加藤純一や壱百満天原サロメらの配信でトレンド化 「ダンガンロンパ」シリーズに集まる注目と気になる今後の展開

「ダンガンロンパ」実況配信でトレンド化

 「ダンガンロンパ」シリーズがトレンド化の気配を見せている。背景にあるのは、『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』(以下、『ダンガンロンパ1』)の配信規制の撤廃だ。

 推理アドベンチャーの名作として、発売から長い年月が経てもなお、フリークたちに愛される同シリーズ。本稿では、トレンド化に至る経緯を踏まえ、ほかのアドベンチャーゲーム・ノベルゲームに与える影響を紐解いていく。

スパイク・チュンソフトが贈る名作推理ADV「ダンガンロンパ」シリーズ

Nintendo Switch『ダンガンロンパ トリロジーパック + ハッピーダンガンロンパS』紹介トレーラー

 「ダンガンロンパ」シリーズは、スパイク・チュンソフトが開発・発売を手がける推理アドベンチャーだ。プレイヤーは、優れた能力を持つ生徒ばかりが集められた高校のいち生徒となり、学園内・クラス内で起こる事件の究明を目指す。ゲーム中には、推理に必要な情報を集める「ADVパート」と、犯人が誰であるかを生徒全員で議論する「学級裁判パート」が登場する。同シリーズのオリジナリティとなっている後者では、シューティングやリズムアクション、パズルなど、さまざまなジャンルの要素からなるミニゲームにチャレンジしながら、スピード感のある推理シーンが展開されていく。

 いわゆるところの「クローズドサークル系」(外界と隔てられた環境で起こる事件を扱う)に分類されるミステリーで、公式は同シリーズのジャンルを「ハイスピード推理アクション」と表現している。これまでに3作のナンバリングと、4作のスピンオフ(一部、配信終了タイトル、限定特典タイトルを含む)がリリース済み。2021年11月には、ナンバリング3作にスピンオフ1作を付属した完全版『ダンガンロンパ トリロジーパック + ハッピーダンガンロンパS 超高校級の南国サイコロ合宿』がNintendo Switchで発売となった。

配信解禁を背景にトレンド化。Steamでは売上ランキング圏内に急浮上

ダンガンロンパ1・2 Reload PS4版プロモーションムービー

 2022年12月24日には『ダンガンロンパ1』の配信規制が一部撤廃(※1)され、これまで1章のみとされていたプレイ動画のアップロードがエンディングまで可能となった。冒頭で話したとおり、注目が集まっている背景には、この規制緩和がある。

 リリース当初、PlayStation Portable専用で登場した同タイトルだが、2016年にはSteam、2017年にはPlayStation 4、2021年にはNintendo Switch、2022年にはXbox Oneと、現代の主要なプラットフォームすべてに移植され、現在では誰もが気軽にプレイできる環境が整っている。そのような過程をたどるにつれ、発売当時のことを知らないフリークたちにもシリーズの面白さが浸透。少しずつ人気が広がりつつある状況だ。

 この規制緩和を受け、多くの人気ストリーマーたちが『ダンガンロンパ1』の動画を各プラットフォーム上にアップロード。加藤純一や、壱百満天原サロメ、三枝明那といった面々はその一例である。直近では、実況・配信界隈の動きに後押しされてか、Steamの売上ランキング上位に『ダンガンロンパ』シリーズの各作品が食い込む現象も。リリースから長い時間が経過したタイトルがチャートを賑わすのは異例のことだ。

ダンガンロンパする その1

 参考までに、本稿を執筆している2月22日時点の情報を紹介すると、『ダンガンロンパ1』が51位、『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』(以下、『ダンガンロンパ2』)が40位、『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期(ダンガンロンパ3)』28位にランクイン中(※2)。もちろんここには、発売元のスパイク・チュンソフトが2月17日から実施しているパブリッシャーセールの影響もある。しかしながら、ダンガンロンパ2については、セール開始前の前週もランクインしている。プライスオフは一連の動向の主因ではなく、あくまでも副因にとどまると考えられるだろう。

 また、前週以前と比較すると、3作すべてが順位を上げていることから、このトレンドはいまだピークに向かう途中とも推測できる。発売から時間をおいての『ダンガンロンパ』ブームは、きわめて興味深い動向と言えるのではないだろうか。

※1…個人の非営利利用に限る。法人、個人事業主など、事業での利用については別途問い合わせが必要とのこと。
※2…公式発表の週間売上ランキングによる。集計期間は2023年2月14~21日。

非公式実況・配信がもたらすメリットから、今後の展開を考える

 近年では開発・発売元からガイドラインが示されることも多くなり、文化として定着しつつあるゲームの実況・配信だが、草創期には著作権侵害との境界が曖昧だった。今回取り上げた『ダンガンロンパ1』に関する規制緩和の裏には、時代の変化と、同文化の成熟があると考えられる。

 一方で、アドベンチャーゲームやノベルゲームのように、物語を追うことがゲーム性の多くを占めるジャンルでは、実況・配信が認められないケースもある。プレイヤーが自身の操作を通じて作品を楽しむこと以上に、そこに描かれた世界を小説や映画のように受け取り浸ることが主題となっているジャンルだけに、時代の変化・文化の成熟に任せた単純な規制緩和は難しい面がある。

 しかしながら最近では、配信・実況の文化から人気に火がつき、トレンド化するタイトルも増えてきた。『Among Us』や『Fall Guys』、『Feign』などはその代表例だ。当初は売上に悪影響を及ぼすと考えられていた実況・配信という“二次創作”は、いまやひとつの販促として不可欠な媒体となりつつある。この点が同文化がゲーム市場にもたらすメリットといえるだろう。

 「ダンガンロンパ」のトレンド化は、アドベンチャーゲーム・ノベルゲーム全般の規制緩和に一石を投じる動きとなる可能性がある。シリーズ内では今後、『ダンガンロンパ2』『ダンガンロンパ3』の配信規制が撤廃されていくであろうことにくわえ、ジャンル内では今回の出来事がきっかけとなり、名作とされながら埋没しつつあるタイトルの規制緩和につながっていくのではないだろうか。

 「ダンガンロンパ」にかぎらず、アドベンチャーゲーム・ノベルゲームのジャンルには、人気ストリーマーたちが「認められるならば実況・配信したい」と考えるタイトルが多くあるように思う。開発・発売元、ストリーマー、一般プレイヤーの三者それぞれにメリットがあるような展開を期待したい。

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