朝倉未来VSメイウェザー戦の感想動画、なぜ「YouTube急上昇」をジャック? スポーツ語り動画の誕生を紐解いてみた

 9月25日の「超RIZIN /RIZIN.38」で行われた、“路上の伝説”朝倉未来と“生きる伝説”フロイト・メイウェザーの一戦。今年6月にRIZINが対戦を発表した際にも大きなニュースとなったが、YouTubeではこの世紀の一戦のあと、試合の感想を語った動画が複数急上昇入りした。今回は、なぜYouTube上でスポーツの感想動画が生まれたのか、その理由を分析してみたい。

 今回のRIZINでは、日本で絶大な実績と知名度を誇る総合格闘家・朝倉未来と、50戦50勝&五階級制覇のメイウェザーが対戦。朝倉が総合格闘家ながらボクシングに初めて挑戦したことでさらに注目を集めていた。

 残念ながら朝倉は人生初のKO負けを喫したが、それでもメイウェザーを本気にさせたとして、 当日に現地で解説を担当していた内山高志をはじめ、朝倉の実弟・海、日本人初のK-1 WORLD MAX世界王者の魔裟斗、元WBA世界ライトフライ級王者の具志堅用高、ボクシング世界三階級制覇王者の長谷川穂積などが感想動画を投稿し、急上昇の上位を独占した。

メイウェザー戦についての感想

 実は今年6月に行われた那須川天心VS武尊の試合後にも、格闘家YouTuberたちがこぞって試合の感想を語った動画を投稿。それらが急上昇に複数ランクインするという事態が起こっていた。

 YouTubeでスポーツ動画が人気であることは、よく知られている事実だが、この“スポーツ語り”動画の誕生には、スポーツ動画人気と「リアルな情報がほしい」というユーザーの要望が関わっていると考えられる。その根拠となるのが、Googleが2019年11月にマーケターの祭典「Brandcast」で公表した、YouTubeユーザーの利用実態や、企業やアーティスト、タレントによる活用事例だ。

 その中では、人々がYouTubeを視聴する動機のひとつに、「真実の追求」があることが明かされている。この真実の追求は、視聴者の「さまざまな視点で捉えられた情報から物事の本質(リアル)を知りたい」という欲求を意味するのだが、視聴者が求めるリアルな情報がスポーツ語り動画にはあると感じられる。

 YouTubeでは近頃、格闘技のみならず野球やサッカーなどの現役選手や引退した選手たちが、自身について発信するツールとしてYouTubeチャンネルを開設することが増えてきた。特に引退したアスリートたちにとっては、YouTubeがセカンドキャリアの場にもなりつつあり、最近でもプロに転向したフィギュアスケーターの羽生結弦がチャンネルを開設したことが話題になったばかりだ。

 競技の第一線で活躍する、もしくは活躍してきたアスリートたちは、言うまでもなく専門知識が豊富。培ってきた知識と経験をもとに試合を分析し、感想を語れる彼らは、視聴者が知りたいリアルな情報を伝えられるという絶対的な強みがある。彼らのような発信者が、今回のような朝倉対メイウェザー戦のような話題になっているテーマを取り上げた動画を投稿すれば、注目されやすくなり、動画の再生数が伸びる。すると急上昇に動画が掲載され、さらに動画が再生されやすくなるうえ、チャンネル登録者が増える可能性もある。

 一方の視聴者は、YouTubeでさまざまな人物の解説や感想・意見を聞くことで求めていたリアルな情報を得られるだけでなく、観戦体験をより豊かなものにできる。こういった双方の求めるものが一致したことが、スポーツの感想動画の誕生のきっかけになったのではないだろうか。

 今では急上昇ランキングを独占する勢いを持つスポーツの感想動画だが、もともとはYouTubeで活躍の場を模索する各競技に縁のある発信者と、さまざまな意見に触れ、リアルな情報を得たいという視聴者のニーズに応えるものとして誕生したものと筆者は考えている。今後はどのような競技に精通する発信者が登場し、このコンテンツを盛り上げてくれるのか。スポーツ語り動画の行き先に注目していきたい。

参考:
https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/video/youtube-userdata2019/

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