ハマ・オカモト × ゲーム実況者・shu3対談 「好きなだけ」が武器になる2人の活動論

活動の転換期に制作した「超やりこみBotW」

ハマ:ゼルダといえば、shu3が「すべてを越えた超やりこみBotW」の第一回を公開されたのが、2020年の3月ですよね。

shu3:そうですね。

ハマ:僕、ちょうどそのころに体調を崩して、全然仕事に復帰できなかったんです。本を読んだりとかもしたいんですけど、集中力が続かなくて、楽器を弾く気にもならない。そんな時にたまたま僕のYouTubeのトップに出たのが「やりこみ」だったんです。

shu3:はぁー! YouTubeのサジェストに感謝ですね。

ハマ:僕が初めて観たときにはすでに#3~#4あたりだったんですが、そもそもブレワイの発売は2017年で、もちろん僕も発売したときにプレイしていたので、「今、このタイミングでブレワイなんだ!」と思ったし、それが面白すぎちゃって。すぐに見始めたんです。そこからもう、毎週の楽しみになっていたので、ほんとにタイミングでしたね、あれは。そこからいろんな自分の周りの友人にもshu3の動画を薦めてました。

shu3:ありがとうございます!

ハマ:この体験をきっかけに、いまに至るまでいろんなゲーム実況動画を見てきたんですが、shu3の動画は「ゲーム実況」っていうカテゴリの中でも圧倒的に違う。shu3の作り込みというか、クオリティはもちろんだし、あと観る側のことをとても考えているのもすごいなって。題材になっているゲームをプレイしたことがある人が観て面白いと感じるのは第一段階だと思うんですけど、それをプレイヤーじゃない人が観ても面白い、初見の人にも薦められるクオリティだから、僕も色んな人に観てほしいし、話せる。それは痛感しています。ご自身のことなので、リアクションしづらいかもしれないですが。

 僕は雑誌『GINZA』でエッセイの連載をしているんですが、「クリエイター」の特集があって。「気になるクリエイターとかっていらっしゃいますか?」って聞かれて、shu3はクリエイターとは名乗っていないでしょうけど、「もはやこういうのはクリエイターの仕事だ!」と思って、そういう切り口で紹介させてもらったんです。

 療養中にあんなに楽しい動画と出会えたことにも感謝していますし、いまでも「お金払って観るものでしょ」みたいな気持ちです。今回もお会いできることになって改めて見直したんですけど、ホントにすごいですね。

shu3:ありがとうございます。「超やりこみBotW」を作る時は、自分の活動の転換期でもあったんです。「ニコニコ動画からYouTubeに行くぞ!」っていう時で、気合を入れて。いままでに無いような動画を作ろうと思って頑張ったので、それが届いてすごく嬉しいです。

ハマ:あと「過去作を全作プレイした上で……」っていう前提があるのに、そのプレイは全部飛ばして見せるのも驚きですよね。例えば映画の『スパイダーマン』が「ピーター・パーカーが蜘蛛に噛まれるっていう大事なくだり」を省略してしまうようなもので。「もうみんな知っているだろうから、オリジンは端折ってしまおう」っていう。でも補足のパートとか、解説のときには過去作にも言及して、そこで映像を使っていたりして、説得力があるし、端折る理由がある。

まずゼルダ全作品クリアしました(100日経過)|すべてを越えた超やりこみBotW #1

shu3: 過去全作プレイという何百時間のものを一気に飛ばして見せることでインパクトもあるし、解説でも実際に撮った映像が使えて説得力がでるだろうな、というのをまず考えまして、そこから作り始めました。

ハマ:だって、構想含めたら相当な時間がかかってますよね。構想からプレイして、収録してから編集もあって。

shu3:そうですね。始めたのは2020年の3月でしたが、前の年の5月ぐらいからずっと考えて、アニメーターの福地明乃さんと打ち合わせもして。

ハマ:オープニングの絵の話とかも、自分のラジオですこし言及したりしましたが、ホントに素晴らしい組み合わせっていうか。

shu3:ほんとに私だけの力ではなく、二人で作った合作の動画シリーズになりました。

ハマ:そうですよね。あれもさっき僕が言わせてもらった「初見の人を置いていかない要素」というか、そもそもゼルダシリーズの複雑さ以前に「ゲーム実況」のとっつきにくさがあるわけで、そういうコンテンツの導入として一番素晴らしい。視聴者を置いていかないんですよね。

shu3:とても長いシリーズになることは、始める前から覚悟していまして。『ブレワイ』をやりつくすとなると動画もパートも60ぐらいまで行くだろうと思っていたんです。でも自分の作風的に週に1本公開するのが限界なので、1年以上は続く長いシリーズになることがわかりまして。そこで、「毎週継続して見てもらうためになにかできないか」っていうのはずっと考えていて。アニメでのあらすじやカットを入れてとにかくわかりやすくすることで更新期間が空いてもすんなり理解できるし、毎回変化がでて次も見ようという気になってくれるかなと思ったんですよね。

