連載:エンタメトップランナーの楽屋(第四回)

『水曜日のダウンタウン』から考える、個性的な番組づくりの方法論 FIREBUG佐藤詳悟×藤井健太郎対談

「つまらないものはやりたくない」という思いが根底にある

ーー自分の理想を100%だとしたときに、今って何%くらい思い通りになっていますか?

藤井:予算やコンプラの問題などもあるけど、基本はやりたいようにやっているし、だいたい7〜8割くらいは自分のやりたい表現ができているかなと。

 最近では、テレビ以外の仕事も少しやらせてもらっているんですが、クライアントありきの仕事をやると、「こっちばっかりだとちょっとキツいかな」とは感じる場面もありますね。でも、お題がある仕事もそれはそれの楽しさがあるので、バランスだとは思いますが。

佐藤:昨今のコンプラについてはどう思っています?

藤井:本当にダメなものがダメなのは当然として、「苦情がきそうだから」って理由で、面白さと逆行する変更を加えるのは嫌ですね。それって本質ではないじゃないですか。苦情がくること自体が問題な訳じゃないので。

佐藤:テレビしかりYouTubeしかりですが、世の中全体でコンプラに敏感になっていますよね。

 少し話がそれますが、海外では新しい法律を施行する際に、およそ6〜7割の状態で一旦出してしまうそうなんです。そこからフィードバックをもらいつつ、法律を整備していく一方で、日本はネガティブな意見や業界団体などのことを綿密に考えて100点を取ろうとしていて、新しい法律を施行するのに何年もかかる。でもやっと法律が成立したころには、時代的に手遅れになっていることが多い。なので、クリエイティブなものが生まれづらくなっていると感じています。

ーー番組の企画出しで心がけていることはありますか?

藤井:当然、自分ひとりで全ての企画を考えているわけではないですが、「一度やったことはやりたくない」という気持ちや、「つまらないものはやりたくない」って気持ちは、人よりちょっと多めに持っている気がしますかね。

佐藤:企画のネタを選んでいく審美眼というか基準はすごいなと。これが面白いと思える感性があるからこそ、『水曜日のダウンタウン』は人気になっているわけですもんね。会議は毎週やるんでしたっけ?

藤井:『水曜日のダウンタウン』ではメインの会議は週2回やっていて、ひとつは0→1のネタ出し、もうひとつはそこで精査した企画の中からさらにディティールを詰めていく会議って感じですね。

 上がってきた企画がそのままオンエアになるパターンよりも、「これに〇〇を足せばいけるんじゃない?」とか、会議で話しながら固まっていくことの方が多い気がしますね。そのままでは成立していない感じの企画でも、面白ポイントが眠ってることはよくあるので。

佐藤:まさに自分のブランドを守っている感じを受けました。つまらない企画が上がってきたら、「藤井さんはやりたくないんだろうな」と思わせるというか。今後、番組をどうしていきたいとか何か考えています?

藤井:具体的な目標があるわけじゃないけど、基本は、より多くの人により楽しんでもらいたいってだけですよね。そういう意味では、テレビを視聴する人が減ったとは言われてるけど、まだまだマスメディアとしての影響力は大きいはずなので、テレビの中で頑張った方がよさそうだなとは思ってますよ。

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