不要になったゲームやカメラ、楽器が円安で高く売れる理由 越境EC『eBay』の販売傾向から紐解く

 ハリウッド映画や海外ドラマを見ているとよく目にする『eBay』。存在は知っているが、遠い存在に感じている人が多いのではないだろうか。実は円安のいま、日本から北米のユーザーに向けてアイテムを出品し、eBayを「越境EC」のプラットフォームとして活用するセラー(販売者)が増えているようだ。特に高額商品を出品し、為替の差益分も得ながら賢く稼いでいるセラーが多く、副業で始めた後に法人化する人もいるほどだ。

 今回は、リアルサウンド テックの読者に馴染みの深い「ゲーム」「楽器」「カメラ」のカテゴリーに焦点を当て、円安においてのeBayの動向をeBayの日本法人であるイーベイ・ジャパンにインタビューするとともに、どのようなアイテムが高値で取り引きされているのかを深掘りした。

デジタルカメラの好調は円安が後押し 中でも富士フイルム製品の人気が顕著

 eBayは取引高が10兆円を超える世界最大規模のオンラインマーケットプレイスだ。バイヤー(購入者)は米国を中心に、北米に多い。そんなeBayでは、現在コロナ禍に続いた日本のインバウンド規制に円安の影響が加わり、日本から出品されるアイテムに注目が集まる傾向が続いている。

「2022年第3四半期の越境 EC トレンド」より

 日本法人であるイーベイ・ジャパンは、日本のセラーから出品されたアイテムの販売動向を取りまとめた「2022年第3四半期の越境 EC トレンド」を11月に発表した。これによると今回焦点をあてたカメラカテゴリーでも円安の影響がみられた。

 取引額ランキングにて4位にレンズ・フィルター、5位にフィルムカメラ、12位にデジタルカメラとカメラに関連する製品が立て続けにランクイン。特に12位のデジタルカメラは前年同期比のプラス76.9%と、大きく伸長した。

 このデジタルカメラの傾向についてeBayのカテゴリーマネージャー・古谷まゆみ氏は「昨今は円安の影響で高額商品を販売していたセラーの平均販売単価が顕著に伸び、3000ドル以上の商品がよく売れるようになっている。また、比較的低単価な商材に関しても販売数量の増加につながった」と見解を示した。

『ライカQ2 “007 Edition”』

 ランキング上位のレンズやフィルムカメラに関しては、「デジタルカメラに比べて、レンズとフィルムカメラは高頻度で新モデルが出るわけではないため、価格が安定し、販売しやすいカテゴリー。特に販売が終了しているモデルは付加価値がついて人気が上がる例もある。ライカが映画『007』とコラボした特別限定モデル『ライカQ2 “007 Edition”』は約1万3000ドル(約178万円)で販売された。数量ではキヤノン『AE-1』といった一眼レフが、高度な機能に対しての値頃感で人気だ」と分析する。

 全体的な傾向としてライカやニコンといったお馴染みのブランドが人気とのこと。また、越境ECのeBayならではの人気ブランドには富士フイルムを挙げた。富士フイルムは米国の相場が日本国内よりも高く設定されているため、日本の定価で出品したとしても北米のユーザーには値頃に感じられるのだ。

 北米の「アナログ回帰」トレンドもフィルムカメラの人気を後押ししており、トレンドを牽引するZ世代の存在も興味深い。「数年前のeBay内での調査では、カメラ部門のバイヤーは50代、60代の男性がメインだったが、直近では若い世代が増えている。取引時のメッセージで若い世代のバイヤーと仲良くなるセラーもいる」とeBayでは調査されており、日本でもあえてフィルムカメラで撮って現像した写真をInstagramに投稿するZ世代が見られるが、世界共通の流行のようだ。

『ニンテンドーDS』の値段が日本と2桁違う コロナ禍、円安の影響で伸び続けるゲームカテゴリー

 コロナ禍のステイホーム期間にゲーム市場全体の売り上げが伸びたが、eBay内も例外ではない。第3四半期の発表では、特にゲーム機本体の販売数と平均単価が伸び、カテゴリー全体の取引額がプラス11%となった。

 北米では自宅隔離が不要になったことでゲーム市場全体のニーズは落ち着いたが、円安の影響でeBayでのニーズは引き続き高まっている。eBay内での調査によると、コロナ前の2019年の第3四半期と比べ、ゲームカテゴリーは取引額、出品点数のどちらも右肩上がりで伸長しているとのこと。

eBayで取引された『ネオジオ』のゲーム機
eBayで取引された『ネオジオ』のソフト『ラストリゾート』

 eBayではどのようなゲームが人気なのだろうか。カテゴリーマネージャー・市田良介氏によると「日本では容易に入手できる中古の『ニンテンドー3DS』や『ゲームボーイ』などのゲーム機本体が海外では人気が高い」とのこと。(販売済みの多くは中古で構成されている)中でも高額で取引されたアイテムとして『ネオジオ』を挙げた。『ネオジオ』は1990年代から2000年代初頭にかけてSNK社が展開した家庭用ゲームだ。日本国内のマーケットプレイスでは5万円台で取引されているソフトが、eBayでは708ドル(約10万円)で取引されている。

 ほかにもレトロゲームや廃盤商材などの入手しづらい商材や日本限定商材は特に人気が高く 、ピカチュウ仕様の『ゲームボーイライト』、『セガサターン』本体と言った懐かしいゲーム機が高額で取引されている。

 この話を聞いて、筆者は数ヶ月前に『ニンテンドーDS』のゲーム機とソフト5枚をセットにし、国内のマーケットプレイスに出品したことを思い出した。なかなか売れないため値下げを続け、最終的には数百円で手放したのだ。eBayでの同様のセット商品の取引額を調べたところ、桁が2つ違うことが判明した。もっと早く知っていればと後悔の念に駆られたのは言うまでもない。挙動するゲーム機が自宅にある方は、一度取引されている金額だけでも確かめてみてはいかがだろうか。

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