あの人のゲームヒストリー 第二三回:大和田伸也
ゲーム、YouTube……大和田伸也が明かす「新たな挑戦を楽しむ理由」 “謎の構図”や独特なプレイスタイルの背景に迫る
ゲーム好きの著名人・文化人にインタビューし、ゲーム遍歴や、ゲームから受けた影響などを聞く連載“あの人のゲームヒストリー”。今回話を聞いたのは、なんと大和田伸也(以下、大和田)だ。
大和田は1965年、早稲田大学の学生劇団・自由舞台に所属。その後、1968年に劇団四季へ入団し、1977年には映画『犬神の悪霊』で初となる主演を務めた。テレビドラマにも幅広く出演しており、代表作としては『水戸黄門』、「踊る大捜査線」シリーズ、『藍より青く』、『篤姫』、『カムカムエヴリバディ』などが挙げられる。また、『ライオン・キング』の吹き替え版において、実写・アニメ版ともにムファサの声を演じるなど、声優としての経歴ももつ。
2022年11月11日にYouTubeのチャンネル『大和田伸也の隠れ家』を開設し、プレイ動画『スプラトゥーン3』が24万回再生、『ポケットモンスター バイオレット』が68万回再生(2022年12月23日時点)を記録するなど、大きな注目を集めた。人生におけるゲーム経験は多くないと語る大和田だったが、恒常的にゲームをプレイするようになって感じたことや、動画の視聴者に対する思いなどを聞くことができた。
なお、今回の取材は大和田の息子・大和田健介(以下、健介)が経営する『アソビバ Toys Cafe STUDIOKENSUKE』で実施。当日は健介とその妻も現場におり、これまでのことを一緒に振り返ってくれた。(編集部)
映画好きが高じ、『ゴールデンアイ 007』から本格的にゲームを手にとった
――最初に、大和田さんが初めて遊んだゲームを教えてください。
大和田:もう古い話だからねえ。いろいろちょっとずつ見たりはしていたんですけど、一番古いのはゲームウォッチだと思います。『水戸黄門』の撮影中に空き時間が結構あったので、そのときにやっていた気がしますね。本格的に遊びはじめたゲームは、『ゴールデンアイ 007』でした。
――『ゴールデンアイ 007』は対戦もできますが、おひとりでプレイされることが多かったですか?
大和田:息子の健介に教えてもらいながら、対戦をやっていました。最初は難しくて、科学工場の中では相手を追いかけていったりするんだけど、自分がどこにいるかわからなくなって。 特にトイレの中に入っちゃうと、もうわけわからんなっていうことがありましたね(笑)。でも、なんとなく面白いからやっていました。俳優さんの卵とか、うちにいる子たちとも遊びました。みんなでワイワイ楽しむのが面白かったですね。
――なぜプレイしようと思ったのですか?
大和田:対戦ゲームは難しいなという印象はあったのですが、「007」は映画を最初から全部観ているくらい大好きなんです。そのゲームなので、面白そうだなと思いました。
――YouTubeの自己紹介動画では、『みんなのGOLF』が好きとおっしゃっていましたね。
大和田:もともとゴルフをやっていたんですけど、首を痛めたりしてゴルフが禁止になった時期があったんです。それで、ゲームでゴルフできるじゃんと。『みんゴル』は風を読んだり距離を計算したり、本格的で面白いですね。対戦ゲームだと速さを競いますけど、『みんゴル』にはそういうのがないし、のんびり遊べるので、ずっとやっています。
――『ゴールデンアイ 007』と『みんなのGOLF』は対局をなすゲームのように思います。
大和田:そうだよね(笑)。『007』をみんなでやるときは「お父さん遅いじゃん」とか言われたりするんですけど、『みんゴル』のときはゴルフのルールをみんなに教えたりして、ちょっと優位に立てるので楽しかったですね。あとは、『マリオゴルフ』もプレイしています。
YouTube動画投稿のきっかけは、ホームビデオだった!?
