ついに日本上陸。中国EVメーカーBYDの『ATTO3』とフォルクスワーゲンの世界戦略EV『iD.4』、話題のEV車を実力測定!
毎年2月に開催される日本自動車輸入組合(以下JAIA)主催の試乗会。メディアやジャーナリストが新型モデルを体験するイベントでもある。今年はEVモデルが数多く出展された。そこでモータージャーナリスト・海野大介が試乗したクルマの魅力や実力をご紹介しよう。
BYDはEV界の風雲児となるか?
中国の電気自動車メーカーであるBYD(ビーワイディー)。実は同社は世界でも屈指のリチウムイオンバッテリーのメーカーとしても知られ、2003年より自動車分野に本格的に進出した。新興自動車メーカーながらもここ数年での成長は目覚ましいものがある。
特に自動車大国のひとつであるドイツでは、レンタカーのシェアの大部分がBYDに取って代わるくらいとなっている。これはメルセデスやBMW、アウディといったいわゆるドイツ御三家メーカーのお膝元に出城を築くような状況であり、もはや世界的に「EV戦国時代」が到来しているといっても過言ではない。戦国時代に例えると織田信長の美濃攻略で豊臣秀吉が建てた墨俣一夜城がすぐそこに出来たようなものだ。まさに業界の風雲児的存在と呼んで良いだろう。
JAIA試乗会に登場したのは「東京オートサロン」でも展示されていたミドルサイズSUV『ATTO3(アットスリー)』同展示ではまだ日本仕様車が投入されていなかったので、今回日本仕様車がようやくお目見えした事になる。同車のボディサイズは全長が4445mm、全幅が1875mm。5ドアスポーツ車の『マツダ3』並みの全長でSUVの『ハリアー』と同じくらいの全幅となる。ちなみに車名は百京分の1を意味する単位に由来する。
弦楽器などがモチーフ?ユニークな内装
乗り込むとユニークなデザインのインパネが迎えてくれる。デザインテーマはフィットネスジムといい、シフトノブや空調の吹き出し口はダンベルがモチーフ。またドアに設けられた小物入れは弦楽器をイメージしているというから面白い。
シート前席は左右とも電動調整式でシートヒーターも内蔵。開放感あるパノラマルーフといったいわゆる豪華装備は標準となる。しかも、このパノラマルーフの開閉は音声でも操作できるのには驚いた。また日本車から乗り換えても違和感がないのがウィンカーレバーの位置。しっかりと日本仕様にローカライズされているのも魅力だ。ダッシュボードセンターに位置する12.8インチのディスプレイは縦位置横位置でも任意に設定できるので状況に合わせて変更できるのも良い。
マイルドな操作感覚
走り出すと、アクセルに忠実な走り。急激にトルクが立ち上がることもなく、マイルドな走行感。減速感も同様だ。EVだからと余計な気構えもなく乗れるのが良い。いわゆるワンペダルモードにしても同様で、不意にアクセルを閉じてしまっても急激な減速Gはない。日本車に慣れていたら逆に”効き”が物足りなく感じるかも知れないが、不満というレベルではない。
『ATTO3』はフロントに150kW/310Nmのスペックを持つモーターを搭載し、前輪を駆動する2WD。58.56kWhのバッテリーはEVのセオリー通り床下に設置されている。航続可能距離はカタログ値で485km。このバッテリーは同社独自の「ブレードバッテリー」で安全性を高めているのが特長だ。気になる価格は先進の運転支援機能や安全装備がついて440万円からで、補助金が使えれば350万円前後になる(自治体によって異なるので確認を)。これだけの性能や装備でこの価格は他に無く抜群のコスパを誇る。EV戦国時代に颯爽と登場した風雲児的車なのだ。