1年で株価が7割下落、メタバース事業も低迷……Meta社の失敗と課題を考える

 2021年、Facebook社が社名を「Meta」に変更したことは記憶に新しい。改名当時、同社CEOのマーク・ザッカーバーグは会社の名称が自社サービスを包括的に示しておらず、ソーシャルサービスのみを掲示していることの不自然さとメタバース領域の可能性に触れながら、社名変更の理由を解説した。メタバース領域に注力していくことを強調しつつも、「メタバースの本格的な普及は約10年後になるだろう、メタバース領域における増収は直ちには起こらない」とも語ったのだ。

 2022年10月26日にMetaは7月〜9月期(第3四半期)決算を発表。利益・売上高は2四半期連続の減収となり、10月〜12月(第4四半期)の売上高見通しにおいても同様の見立てとなっている。これを受けた結果、株価は2割下落。2021年9月から数えれば、当時1兆ドルを超えていた株価は7割程度下落したことになる。

 本稿では巨大企業であるMetaの現状と、その凋落の理由について解説する。一言で言えば、「なぜこんなことになってしまったのか?」という疑問に答えようとする記事だ。

 Metaは日本では通称「GAFA(いまは"GAMA"となるのだろうか)」の一つにも数えられる巨大企業であり、テック業界における巨人だ。現在多岐に展開されているソーシャルネットワークサービスのなかでも、2004年からサービスを行う『Facebook』のユーザ規模は圧倒的で、世界中で29億人が利用している。これらのユーザ情報をアナライズし、有効なターゲティング広告を展開することが同社のこれまでの基幹ビジネスだった。

 しかし2010年代には過剰なターゲティング広告が「ユーザを監視し、切り売りしている」と問題視され始め、2016年の米大統領戦における個人情報不正利用スキャンダルを契機として批判が噴出(このあたりの事情はNetflixのドキュメンタリー『グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル』に詳しい)。世界的にユーザ数が伸び悩んだのに加え、2021年にAppleが提供した「iOS 14.5」のアップデートがユーザ行動の追跡遮断を盛り込んだ結果、同社の収入の9割を占める広告ビジネスは大打撃を受けた。

『グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル』予告編 - Netflix

 こうした状況を経て、かつてユーザと親和性の高い広告を掲示する最適な方法だともてはやされたターゲティング広告が、いまやユーザにもプラットフォーマーにも急速に嫌われはじめている。Googleは昨年、自社のブログで「サードパーティCookieのサポートを段階的に終了し、これに代わるような横断的に個人を追跡する識別子の構築をしないこと」「広告製品でこれらを使用しないこと」をポリシーとして発表した。Metaのスキャンダルを発端として、業界全体が新しいポリシーに則った広告運用を表明し始めているということだ。Metaの社名変更には、こうした状況で低下したブランドイメージを刷新する意図もあるだろう。

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