Yossyとスイニャンが振り返る“2022年のeスポーツ”【前編】 「コロナ禍で進んだ観戦体験と失われたオフライン文化」

コロナ禍で激変 2人の視点から見たeスポーツの現状

――2020年に入ってから全世界で新型コロナウイルスが流行し、日常生活が瞬く間に激変しました。eスポーツ業界ではどのような変化が生じたのでしょうか。

Yossy:そうですね。コロナ禍はよくないものだけど、eスポーツ業界にとってはスポーツ観戦みたいなものが数年レベルで先に進んだと思っています。イベントやライブが全部オンラインになったし、会議もリモートワークへ移行した。動画を見ること・配信することが当たり前になった結果、YouTubeやTwitchが盛り上がったり、切り抜き文化も流行りだした気がする。結果的にeスポーツが広く認知されたと感じていますね。もちろんオフラインイベントがほぼ無くなったのは、僕も毎年取材させてもらっていたから悲しかったんですけど、その反動なのか、いまはさいたまスーパーアリーナなどの大型会場でオフラインを初めて体験する人がいるし、前向きな結果に繋がっていると思います。

さいたまスーパーアリーナで開催された「VCT 2022 Challengers Japan Stage2」Playoff Finals

スイニャン:Yossyさんのお話はとても興味深いです。なぜかと言えば、私は以前からめちゃくちゃオフラインを軸に活動していたじゃないですか。その現場が突然無くなって、すべてがオンラインへと切り替わりました。進歩した部分もあるけれど、あれだけオフラインで盛り上がった熱狂がやっぱり見えてこない。選手たちも今までは観客の声援に全力で応えていたけれど、無観客のオンラインイベントだとそうはいかないですよね。実際、「オンラインになって僕のことを応援してくださっている日本の皆さんが本当にいるかわからないですけど……」みたいなインタビューも通訳しなくちゃいけない。だから、せっかく良い感じにオフラインの応援文化が進んでいたのに、全部リセットされてしまった感覚だったんです。

Yossy:そうだね。オンライン的にはプラスだけど、オフラインの観点から考えるとマイナス面が目立つ。LJL(LoLの国内リーグ)もキャスター席の後ろにお客さんが誰もいなくて、すごく寂しい印象を受けました。スイニャンさんは通訳者として立ち会っているから、僕とは違った独自の視点があると思います。

スイニャン:それでも、今年は『VALORANT』の人気にびっくりしましたね。ただ、国内のeスポーツに対する盛り上がりは以前と別物のような感覚も見受けられます。海外の様子を見ていると、選手や観客を含めて単純に現場へ戻ってきた感覚で。一方、日本は“戻ってきた”感覚をあまり実感していないと思うんです。たとえば『LoL』をこれまでオフラインで見てきた人は、まだオフライン復活の喜びを感じていないと思うし、逆に『VALORANT』から入ってきた人はコロナ禍より前の現場を知らないはず。だから日本はある種、特殊な状況下にあると思います。

Yossy:完全に前と同じではないのはあるよね。たとえばLJLは毎週オフラインで試合を開くのが定着しつつあったけど、それがまだ戻ってきていない。これはPCゲームだけでなく、昨今eスポーツシーンでも盛り上がっているモバイルゲームにも言えることじゃないかな。

スイニャン:モバイルゲームはユーザー層が全然違っていて、PCゲームと合わせて見ている層もいれば、モバイルゲームだけをキャッチしている人もかなり多い。『PUBG MOBILE』の日韓戦で通訳を担当しましたが、選手やファンもPC版とはだいぶ異なります。制作会社や実況解説は案外同じことがあるけれど、モバイルゲームは独特な雰囲気でしたね。

Yossy:僕が見ている限りだと、モバイルゲームは女性ファンが圧倒的に多い印象がありますね。実際に『荒野行動』のオフラインイベントを見に行った際、現場で若い女の子がスマホを持ち寄ってプレイしている光景に驚きました。

スイニャン:プレイヤー層もモバイルゲームの方が女の子が多いのかな。そういう意味では、『IdentityV 第五人格』も別世界で面白いと感じています。私も興味があって調べたんですけど、若い子たちがストリーマーさん経由で流れてきたように見受けられました。

日本人選手が歴史的快挙を達成 eスポーツシーンで飛躍した2022年

――PCゲームやモバイルゲームの話題も上がりましたが、お2人が2022年のeスポーツ業界を振り返るにあたって印象深かった出来事を教えてください。

Yossy:みなさん同じだと思いますが、やっぱりZETA DIVISION(ZETA)が『VALORANT』で世界3位になったのは大きかったと思います。それに、さいたまスーパーアリーナで観客1万人が会場を埋め尽くすというのも、これまでにありませんでしたから。僕は『Counter-Strike』の競技シーンを見ていたから、300人ほど集まればすごい印象で、4000人近く集まったLJLのオフライン決勝もかなり驚いた。そこを上回る1万人は理解が及ばないと言うか(笑)。本当にエンターテインメントのひとつになりましたよね。

『VALORANT』世界大会ベスト4以上確定! 世界が注目する「ZETA DIVISION」のシンデレラストーリー

2022年4月10日から4月24日にかけて、アイスランド・レイキャビクにて『VALORANT』の世界大会『2022 VALORA…

スイニャン:私も同意見です。個人的に印象深いのは、DetonatioN FocusMeを5年間支えたEvi選手のチーム移籍。実際に公式発表を見ると感慨深くなりました。先ほどのZETAと繋がりますが、世界規模のeスポーツシーンで日本人が活躍し、実績が認められて海外チームへ入ったことは快挙だと思います。

Yossy:eスポーツの捉え方が多様化しているけれど、ゲームに人生をかけた真剣勝負を僕らは日常的に見ているわけで。『Counter-Strike』や『VALORANT』も含め、そうしたメインストリームで日本人選手が活躍した事実は、本当に歴史に残る実績ではないでしょうか。全世界で流行するeスポーツタイトルがやっぱりあって、そこで日本人選手が活躍していることは、昔から追いかけている人からすれば偉業だと思います。

関連記事