おおしましゅん×Chinozoが語り合う“TikTokとボカロ”が生んだ課題と可能性 「本家もちゃんと再生して、愛して」

「TikTokとボカロ」の現在

 ボーカロイド文化の祭典『The VOCALOID Collection ~2022 Autumn~』(通称:ボカコレ2022秋)が、2022年10月8日~10日に開催される。

 5回目を迎えて大きな盛り上がりを見せる『ボカコレ』と共に、ここ最近、ボーカロイドカルチャーの広がりに大きく寄与しているのがTikTokだ。近年ではTikTokでのバズをきっかけにリスナーを獲得するボカロ曲も少なくない。こうした状況はどのようにして生まれてきたのか? そして現状にはどんな課題や可能性があるのか? 「グッバイ宣言」がボカロ曲として初のYouTubeでの1億回再生を突破したボカロP・Chinozoと、その「グッバイ宣言」のダンス動画を投稿してバズに寄与し、熱心なボカロリスナーとしても知られるフォロワー数800万人超えのTikTokクリエイター・おおしましゅんの二人に、たっぷりと語り合ってもらった。(柴 那典)

「グッバイ宣言」のヒットは“ニコニコ→YouTube→TikTok”と三段階あった

ーーまずは、しゅんさんがボカロを好きになった時期やきっかけは?

おおしましゅん(以下、しゅん):中学校1年生の時に雪那さんの「絵本『人柱アリス』」という曲を聴いたのがきっかけです。そこでボーカロイドという存在を知って、そこからsupercellさんの「メルト」とか「ワールドイズマイン」を聴いて「やべえ!」と思って感銘を受けました。そこからDECO*27さんに超ハマりまして。「モザイクロール」が投稿されたときも待機して聴いたりしてましたし、中学校の時にファンレターを送ったこともあるくらい大好きです。そこからはボーカロイド一筋で今まで生きてきました。

【オリジナル曲】絵本『人柱アリス』【歪童話】

ーー初期からずっと聴いてらっしゃるんですね。

しゅん:そうですね。ボーカロイドは本当に大好きなんです。

――Chinozoさんがボカロを知ったのはいつごろのことでした?

Chinozo:僕は「みっくみくにしてあげる」が盛り上がってた頃にボカロを知ったんですけど、リスナーとして最初に好きになったのは「炉心融解」からですね。曲の雰囲気が独特だったんで、それにめちゃくちゃハマってずっと聴いてました。正直まだその頃はボカロに慣れてなかったんですけど、鏡音リンの声に楽曲の雰囲気が合ってて、人間の歌では感じられない楽しさとか音楽の良さみたいなものを初めて体感して。「なんかいいな」って思ったのが最初ですね。

【鏡音リン】炉心融解【オリジナル】

ーーChinozoさんのボカロPデビューは2018年ですが、活動を始めたきっかけは?

Chinozo:「炉心融解」を好きになってからしばらくして、一時期ボカロから離れてたんです。途中からL'Arc~en~Cielにハマっていた時期があったので。そこからギターを始めて、いろいろやっていくうちに、みきとPさんの『僕は初音ミクとキスをした』というアルバムを聴いて。それを聴いているうちに「ボカロめっちゃいいな」って思ったんです。あとははるまきごはんさんのアルバムを聴いて。ボカロでもこんなにめちゃくちゃエモい曲作れるんだって、改めて思ったんですよね。そうやってボカロにもう一度出会って「よし、作ろう」と思ったのがボカロPになるきっかけです。

ーーしゅんさんはYouTubeにボカロ曲の「歌ってみた」を投稿していますが、リスナーとしてだけでなくボカロカルチャーに主体的に関わっていこうと思ったきっかけは?

しゅん:僕、歌い手さんって、キラキラして、めっちゃ憧れてたんですよ。自分で歌声を載せて、なんかインターネットにアップロードするっていう文化に興味があって。特にまふまふさんにすごく憧れてまして。他にも、ぐるたみんさんとか、今は活動を止められてしまったんですけれど、vip店長さんとかもめっちゃ好きでCDも集めてましたし。でも、「歌ってみた」って、技術を伴うものじゃないですか。全然わからなくて、なかなか出来なかったんですけれど、4年くらい前に初めて「歌ってみた」を投稿しました。ボーカロイドの楽曲を自分なりに咀嚼して自分の歌い方で歌うっていうのがすごく楽しくて。ボーカロイドの楽曲がほんとに大好きで毎日聴いているので、「歌ってみた」をやれるのも幸せですね。

ーー今回は「ボカロとTikTok」というテーマでお二人にお話をお伺いしようと思います。いまはTikTok経由でボカロ曲がバズることは当たり前になりましたが、しゅんさんがTikTokを始めたころはいまと違いましたか?

