『ワイスピ』登場車種は作品ごとにどう変化? 発売年や馬力などから考察

 次に、作品ごとの登場車種の馬力の変化を見る。比較した結果は下の画像のようになった。

 画像を見てすぐに目につくのが、『ワイスピ M』から次の『ワイルド・スピード MEGA MAX(以下ワイスピ MM)』の上昇幅の大きさである。また『ワイスピ SM』以降、馬力の平均が下降していることも目に付く。今回、馬力はノーマル状態のものを調べたこともあるだろうが、それを踏まえると『ワイスピ MM』には元から馬力がある車が登場していたことになる。思い返してみると、『レクサスLFA』や『35GTR』など元から馬力が高い車が多数登場していた。特に『ケーニグセグ・CCXRエディシィン』は1004馬力(筆者調べ)とまさに化物のような馬力を持っていた。このような「スーパーカー」がシリーズに登場し始めたのが『ワイスピ MM』だということがデータからわかる。

 そして『ワイスピ SM』以降、数値が下がっていることについては、先ほど発売年の比較の際も記述した『ワイスピ SM』が上がり過ぎている、といったことも要因の1つとして挙げられるだろう。特に先述したアブダビのシーンに登場した『ブガッティ・ヴェイロン』は1001馬力(筆者調べ)のモンスターマシンである。もう1つ要因として考えられるのが、『ワイスピ IB』と『ワイルド・スピード ジェットブレイク(以下ワイスピ JB)』には前述したような「スーパーカー」があまり出てきていないことだ。『ワイスピ SM』に登場した「ライカンハイパースポーツ」といった誰が見ても高級かつ速そうな車に比べ、BRZや86といった比較的我々の身近にいるような車が登場していたように感じる。これが『ワイスピ SM』以降の馬力の平均を下げている要因であると考えられる。『ワイルド・スピード』シリーズは回を重ねるごとにスケールが大きくなっている。個人的にはそれでも面白いと感じているのだが、シリーズのプロデューサーは「原点回帰」を望んでいるようだ。そもそもワイルド・スピードの1作目は小規模なレースを描く映画であった。そのため登場する車種も、「シビック」や「シルビア」といった現在は値段が高騰しているが、当時はお手頃に購入できた車が多く登場していた。そういった車は元々の馬力はそこまで高くない。『ワイスピ IB』や『ワイスピ JB』でストーリーのスケールは大きくなったが、BRZや86といった比較的手の届きやすいスポーツカーが作品に多く登場したということは、まさに1つの「原点回帰」ではないだろうか。

 最後に登場車種の価格の平均について見てみる。価格は現在の中古車価格を参考にした。そのため映画公開時とズレがあることは理解していただきたい。

 画像を見ると、明らかに『ワイスピ MM』と『ワイスピ SM』のみ平均値が高くなっていることがわかる。その理由はここまで記事を読んできたみなさんであればもうお分かりだろう。『ワイスピ MM』には『ケーニグセグ・CCXRエディシィン』といったスーパーカーが、『ワイスピ SM』には『ライカンハイパースポーツ』といったスーパーカーが複数台ずつ登場しているためであると考えられる。

 また中央値に着目すると、最小は『ワイスピ X3』の289.9万円、最大は『ワイスピ MM』の980万円と700万円弱の差がある。『ワイルド・スピード(以下ワイスピ)』から『ワイスピ X3』に比べ、『ワイスピ MM』より先の作品は価格の中央値も上がっていることがわかる。また『ワイスピ』から『ワイスピ X3』は、日本車が多く登場する。今回参考にした価格が日本での中古車価格であったため、この結果は納得できる。また詳しくは後述するが、『ワイスピ X3』から『ワイスピ MM』まで中央値は上昇しているが、それ以降はある程度横ばいになっている。このことから映画に登場する車種にある程度パターンができたのも、『ワイスピ MM』以降であると考えられる。

 今回は作品ごとの登場車種の販売された年や馬力、価格について特徴をまとめてみたが、その結果、『ワイスピ SM』のアブダビのシーンはシリーズの中でも異質であったと考えることができた。アブダビに向かう途中のシーンで、スーパーカーが列をなして向かう様が見られるのは、長く続いてきたシリーズの中でもここだけだろう。

 そして『ワイスピ MM』はシリーズの中でも大きな転換点となっていることも見てとれる。それまでの作品に比べ、登場車種の馬力も価格も跳ね上がっていることから、シリーズにスーパーカーが多く登場するようになったこともそうだが、「ファミリー」と呼ばれているお馴染みのメンバーが初めて集結したのもこの作品だ。

 今回は登場車種の年代・馬力・価格についてそれぞれ平均値や中央値を見てみたが、いくつか面白い事実があることがわかった。この事実を「面白い」と解釈するかどうかは人によると思うが、モノをベースにドラマや映画を見てみるのも悪くないと感じてもらえたら幸甚だ。

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