続々と登場のSRPG話題作 新たな金字塔の誕生に必要な要素を考える

 シミュレーションRPG(以下、SRPG)のジャンルから、話題作が続々とリリースされている。2023年1月には、『ファイアーエムブレム 風花雪月』の好評が記憶に新しい「ファイアーエムブレム」シリーズから、ナンバリング最新作『ファイアーエムブレム エンゲージ』も登場。トレンドジャンルのひとつとなりつつある。

 一方、近年顕著なのが、時代に合わせた“SRPGらしさの変化”だ。本稿では、直近に発売されたタイトルたちから、その変化をとらえ、新たなる金字塔の誕生に必要な要素を考えていく。

SRPGの黄金期を彩ったシリーズから新作が続々登場

ファイアーエムブレム エンゲージ ストーリートレーラー

 SRPGとは、碁盤目状に区切られたマップ上で登場キャラクターの駒を動かし、敵陣の攻略を目指すゲームジャンルだ。ウォー・シミュレーションとRPGの両方の性質をあわせもつことから、このような名で呼ばれている。

 1980年代後半ごろからさまざまな作品がシーンに登場し、90年代には多くの人気シリーズが生まれた。「ファイアーエムブレム」や「スーパーロボット大戦」、「タクティクスオウガ」、「フロントミッション」などはその一例だ。

 ここ10年ほどはゲームハードのスペック向上などもあり、性能を活かしにくい同ジャンルの人気はやや低迷していたが、近年になり、ふたたび脚光を浴びつつある。2019年発売の『ファイアーエムブレム 風花雪月』、2021年発売の『スーパーロボット大戦30』『トライアングルストラテジー』、2022年発売の『Relayer』といった作品たちが一定の評価を獲得した。

 そうした時流の影響もあってか、2022年12月時点から前後数か月のあいだにも、続々と話題作が発売/発売予定となっている。2022年9月にはスクウェア・エニックス発、新規IPの『The DioField Chronicle(ディオフィールドクロニクル)』が、同年11月には『タクティクスオウガ リボーン』が、同年12月には『フロントミッション ザ・ファースト リメイク』がリリースを迎え、2023年1月には『ファイアーエムブレム エンゲージ』のリリースも控えている。うち3タイトルは、(リメイクを含むものの)90年代のSRPG黄金期を彩ったシリーズの新作。続々と注目作が登場する状況に、胸をおどらせているSRPGファンも多いはずだ。こうした動向は、第2次SRPGブームとも言えるものかもしれない。四半世紀の時を超え、SRPGがふたたび人気ジャンルとなりつつある。

四半世紀の時を超え、変わる“SRPGのカタチ”

フロントミッション ザ・ファースト:リメイク|| Nintendo Switch トレーラー

 かつてのSRPGのイメージは、ゲーム性重視のクラシカルなデザインで難易度が高く、RPG以上に地道なジャンルだったように思う。たとえばビジュアル面では、当時の最先端技術を活用したグラフィックやムービーが差し込まれることは少なく、システム面では、一度倒れたキャラは復活しない、終盤に活躍できるキャラは必ずと言っていいほど地道な育成を必要とする、といったゲームデザインが当たり前だった。しかし、近年評価を獲得しているSRPG作品では、こうしたかつての個性が失われてきている。

 実際に『ファイアーエムブレム 風花雪月』や『Relayer』には、魅力的なシーンを切り出したCGが数多く盛り込まれていた。また、紹介したタイトルのほとんどで、難易度の選択、簡易的な巻き戻しとオートセーブの機能、レベル上げ用のマップなどが実装されていた。

 もちろんこれらは“時代に合わせた進化”だ。無骨なゲームデザインでは新しい層を巻き込みにくく、往時を知っているプレイヤーにしか遊んでもらえない。必然的に比較対象も往年の名作たちとなりやすく、懐古的に各作品の評価が貶められることにもつながりやすいだろう。

 とはいえ、そうした“アップデート”に寂しさを感じるプレイヤーが多いのもまた事実である。何を隠そう、私もそのうちのひとりだ。古い感覚と言われてしまうかもしれないが、昔は難易度や不自由な育成要素もやりごたえの一部であり、それが制作側のコンセプトそのものだった。頑張って育てたからこそ、キャラにより一層の愛着がわく。そのような経験をしてきたSRPGファンは多いはずだ。

『タクティクスオウガ リボーン』ファイナルトレーラー

 直近に発売された『タクティクスオウガ リボーン』では、今作で新たに盛り込まれた要素であるタロットカードのシステムが賛否を呼んでいる。もちろんこれも本来無骨な作品であった『タクティクスオウガ』に、新しさ・カジュアルさを吹き込むものなのだろう。けれど、ファンがリメイクに求めていたのは、そのようなマイナーチェンジではなかった。だからこそ、そのギャップに戸惑うプレイヤーが多いのだと考えられる。

 一方で、同タイトルには難易度の選択がない。この点は時代に逆行するゲームデザインだったと言える。後発の『フロントミッション ザ・ファースト リメイク』には、プレイ開始時に難易度選択があった。2023年1月発売の『ファイアーエムブレム エンゲージ』にも、これまでのシリーズの傾向から推測するかぎり、「ノーマル」「ハード」と「カジュアル」「クラシック」の掛け合わせからなる難易度の選択が盛り込まれるだろう。

 私を含む、古くからのSRPGファンがプレイしたいのは、「制作側がコンセプトの一貫として設定した難易度のうえで、ギリギリの一進一退を繰り広げる」そんなタイトルなのではないだろうか。「どの敵から倒すべきか」「誰でトドメを刺すべきか」「この強いキャラで進めば楽だけど、先のことを考えると、いまは弱いこのキャラを育てなければならない」「命中率80%では攻撃が外れ、返り討ちにあうかもしれない。でもいま倒しておかなければ味方がやられてしまう」そんな葛藤を繰り返しながら、勝負の天秤を少しずつ傾けていくのが、本来のSRPGの面白さである気がするのだ。

 無論、「ファイアーエムブレム」シリーズに関しては、アドベンチャーとの融合、誰にでも手に取りやすいカジュアルさが直近のコンセプトなのだろう。それは時代の変化としてある程度仕方ないと感じる部分もある。しかしながら、ジャンル全体では、往年の名作たちの息吹を感じさせるような無骨なタイトルの登場も、どこかで期待してしまう私がいる。

 ようやく訪れた第2次SRPGブーム。金字塔の誕生に必要なのは、時代に迎合しない強気のスタイルなのかもしれない。

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