しゅん:僕がTikTokを始めた2018年はあまりボーカロイドの楽曲が流行っているイメージはなかったですね。でも、最近は変わってきたと思います。ボーカロイドの声って、人によっては馴染めないという人もいると思いますが、最近はみんな機械の声がどうこうと言わなくなってきた感じがしていて。ボーカロイドの楽曲が原曲のままにバズっていたりするので、普及している感覚があります。僕が中学生のころは周りにあまり聴いてくれる人がいなくて、シェアしてもあまり理解してもらえなかったりしたんですけど、いまはTikTokでボーカロイドの本家の楽曲が流行っているので、やっぱりちょっと変わってきたなって思いますね。

ーーChinozoさんは「グッバイ宣言」以前からTikTokを見ていたのでしょうか?

Chinozo:まったく見てなかったです。意識もしてなかったですね。「グッバイ宣言」が人気になってきたことで、TikTokという存在に注目し始めたので。アプリをインストールしたのもそこからでした。そこからしゅんさんの存在を知るようになって。それこそ本家の楽曲を使っていただいていたので、そこから曲を聴いてくださる人も増えたと思います。嬉しいですね。

ーーそもそも「グッバイ宣言」はどういうタイミングで作った曲だったんでしょうか?

Chinozo:当時はコロナが流行り始めたころで、結構雰囲気が辛くて、しんどかったんですよ。「マスクを着けろ」「フェイスガードを着けろ」ということからトラブルが生まれていて、世紀末感があり「このまま終わっていくのかな」とか考えちゃって。あの時は引きこもりについてもすごく考えていて、しんどかったので、どうせなら歌にして楽しくしちゃえ、という気持ちでした。MVのイラストはいまも一緒にやっているアルセチカさんが最初にフリーで投稿されていたものだったんです。ボカロ曲に使っていいですよと投稿していたうちのひとつで、そのイラストから着想して作った“ただただ楽しく”という感じの曲でした。

Chinozo 「グッバイ宣言」 feat.FloweR

ーーこの曲が伸びているという感触を得たのはいつごろでしたか?

Chinozo:最初からですね。投稿した後にニコニコ動画さんのピックアップという枠に載せていただいたんですよ。それまでは全然知名度もなかったんで「載った!」と思って。その時に初めて数字が結構伸びて。そこからYouTubeでもオススメに乗るようになって。その時点で500万再生くらい行ってたんです。で、TikTokで1年後に盛り上がってからは1ヶ月で1000万回再生とかとんでもないことになって。そこからは正直、自分の範疇を超えてました。

ーーニコニコ動画で伸びたタイミングとTikTokで伸びたタイミングにはタイムラグがあったんですね。

Chinozo:全然ありますね。というか、3期あって。伸びたって感覚は結構最初からあったんですけれど、1期がニコニコ動画で、2期がYouTubeのおすすめ、3期がTikTokっていう風に、期間的にはわりとバラバラでした。

ーーしゅんさんが「グッバイ宣言」を知ったきっかけは?

しゅん:そもそも僕はChinozoさんを「レナ」という楽曲で存じ上げていたんですけれど。

Chinozo:ええ、そうなんですか!? 超嬉しいです。

Chinozo 「レナ」 feat.MikU

しゅん:Chinozoさんのことも「グッバイ宣言」より前に存じ上げていたんですけれど。「グッバイ宣言」は、もともと振り付けられてた動画がTikTokのおすすめに出てきたんですよ。で、「引き籠り 絶対 ジャスティス」という語呂の良さと、爽快なメロディーが、一回聴いた時にすごく耳に残って。サビが始まる前の「正論も常識も意味を持たない都会にサヨウナラ!」という、ちょっと上から目線で都会にバイバイするみたいな価値観とマッチして。ダンスも1回見ただけで覚えられるくらいクオリティーの高いもので。聴いた時にビビッときましたね。本家のFloweRちゃんの声がめっちゃ聴きやすくて。これは流行るなと思いました。

Chinozo:嬉しい。

しゅん:で、そこで「グッバイ宣言」をフルで聴いてみたら「あ、これ『レナ』を作った方だ」って思って。踊る時も、とにかく歌詞とメロディーがすごく良くて、リズムも楽しかったので、妹とめちゃめちゃノリノリで踊らせてもらいました。

ーーしゅんさんが「踊ってみた」動画を投稿しての反響や反応って、どんな感じでしたか?

しゅん:テレビで取り上げていただいたり、僕らの振り付けだと思われる方もいらっしゃるぐらい沢山の人に見てもらえました。そもそも、あのポーズって、いままで無かったのに、かっこよく、可愛く映るんですよね。それがTikTokの人たちにとっても楽しかったんだと思います。

@oshima_ 俺の私だけの❗️ @sakurao1 | #グッバイ宣言 #fyp ♬ グッバイ宣言 - Chinozo

ーー先ほどChinozoさんがおっしゃってましたけど、そもそもアルセチカさんにこのポーズを発注したわけではなかったわけで、偶然なんですね。

Chinozo:全部偶然ですね。踊りの最初の振り付けも、有志の方がやっていて。僕もそれを見て初めてその方を知った感じだったんで。いろんな偶然が重なった結果ですね。

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