Adobe『Photoshop』・『Illustrator』が共同編集機能に対応 チームでのクリエイティブ制作がより簡単に

『共同編集』がチーム制作をよりシンプルに

 「お店のチラシを作りたい」「宣伝用の動画を作りたい」など、クリエイティブにまつわる仕事はさまざま。こうしたクリエイティブの現場においてはフォトグラファーやイラストレーターなどのクリエイターはもちろん、そうした人々に仕事を発注するクライアントも一眼となって、一つの制作物を完成させる。

 悲しいかな、こうした制作にはトラブルがつきもの。たとえば「クライアントからクリエイターに、制作物の正しいイメージが伝わっていなかった」「メールで送付したファイルがうまく受け渡しできていなかった」など。丁寧なコミュニケーションによって防げることもあるだろうが、制作現場というのは往々にして時間に追われているものだ。他にも、関わる人々によってコミュニケーションツールが違うこともあるだろう。Chatworksで受け取ったファイルを関連企業のSlackチャットに送付、フィードバックをクリエイターのDiscordに返して……など、クリエイティブの外側に発生する煩雑な業務は多々ある。

 また、ファイルを受け渡して制作を進める場合、バージョン管理には特に慎重にならなければいけない。修正指示を出したファイルが古いバージョンだったり、何度も修正した結果、どのファイルが最新かわからなくなったり。こうしたトラブルは制作の現場において「先祖返り」と呼ばれて恐れられている。ファイル名を適当につけて別名で保存していたら、気づけば「1028最終稿b_確認済_Fix_追加修正02」のような、気が滅入るような名前ファイルを編集していたり……。身に覚えのあるクリエイターもいるのではないだろうか。

 こうした状況を一手に解決するのが、最新のアップデートでPhotoshopとIllustratorに追加されたAdobeのクラウド編集機能だ。ファイルをクラウドドキュメントとして保存したら、そのファイルの編集に他のメンバーを招待できるという機能であり、Creative Cloudユーザ同士で一つのファイルを編集できる。招待もかんたんで、「共有アイコン」を押して「ドキュメントを共有」ダイアログボックスでメールアドレスを指定するだけだ。インターフェースも非常に洗練されており、迷うことはないだろう。

 この機能の革新的な部分は「クラウド上で一つのファイルを編集できる」というところにある。ファイルが複数にならないため、先に挙げた「先祖返り」を未然に防ぐことができる。さらにこうした編集内容はクラウド上に保存されるため、消失の危険もない。

編集されたファイルには差分として「バージョン履歴」が記録される。

 こうした機能はAdobeの動画編集ソフト「Premiere Pro」に先立って実装されたものだ。Adobeは動画の共同編集サービス「Flame.io」を2021年に買収し、Premiereにその機能を統合・内包した。これにより複数人での動画編集ワークフローがアプリ内で整備され、多くのクリエイターに快適な動画編集をもたらした。今回のPhotoshop・Illustoratorのアップデートはこのあとに続く形で実装されている。

 Photoshop・Illustratorの話に戻ると、共同編集人数は最大100人となっているため、大人数での製作時にも安心だ。構想の段階からラフスケッチの共有、具体的な制作から最終確認まで、多くの人々が関わることが想定される制作でも、ワークフローのすべての場面で一貫してこの恩恵を享受できるだろう。

 コロナ化の影響もあり、オンラインでのコミュニケーションを取りながら制作を行う事例は増え続けており、これからもこうした制作スタイルが完全になくなることはないだろう。2022年現在でも、クリエイター同士が直接コミュニケーションを取ることが叶わないシチュエーションは多い。とはいえ、世相を奇貨としたアップデートが全く新しいワークフローを生み出す状況自体は面白いものだし、こうした共同編集機能もポジティブに活用したいものだ。

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