超やりこみBotWアニメーションまとめ(#1~#20)|Fan animation of Zelda

ハマ:絵もかわいくて、本当に全部の相乗効果が素晴らしいです。シリーズの山場の話ですが、「風のカースガノン」を倒すのに11時間かかってるじゃないですか。で、動画の冒頭でおっしゃる「弓使ったら簡単なんですけど」っていうのをプレイヤーとしては当たり前に経験しちゃってるというか、途中で気付く。それをちゃんと説明しつつあんなに時間をかけて「3日目でクリアしました」って、その一連の流れも「最高!」って感じなんですけど、そこじゃなくて、一番驚いたのが、視聴者にあのゲームを「もう一回やろう」とか、あるいは持っていなかった人間に「やってみよう!」と思わせる力があるんですよね。それは本当にすごいことだよなって思ったんです。

弓禁止!モップを投げろ!風のカースガノン戦|すべてを越えた超やりこみBotW #20

 いまはもう「ゲーム実況」っていうジャンルがとても大きくなっていると思うんですけど、そのかわり見て満足してしまう一面もあると思うんです。ゲームを買わずともプレイした気になれるから。でも、shu3はプレイ中に作品の素晴らしさ、プレイすることの面白さを伝えてくれるじゃないですか。当たり前ですけど、ゲームって実体験しなきゃその真の面白さはわからないわけで、未体験の人間をそこまで持っていく力がある、そこに一番感動して。あの実況を観た人が一人でも『ブレワイ』を買ってプレイしたら、またプレイヤーが増えていくし、それは僕らにとっても嬉しいことだから。

shu3:特に『ブレワイ』は、プレイしたらその人なりの"何か"が起きるので、すごいゲームだと思います。実況をやっていても本当に、考えもしなかった出来事が起きるので毎回新鮮なんですよ。あの時期は毎回ビックリしてました。

ハマ:それを説明しすぎるわけでもなく、でも僕はあれを見て「もう1回やろう!」と思ったし、新しく買ってみようと思った人もたくさんいると思います。そう思わせるものを作るっていうところが、尊敬できる所だなって。僕らも音楽をやっていて、自分たちが作る曲が良いと思われるのはもちろんそうあってほしいんですけど、「OKAMOTO'Sをキッカケに楽器を始めました」とか「紹介してたooのアルバム聴きました!」とかって言ってもらえるのは、僕らの音楽を聞いてもらえることと同じぐらい嬉しい。それとも似ている気がします。僕もソフトのいちプレイヤーだったので、プレイヤーを驚かせるパワー、未プレイの人にゲームをプレイさせるパワーがあるのは本当にすごいなって。「すごい」ばっかり言ってますけど。

shu3:ありがとうございます(笑)。おこがましいことなんですけども、ゲーム実況をしていても「プレイしました」とか「買いました!」って声を聞いたときが一番うれしいです。自分の好きなゲームをちゃんと伝えられたんだなと感じます。特に『ブレワイ』に関してはプレイした瞬間にものすごさを感じたので、これは中途半端な動画は作れないなと思いましたし、自分が最初に感じたすごさを伝えたいという気持ちが大きかったです。

ハマ:色んな所で僕、shu3の話をさせていただきましたけど、今回初めて知る人にもそこはマストで伝えたいところです。編集が凝ってて面白いとか、プレイが上手とか、喋りが面白いとか、全部大事な要素だけど有名実況者の方々にはそれを満たしている人は沢山いると思うんですよ。でも、shu3みたいな人はほかにいないなと思います。

shu3:最初にハマさんが「デクの樹で飛び込んだ時に感動があった」って仰ったじゃないですか。色々迷ってできた感動みたいな、そういう部分を伝えることは一番重視しました。ゲームで苦労して達成した時の達成感を共有したら、実のあるものになるのかな、って。「ゲームの原体験」みたいなものを伝えられるのがゲーム実況の面白いところだと思ってます。ゲームには小さな「成功体験」がたくさん詰まっていて、それは現実世界を生きる上でも応用できる大事な体験だと思うんです。

ハマ:一番最初に驚いたのがそこで、いまはYouTubeの動画コンテンツでゲームプレイを追体験できるんだ、っていう感動がありましたね。プレイした人間にしかわからない成功体験とかびっくりがたくさんある。僕、「時のオカリナ」で最初にマスターソードを抜いたとき、「全クリだ!」と思ったんですよ、そこまでめちゃめちゃ苦労したから。石3つ集めて。「もう終わりだろ!」って思ったら、そっからの方が長い。

shu3:そうですよね! なんか怖い夜の街に放り出されますからね。なんだこれ!? みたいな。

ハマ:あの感じとか、プレイしないと伝わらないじゃないですか。でもその感動のシーンを親は待ってくれないんで、電源ごと抜かれるみたいな。shu3の動画はプレイしてわかる素晴らしさと、プレイしていない人にゲームの素晴らしさをどう伝えたらいいんだろうという悩みの中で生まれた、一番至高のもののようなものなのかなと思いました。

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