にじさんじに「演技・声劇」を広めた“センスの塊” 成瀬鳴のさらなるブレイクに寄せる期待
現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。
メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ1年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加している。
デビューから順を追うように紹介してきた本連載。元1期生、元2期生、元ゲーマーズ組の次は2期にわたる元SEEDs組。今回は元SEEDs組でも2期生組のなかから、成瀬鳴について記していこう。
2018年6月8日に春崎エアルらと4人グループ「にじさんじVOIZ」としてデビューした成瀬鳴。
青い瞳、金髪、襟足は濃い目のピンクに染められ、まさに「好青年」を絵に描いたようなルックスで、現在では多くの女性ファンからの支持を得ている男性タレントだ。
YouTubeの視聴者男女比が遂に女性8割になっててすごい(語彙力)。
— 成瀬 鳴 (@narusenaru_2434) August 6, 2021
女性割合が増えること自体別にだから何だって話なんだけど、3年前のVTuber見てる人ほぼ男状態からよくここまで新しい層に見てもらえるようになったなっていうことなのです。
男も変わらず全員愛してる。— 成瀬 鳴 (@narusenaru_2434) August 6, 2021
「にじさんじVOIZ」は「歌や演技をメインにした」男性ライバーのグループとしてスタートした。
2020年以降、バーチャルタレント界隈で女性リスナーが増えていきし、アイドル路線・PR露出をする男性ライバーについても増加の一途を辿っているが、2018年当時としてはかなり異例の試みだった。
だが、前例のない試みということもあってか、デビューからひと月にも満たない6月の終わり頃に、成瀬鳴と春崎エアル以外の2名が脱退。開始からわずか二か月後、VOIZとしてのグループ活動が終了した。
2018年8月8日には「言わなきゃいけないことがある」「急やけど!俺さ、ちょっと自分探しの旅してくる!!!!!(・ω<)-☆」とツイート。同期である春崎エアルやファンの心配や慌てるのを横目に、低浮上ぎみになっていく。
「にじさんじMUSHOKU」などと当時の彼は冗談めかしているが、後年彼は「VOIZが解体した時点で、辞めても良いかな? と思っていた」と語っているほど、彼にとっては追い詰められていた状況でもあった。
言わなきゃいけないことがあんねん…
— 成瀬 鳴 (@narusenaru_2434) August 8, 2018
現在どこにも所属してないので、にじさんじMUSHOKUになりました。
頑張って修行してきます🙋♂️
— 成瀬 鳴 (@narusenaru_2434) August 9, 2018
2018年9月25日にSEEDs2期生の第3弾として転籍するという形でリスタートを切ることになるが、彼のYouTubeチャンネルのアーカイブを遡っていただければ分かるように、YouTubeを使った継続的な配信ができるようになったのは2019年3月8日以降のことだ。
それまで成瀬鳴は主にMirrativで活動していたが、徐々ににじさんじ含めたVTuberシーン全体がYouTubeをメインにした配信になっていくにつれ、配信環境を整えるために時間を費やす必要があったからだ。
にじさんじの中でも、グッズなどの収益やクラウドファンディングで活動のために必要な資金を集めて、配信用のパソコンを手に入れようとするタレントもいたほど。2018年から2019年にかけては、まだシーンが黎明期ということもあり、困難な状況が続いていたのが分かる。
SEEDsメンバーとして再稼働するタイミングで自身のルックスと年齢がいちど大幅に変わったが、2020年8月21日よりVOIZ時代のビジュアルにふたたび戻り、現在まで活動を継続している。
さまざまなな苦労やアクシデントがVTuber/バーチャルタレントには降りかかるところだが、「所属先が無くなってしまう」「ビジュアル変更が何度か起きる」「配信環境がままならない」など、配信活動する上での基礎・基盤の部分でここまでトラブル・苦労が重なることも珍しい。
そんな彼が活動を続けたのは、困難な状況でもファンがそこにいてくれたからと常々語っている。
「普通に過ごしていた自分にも、応援してくれる人が出来たということが嬉しかったし、原動力になった。なんやかんやあるけど、視聴者からいらない!と言われたら、すぐにでも辞める覚悟はできている。それくらい身軽に活動しているつもり」
ちなみにこの言葉は、活動開始から1年5か月ほど経過した2019年5月でのこと。「すべてはファンのために」と語るタレントは多いが、彼のなかにある芯の強さが感じられるところだ。