TikTokフォロワー140万人超えの「背中男」は何者? ダンス動画は“クオリティ重視”の時代に

TikTok「背中男」は何者?

 TikTokでカメラに背中を向けてダンスをする動画が話題となり、140万人以上のフォロワーを集める「背中男」をご存知だろうか。

 学校、路上、リビングルームと言った日常風景を舞台に、キレッキレのダンスを披露している「背中男」の正体は、ダンサーとして活躍するGINJIROだ。特に高校生や、子どもたちを巻き込んで一緒に踊る動画が人気だ。ほかには「○○している場合じゃない男」「○○する気がない男」というお題で、仕事や食事といった日常的な行動をとるように見せかけて、中断してダンスをしてしまう動画が更新されている。以前は正面を向いてダンスをレクチャーする動画が中心だったが、2021年2月ごろから背中を撮る動画が増えている。

@ginjiro_koyama 教室出る癖が強すぎる人達#別角度ver #habit #sekainoowari #背中男 #背中学生 #背中先生 #都市大塩尻高校 ♬ Habit - SEKAI NO OWARI

 人気の理由は、背景になっている日常風景に対して違和感が生じるダンスのキレだろう。GINJIROの公式サイトによると、彼は日本最大級のストリートダンスコンテスト「JAPAN DANCE DELIGHT」でも入賞した経験を持つダンサーだ。ダンス講師としても活動し、子どもたちにK-POPダンスを教えるワークショップも定期的に開催している。日頃から子どもと接して一緒にダンスをしていることが、動画で一体感のあるダンスを披露できる理由かもしれない。

 高いクオリティのダンスの動画を2年間毎日欠かさず投稿し続けていることもファンを離さない秘訣だろう。時には1日に何度も更新している。

@ginjiro_koyama とうとうコラボした男#xoxo #repezenfoxx #背中男 @【Repezen Foxx】🦊 ♬ XOXO - Repezen Foxx & SPRITE

 直近の動画では人気アーティストともコラボしている。教室で生徒と踊る動画にはDA PUMPのKENZOが登場。度々楽曲を使用していたRepezen Foxxも、子どもたちに混じってハイタッチやダンスをする動画に登場している。コラボをきっかけにGINJIROを知る人も増え、今後ますます人気になりそうだ。

 初期のTikTokは楽曲を使用して、Z世代を中心とした一般ユーザーがダンス動画を撮影する動画プラットフォームとして世界中で人気を集めた。ダンスをしやすい楽曲がTikTokで流行したことをきっかけに、ヒットすることも多い。一方で、運営会社であるByteDanceは、2018年にリップシンク(口パク)動画の人気プラットフォーム「musical.ly」を買収しTikTokと統合したことで、ユーザー数を増やすとともに、ダンス以外にもジャンルを増やしていった。

 これにより投稿される動画のジャンルは拡充され、2022年末に開催されたTikTokで活躍したクリエイターを表彰する「TikTok Awards Japan 2022」では、アート、ビューティー、コメディといった多様な17もの部門が設けられ、それぞれの部門で弁護士や油彩画家などの、その道のプロのクリエイターが受賞。元来TikTokがユーザーを集めることに寄与した「人気の楽曲を公式に使える」という機能を活用しないショート動画を投稿するクリエイターが増えたことで、“バズる”動画にも多様性がもたらされた。

 「TikTok=ダンス動画が人気」というプラットフォームではなくなってきたなかで、ダンスに関するクリエイターを讃える「Dance Creator of the Year」には、世界最高峰のダンスバトル大会「JUSTE DEBOUT 2017 WORLD FINAL」でワールドチャンピオンにもなったプロのダンサーのMiyuが選ばれた。受賞者は再生数やいいね数といった数値指標を基にノミネートされ、ユーザーの投票によって決定している。つまり、質の高いダンス動画がユーザーによって評価されているのだ。

 今もなおZ世代を中心とした一般ユーザーが友人とダンスを楽しむ動画も投稿されているが、昨今はそれとは別にGINJIROのようなプロのダンサーの活躍の場にもなっている。ダンス動画が溢れかえったことにより、ユーザーがより質の高いコンテンツを評価する風潮が後押ししたことも要因のひとつだろう。今後はさらに参入するプロが増えるはずだ。お気に入りのダンサーを発見できるプラットフォームとして使うのも新たな楽しみ方なのかもしれない。

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