大工の現場の作業風景を動画で届けるYouTubeチャンネルが、いま人気を集めている。そのチャンネル名は「大工の正やん」（チャンネル登録者数45.3万人）だ。主に、家作りの様子を動画で投稿しており、動画の多くは数十～数百万回再生の人気を誇っている。

　大工の正やんは男性で、2級建築士と1級技能士をもつ、歴50年の大工YouTuber。生年月日は非公表だが、2022年3月に公開した動画内で65歳と話している。

　本チャンネルの動画の特徴は「手刻み」という加工方法を用いている点。手刻みとは、大工やのこぎりなどの道具を用いて加工する、昔ながらの木材加工方法。大工の現場では「プレカット」という、あらかじめ工場で木材を加工する方法を用いることが多いが、大工の正やんのチャンネルでは、歴50年の経験を活かした手作りの技術が見られる。また、穏やかな口調で丁寧に説明する様子は、視聴者としても非常に心地よい。職人の手によって木材1つひとつが加工されていく工程と、正やんの人柄の良さが、当チャンネルが人気を集める要因だろう。

　物作りが好きだったという大工の正やんは、中学卒業後、大工の世界に入った。親方のもとで9年9か月修行を経て、現在に至る。大工の正やんのYouTubeを運営している息子の船井 啓太さんが、2020年の春にコロナの影響で海外留学に行けなくなり、家にいる時間が多くなったことがきっかけで息子から提案があり、YouTubeを始めた。動画の1本目は、息子の勉強机を製作する企画。2020年3月に動画投稿を始めて以降、1年で10万人以上のペースで登録者数を増やしていき、2022年12月9日時点でチャンネル登録者数は45.3万人にものぼる、人気チャンネルとなっている。

　大工の正やんのチャンネルは、素人だけでなく、建築関連の職業に従事する視聴者にも人気がある。実際に、2022年4月に投稿した「【質問コーナー】気がついたら大工の人生相談になっていた件」という動画では、専門技術の疑問や大工さんの仕事に関する相談などが寄せられ、長年の経験を活かした的確な回答が、視聴者から高評価を受けていた。また、大工の正やんは弟子を取らないが、月額690円のYouTubeのメンバーシップで、大工道具の使い方やコツなどを伝授する限定動画を配信している。

　大工の正やんは、公式ホームページで、自然乾燥させた檜材を使ったまな板やまな板立てを販売している。大工の正やんが1枚1枚手作りで作っており、視聴者を中心に人気が高い。物作りが好きな方は、ぜひ大工の正やんの動画を視聴してみてほしい。