡がゲームの開発者たちにインタビューする名物企画「社長が訊く」が公開されており、各タイトルに込められた思いを現在もWeb上で読むことができる。

〈参考:社長が訊く『わがままファッション ガールズモード』
〈参考:社長が訊く『わがままファッション GIRLS MODE よくばり宣言!』

 岩田氏の逝去により、3作目からは「社長が訊く」で取り上げられておらず、『Girls Mode 4』に上記のような過去作と異なるコンセプトを取り入れた理由や、非常に豪華な座組が実現した経緯などは、いまなお明かされていない。シリーズファンのひとりとして、筆者はこのことに対して長年にわたりとても歯がゆい想いを抱いている。

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