――続いて、YouTubeについてうかがえればと思います。実況プレイをしようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
大和田:もともとは健介が毎日のように、僕の写真を撮っていたんです。でもある日、動画を撮っていたらしくて、それを見せてもらったらけっこう面白くて。「じゃあYouTubeに載せていいよ」と許可して、投稿したのがはじまりなんです。僕は油絵を描くのが好きなんですけど、息子たちが『スプラトゥーン』を遊んでいるのを見て、色を塗るのも大好きだし、キレイだし面白そうだなと思って自分も遊びはじめたんです。それを健介が動画に撮っていたんですよ。
最初はYouTubeに載せるつもりなんてなかったから、パジャマのままだし、寝る前だから眠そうな顔でやっていたんですけど、「お父さん面白いよ」なんて言われたりもしました(笑)。でも、もともとYouTubeはやってみたいなと思っていたんです。自分の好きな朗読とかをね。実際に動画を投稿したらいろんな人に「反響がすごいよ」と言われたりして、よくわからなかったんですけど、こうやって人とつながれるんだなと思いました。
僕の普段の姿を見て、楽しんでくれる人がいたり、癒されるという人がいたり、生きる喜びを感じたりと、いろいろな意見をいただくので、これは面白いもんだなと。ゲームを必死にやっているわけではなくて、ただ楽しんでいるんですけど、これを見て喜んでくださる方がいるなら、やってみようかということでYouTubeをはじめました。
――入り口は、ホームビデオのようなものだったんですね。
大和田:そうですね。これからも続けるなら、YouTubeですという感じではなくて、ほんわかしたホームビデオみたいにしたいですね。楽しんでやりたいなと思います。
――『スプラトゥーン3』はどんなところが好きですか?
大和田:色を塗るのも面白いし、インクをぶちまけることで、自分の想いをパーッと発散できますね。 団体戦だから孤独じゃないし、みんなで盛り上げていくというところが『スプラトゥーン』の魅力じゃないでしょうかね。自分がダメだと人に迷惑かけちゃうけど、 自分がうまくできると、みんなも喜んでくれるところも面白いですね。
――YouTubeの動画ではワイプが画面の四隅にあることが多いと思うのですが、大和田さんの動画ではなぜ中段右寄りに配置されているのでしょうか?
大和田:(動画の編集もしている)健介に言っているのは、ゲームを見せるんじゃなくて、ゲームを楽しんでる僕の顔を楽しんでいただきたいというか……(話したそうにしている健介に対し)うん、どうぞどうぞ。
健介:背景に父の描いた絵があって、それを見せたかったんです(笑)。
大和田:そうだ。最初は『スプラトゥーン』だから、僕の油絵を見せたいっていうのがあったんだよね。
健介:(ワイプが)どういう大きさとか、YouTubeのルールがまったく分からなかったんですけど、面白いからホームビデオみたいにそのまま載せただけという。
大和田:しかも携帯で撮ってるもんね。
――動画のアイキャッチで使われているイラストも、もしかして……。
大和田:あれは全部僕が描いたものです。息子も僕が絵を描いていることを知ってもらいたかったみたいだし、編集時に僕が描いた絵を入れるというのは、面白いアイデアだなと思いました。YouTubeのルールも、ゲームのルールもよく知らないうちからはじめていて、逆に上手になったら見せたくないぐらいですね。僕の普段の姿を見せることで、特に年齢が上の方は勇気がわくんじゃないかなと思って。ゲームを見てもらうことが一番ではないから、チャンネルに「隠れ家」っていう名前をつけたんです。
――動画の視聴者に、ほかに伝えたいことはありますか?
大和田:人生を楽しんでほしいですね。たとえば『ポケモン』にしても、なんにもわからずにはじめたんですけど、ゲームを見てくださいじゃなくて、チャレンジする姿を見てほしくてはじめたんですよ。それでやってたら、セリフがいっぱい書いてあったんで、商売柄もあるのかもしれないのですが、思わず(アフレコのように)喋ってしまったんです。
しかも、いろんなキャラクターで。校長先生なんか最初遠目で見たら女の人かと思っちゃって、女の声ではじめようとしたら、健介が男だっていうんで、すぐおじさんの声に変えました(笑)。『鉄腕アトム』の天馬博士や『ライオン・キング』のムファサの声を10年以上前にやっていたので、このままじゃいかんなと思って、たまにいい声を出したくなるんです。
若いときからのモットーが夢と情熱という言葉だったんですけど、この年齢になっても、やっぱりそれはなくしたくなくて。なにかに夢をもって、それに情熱を傾けるっていうことをずっと続けていきたいですね。今回はゲームをやってみて、その奥深さを知ることができました。結果としては下手ですけど、やっている姿になにかを感じていただければという思いですね。