PS4&PC版『428 ~封鎖された渋谷で~』発売! 愛され続けるサウンドノベルの傑作が現行機に

 2018年9月6日、スパイク・チュンソフトより『428 ~封鎖された渋谷で~』のPlayStation 4版が発売された。併せてDMM、SteamでPC(Windows)版も発売される。


 『428 ~封鎖された渋谷で~』は2008年12月、当時のセガ(現:セガゲームス)と旧チュンソフトによる共同プロジェクト「セガ×チュンソフト」から誕生した作品で、Wii用ソフトとして発売された。翌年、2009年9月にはPlayStation 3版、二週間後の9月17日にはPlayStation Portable版がそれぞれ、旧スパイクより発売。以降もiOS、Androidのスマートデバイスにも提供されるなど、多くのユーザーに愛されて来たが、今回、PlayStation 4、PC(Windows)への移植を果たすことになった。

428: Shibuya Scramble - Official Trailer | PS4

 また、これまでは日本国内でのみ販売されていた本作だが、今回のPlayStation 4、PC(Windows)版は、海外でも『428 Shibuya Scramble』の名で発売される。発売から10年近く経過するなかで、常にゲーム好きの関心事であり続ける『428』の魅力とは、一体どこにあるのか。

渋谷を舞台に繰り広げられる波乱の群像劇

 本作は、1992年3月7日に発売されたスーパーファミコン用ソフト『弟切草』で旧チュンソフトが提示し、以降、『かまいたちの夜』、『街 -machi- ~運命の交差点~』などの作品で進化・発展を遂げてきた「サウンドノベル」というカテゴリの作品。背景画像と音楽、効果音といったサウンドと共に表示される文章を追い、物語を読み進めていくというものだ。単に文章を読むだけでなく、途中で提示される「選択肢」を選ぶことで物語が分岐。正しいものを選べばその続きが、悪いものを選べば最悪の結末を迎えてしまう仕掛けも盛り込まれており、一筋縄ではいかない遊び応えを演出している。

PS4/PC『428 封鎖された渋谷で』ゲーム紹介トレーラー

 本作も過去のサウンドノベル作品、特に『街 -machi- ~運命の交差点~』のスタイルを踏襲しており、実写を用いたグラフィック、複数人の主人公といった特徴がそのまま継承されている。

 物語の舞台となるのは、題名にもある通り、東京都渋谷区だ。一つの誘拐事件を巡る、肩書と境遇も異なる5人の主人公による群像劇が描かれる。

 5人の主人公は皆、個性豊かだ。渋谷中央署の新米刑事、不良グループの元ヘッド、誘拐事件の被害者でもある製薬会社の研究所長、元新聞記者のフリーライター、そしてネコの着ぐるみ。彼らの物語を一つずつ追いながら、誘拐事件の真相とその裏でうごめく陰謀の究明に迫っていく。

 ゲームを始めて間もない頃は、5人の内の2人しか選べない。残る3人は選べる主人公のエピソードを読み進めていくことで解禁されていき、それに関連して物語はさらなる広がりを見せていくことになる。

 主人公ごとに用意されたエピソードは作風も異なる。ある主人公は終始、緊張感に包まれたシリアス調であるのに対し、もう一人はコメディ重視であると言った具合だ。特にネコの着ぐるみこと「タマ」は、他の4人以上に浮いたエピソードになっている。

 しかし、こんな彼(?)も、物語のキーである誘拐事件に大きく関わってくる。それがどのようなものなのかは、実際にプレイしてご覧になっていただきたい。予想だにしない展開を目にすることになるだろう。

二転三転を繰り返す怒涛の脚本と時系列を昇華したシステム

 そんな意表を突く展開が象徴する通り、本作最大の魅力は脚本だ。あらすじの第一印象だと、刑事と被害者である研究所長以外の3人に関連性は見出せず、赤の他人という位置付けだが、物語が進むと思わぬ形で事件に巻き込まれていく。

 特に中盤からエンディングにかけての展開は圧巻だ。ただの端役に過ぎなかった人物が意外な行動に出たり、本筋と無関係な小話が実は重大な伏線であったことが発覚するなど、プレイヤーの予想を大きく覆す真相がジェットコースター並みの勢いで明らかになっていく。終盤に登場する事件の黒幕も衝撃的で、その頃になればもう、休憩する間を挟むのが勿体なくなってしまうほど、一連の展開にくぎ付けになってしまう。僅かでもその一端を紹介すると楽しみを損ねてしまうので、曖昧な表現でまとめさせていただくが、プレイすれば、サウンドノベルの金字塔たる所以に納得すること間違いなしだ。

 また、システム面も興味深い作りをしている。物語は「タイムチャート」と称された時系列上で展開されていくのだが、これに主人公が取った行動が影響を及ぼす仕組みとなっていて、ある主人公が特定の選択肢を選ぶことにより、もう一人の主人公が将来的に遭遇する悲劇が回避され、次のステップへと進むという変化が起きる。

 逆に別の主人公が行動しないと、先が見れなくなってしまうことも。そのためにキーとなる主人公のエピソードを進め、先へと進む突破口となる赤く表示された文章から「ジャンプ」し、続きを読み進めるという過程を辿る必要も生じる。

 もちろん、選択肢によっては物語も多種多様に変化。事件が解決してお役御免になってしまったり、文字通りの悲劇に見舞われたりなど、想定外の展開には翻弄されること請け合いだ。

 「時系列」という名のチャート図を元に、それぞれの主人公が互いに影響を及ぼしながら、物語を進めていくのは独特な面白さがあり、プレイヤーが積極的に参加し、考えなければならない仕組みも相まって緊張感も十分。脚本の面白さに目がいきがちだが、このようにゲームプレイも洗練されている。ガイド機能も万全で、サウンドノベルは初めて、というプレイヤーにも優しい設計だ。この一連のシステムが提供する遊びもまた、本作の大きな魅力となっている。

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