“貧困”や“孤独”にフォーカスしたVlogが人気爆発 慎ましくも実直な姿が共感を呼ぶ?

 非正規雇用・安月給・パートナーなし……そんな男性の生態を追ったYouTubeチャンネルが近頃、人気を博している。

 2023年1月23日、YouTubeチャンネル「絶望ライン工ch」に公開された「【手取り16万】絶望雪国暮らし【独り旅】| 地獄の会津帰省」と題した動画が急上昇ランキング入りを果たした。

【手取り16万】絶望雪国暮らし【独り旅】| 地獄の会津帰省

 「絶望ライン工」は、東京の工場で非正規社員として働く現在婚活中の40歳男性。年収は240万円、月収は手取りで16万円前後、令和4年夏の賞与は7万円、冬の賞与は6万4000円……。そんな現実に“絶望”しながらも給与明細を公開したり、独身寮で一人自炊したり、愛犬である「絶犬」と戯れて孤独を癒したりと、日々の生活を淡々とVlog形式で公開している。悲壮感溢れる状況を、思わずクスっとしてしまう、おそらく本人のものと思われるセンス抜群のナレーションで解説するスタイルの動画で高い人気を誇り、チャンネル登録者数は23年1月26日時点で27.6万人を数える。

 今回の動画は、絶望ライン工が地元・福島県会津へ帰省するという内容。実家のコタツでダラダラと過ごし、お昼時には隣町の喜多方市へ。名物のラーメンを食べ終えると、奥会津まで足を延ばして雪景色を見物。日が暮れれば帰宅し、父親特製のハンバーグに舌鼓を打ち、その後、大江戸温泉物語へと赴き日々の疲れを癒す……。「絶望雪国暮らし」「地獄の会津帰省」と銘打っている割には、充実したオフではないか。コメント欄にも「えっ 独身でも幸せそうです」「絶望さんや絶犬ちゃんは帰る所があって幸せですね」「今回も絶望の中に希望のかけらを見つけられるような内容で素晴らしかった」などの声が寄せられている。

 こうした貧困や孤独を売りにした男性YouTuberはほかにも存在する。たとえば、月給が手取り14万円ほどで築約80年の一軒家に暮らす24歳男性・だいによる「だいチャンネル」や、月給手取り約13万7000円で、妻子・家なし48歳派遣社員のやっちゃんによる「やっちゃんねる」などがその代表格だ。特にやっちゃんは、1月11日公開の動画で派遣切りに遭ったことを告白していることから、他の2人より絶望感が強めだ。

 むろんYouTubeで人気を集める彼らだけに、YouTubeで再生数を取れているのであれば、それなりに稼げているのでは?と疑いたくもなる。特に「絶望ライン工」などは、再生数50万回をコンスタントに叩き出し、なかには100万再生を超える動画も珍しくない。それに概要欄には、「私のチャンネルはすべて幻であり、虚構です。私を含め、動画内の人物や場所は実在しませんので、安心してご覧ください」などと意味深な記載もされている。実は裏でいい暮らしをしているのではないかと勘繰る視聴者がいるのも致し方ないだろう。

 もしかしたら彼らは、ビジネス貧困およびビジネス不遇なのかもしれない。しかし、そんなことを言い出したら、羽振りの良さを売りにしている金持ち系YouTuberや、仲の良さを売りにしているカップルYouTuberも、動画の中でかりそめの姿を演じているだけかもしれない。よって、ヤラセか否かという議論は不毛だ。嘘か誠かわからないが、それに限りなく近い状況に置かれながらも、限られた手取りの中で工夫して人生を楽しもうとしている、慎ましくも実直な姿に多くの人が共感しているからこそ、彼らの動画は伸びているのではないだろうか。

 今後もこれら貧困男性によるYouTubeチャンネルは、実生活では競争や見栄の張り合いに疲れ、YouTubeではキラキラ系YouTuberによる過度に煌びやかな生活をアピールする動画に辟易した人たちの避難所として、ささやかな賑わいを見せていくに違いない。

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