入力猶予0.016秒の高難度技も……『RTA in Japan Winter 2022』の「ドンキー」シリーズハイライト

RTA in Japan 「ドンキー」ハイライト

 2022年12月26日から31日、東京の会場および配信サイトのTwitchで『RTA in Japan Winter 2022』が開催された。RTAとはリアルタイムアタックの略で、現実時間をもとに対象ゲームのクリア時間を競う競技を指す。本イベントはそのRTAの祭典であり、今回も走者たちがさまざまなタイトルの最速クリアを目指した。本稿では、2022年のトリを務めた種目『スーパードンキーコングシリーズ トリロジーリレー』の部を紹介しよう。

 まずは概要から。3部作を意味する「トリロジー」という名前の通り、本種目では「スーパードンキーコング」シリーズの全3作を、タイトルごとに別の走者が挑むリレー形式でクリアしていく。

 今回のレギュレーションは1作目の『スーパードンキーコング』のみ「All Stages(すべてのステージをクリア)」で、2、3作目の『スーパードンキーコング2』と『スーパードンキーコング3』は「Any%(とにかく最速でクリアを目指す)」だった。

 1作目では炎龍氏(All Stagesの種目で世界5位 ※1)、2作目ではLeftover氏(Any%の種目で世界1位 ※1)、最後の3作目ではシャーフ氏(Any%の種目で世界1位※1)がそれぞれ走者を務めた。

※1……RTAの記録をランキング形式で閲覧できるサイト「SPEEDRUN.COM(https://www.speedrun.com/)」より(順位は2023年1月8日時点)。

猶予が0.016秒しかないRTA技も決まった第1部

 カウントダウンとともに、タイムの計測が開始。Yボタンを押しつつローリングで敵を倒すと連続でローリングが発動し、かつ操作中のコングが段階的に加速するなどの特性を活かし、炎龍氏は敵を効率よく巻き込みながら、高速で序盤のステージを駆け抜けていく。ボスもわずか10秒前後で倒し、最初のワールドを約4分でクリアした。

 ローリング時の無敵判定を利用したすり抜けや、特定の仕込みの後に敵を踏みつけて行う大ジャンプなど、さまざまな技を駆使して炎龍氏はその後も軽々と進む。後半のワールド5-5の「マインカートコースター2」では、ローリングと踏みつけの判定を同時に出して発動する、通称「飛鳥文化アタック」も成功させた。この技は空中を延々とローリングしながら移動するというテクニックで、成功させるための猶予はわずか約0.016秒。「1フレーム技」とも言われる、高難度の技だ。

 その後も順調にステージをクリアし、ついに迎えたラスボス戦。解説のシャーフ氏によると、ラスボスのキングクルールは動きがほぼすべて固定されているらしい。消化試合といった具合なのか、シャーフ氏にコメントを求められた炎龍氏はキングクルールと戦いながら、今回の祭典に向けて猛練習したことや、本種目に挑むことへの熱意を語った。その後、炎龍氏は危うげなくキングクルールを撃破し、33分6秒で『スーパードンキーコング』を走り切った。

キングクルールの真似をして翻弄するシーンも。

”透明ななにか”を使い、次々とステージを突破した第2部

 続いて『スーパードンキーコング2』の部へ。ワールド1と2のコースすべてに存在する「ワープバレル(ゴール直前まで移動できる)」を使い、Leftover氏は速攻で先を目指す。その道中では、序盤から「スプライトIDを用いた技」を駆使していた。

 これは、特定の手順を踏んでキャラクターに”透明ななにか”を持たせるというもの(目で見ると手ぶらだが、ゲーム内部の判定では物を持っている状態)。この状態でそのなにかを投げると、敵やギミックの動く速度を変えたり、ワープバレルなどのオブジェクトを引き寄せたりと、多彩な技を発動させられる。

”目に見えないなにか”を持っているところ。

 操作キャラクターがふたりで専用の技をくり出す「チームアップ」を使い、空中で2段ジャンプをするなどのテクニックを駆使しながら、氏はあっという間にワールド3に進む。3-5の「しずむナンパ船」では、先述のスプライトIDのテクニックを使用。ここではコースの途中、敵を倒して手に入れた透明ななにかを投げた直後、真下にあるボーナスバレルに入った。

 その瞬間、なぜか3-5をクリアしたという扱いになり、そのまま3-6へ。次の「とげとげタルめいろ」は、茨が張り巡らされたコースをタルを介して移動する高難度のステージだが、Leftover氏は迷わずタルを中継していき、難なくクリアした。

 その後も、カックルというガイコツに追いかけられる「ゴーストコースター」、下から迫る毒から逃げる「どくどくタワー」など、プレイヤーのあいだではトラウマともいえるステージも、氏は効率化された動きで突破していく。

 そしてワールド4、5、6と進み、ついにラスボスが待ち受けるワールド7へ。7-1の「スクリーチレース」は、本来スクリーチという敵とレースをするステージだが、敵の少し上を通り過ぎることでレース自体をキャンセル。ステージのコンセプトをくつがえす荒技でクリアしてみせた。

 ついに最後のボス戦へ。解説の炎龍氏曰く、相手のキャプテンクルールは吸い込み攻撃のタイミングを含め、ほとんどの行動が固定されているとのこと。跳ねたり回ったりする厄介な砲弾にも完璧に対応し、見事ラスボスを撃破。39分43秒で本作を走り切った。

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