ハマ・オカモト × ゲーム実況者・shu3対談 「好きなだけ」が武器になる2人の活動論

ハマ・オカモト x shu3対談(前編)

ゼル伝を”死にゲー”化したshu3の「主夫縛り」

ハマ:あと、「主夫縛り」(編注:主夫の英傑縛り。お玉やなべのふたなど「家庭にある道具しか使わない」という一風変わった縛りプレイ)はいつ思いついたんですか?

shu3:構想を練っている時に、『ブレワイ』自体は発売から2年も経ってすでにいろんな方がプレイされていましたし、もっと厳しい縛りもすでにやりつくされていて、自分はゲームがそんなにうまいわけじゃないからどうしようと思ったときに、じゃあ厳しいだけじゃなくて普通の人間がちゃんと努力したら世界は救える、みたいなコンセプトはどうだろうと思ったんです。最初はなべのふたとか葉っぱを使って頑張るリンクの姿が単純に良いなぁ、と思って。そこからコンセプトを組み立てていった感じですね。ただ、主夫縛りって言っても、「これはコンセントです」とか言いながら剣も使ってたりしますが(笑)。

まずゼルダ全作品クリアしました(100日経過)|すべてを越えた超やりこみBotW #1

ハマ:最初の「始まりの台地」ぐらいまでは、僕らでも頑張ったらいけるのかな? と思って見始めたんですけど、アレで全クリをするなんて想定しきれないじゃないですか。

shu3:そうですよね(笑)。

ハマ:それこそカースガノンは、もうあの状況では「倒せないかも」と思いませんでしたか? ある程度いけるだろという想定もあったんですか?

shu3:途中からはまったく想定を立てずにやりました。いつもは事前にある程度のリハーサルをしていたんですけど、だんだん自分の中で新鮮じゃなくなってきたので、『ブレワイ』に関してはぶっつけ本番が多かったです。

ハマ:拝見してると笑っちゃってるじゃないですか。自分で起こったことに対して「ウワァー!」みたいな声を荒げるシーンがいっぱいあって、それは多分あんまりにもちゃんとシミュレーションしすぎちゃうと起こらないことですよね。先回りして知っていたらできないリアクションというか。

shu3:そうですね。クリアしたときもめちゃくちゃ嬉しいんですよ。

ハマ:そりゃそうですよね(笑)。でも過度じゃないのもすごくshu3の良さだと思いました。カースガノンも3日と11時間かかったけど、なんかこう勝って「よっしゃ……」みたいなマジのトーンで。やったことあるからわかるんですよね。

shu3:めちゃくちゃ疲れてるんですよね(笑)。

ハマ:そうですよね、そう。演出じゃない。一番盛り上がるのは、倒して敵が消える瞬間やムービー中じゃなくて、「イケる!!」という最後の二振りぐらいだったりするじゃないですか。あの時が見てる側も一番グッと来る。shu3は動画内も穏やかな印象が強いんですが、どうにもクリアできないときとか、「マジギレ」とかしてないんですか?

shu3:「ふざけんな!」みたいなですか?(笑)

ハマ:そう、「流石に動画には使えないな」っていうテンションのときとかもあるんですか?

shu3:基本はゲームが楽しくて、好きなゲームは長時間プレイしてしまうタイプなので全然苦じゃないんですよ。だからめちゃくちゃ怒ることは無いですね(笑)。

――ベースに縛りプレイをどんなに入れてても、ゲームは楽しいんだ!っていう気持ちが常にあるんですね。

shu3:はい、すごく楽しいです。

ハマ:それは伝わるもんなぁ。あれだけ負けて、「あぁ~」とか「だよなぁ~」くらいで終えられてるの、本当に同じ人間として尊敬します。俺だったらもうちょっと感情的になってるだろうから、今回、すごく聞きたかったことなんです。実は裏ですげえ投げ出したりしてたのかなって(笑)。でもあのペースで上げてるってことは、放置できないもんなぁとも思って。

――ハマさんは楽器の演奏において、特定のフレーズが何回やっても上手く弾けないようなときってありますか?

ハマ:自分でこんな話を振っておいてアレですけど、あります(笑)。でも練習を続けていれば弾けるし、面白いもんで一回休憩を挟むとできたりもする。

shu3:あー! それは面白いですね。

ハマ:そういうことを自分も別の場所で体験してるから、分かってくることもあるというか。ただ、カースガノンを倒すのに3日かかってるわけで、俺だったらあれはシステムを疑い始める(笑)。

shu3:ハマさんも練習中に「あ、これはいつか"いける"んだろうな」っていう感覚がおありだと思うんですが、ゲームも一緒で。どんなに強いボスでも「これはいつか"いける"んだろうな」っていう感覚があるんです。頑張ればいける、ノーミスなら行ける、いい確率を引ければ行けるっていうのがなんとなくわかると言いますか。

ハマ:なるほどねぇ、それは凄いですね。だって『ブレワイ』があんなに”死にゲー”のボスみたいになるとは思わなかったもの。最後の方、「フロムゲー」みたいになってるじゃないですか(笑)。

shu3:『ブレワイ』って実はボスがすごい作り込まれてるゲームなんですよね。でも攻略を見ると「爆弾弓で終わり」っていうのが定番ですごく味気なかったので、ボスはちゃんと攻略する!と決めていました。

「弓禁止!モップを投げろ!風のカースガノン戦|すべてを越えた超やりこみBotW #20」より

――動画にテロップを入れたり、アニメーションをつけたりすることで、普段ゲーム実況を見ない方にも親切な導入になるだろう、という作戦があったかと思うのですが、そう考えたのは何故ですか?

shu3:僕にはもともと、根本に「自分は凡人だ」っていうのが最初にあって、優秀な人たちの中でどうやって戦っていこうと考えた時に、自分に自信もないし、「トータルで戦っていかないと良いものは作れない」と考えて、そこから「人に伝える工夫」をすごく考えるようになったんです。

ゲーム実況を初めて観たときも当時からすでに面白い人たちはたくさん居て、「自分でもできるかな」と思って始めたものの、やってみたら全然喋れない。「あ、ここにも天才がいるんだ」と思って。そういう天才たちに少しでも近づくために色んな工夫をして、その一端として「わかりやすさ」も重視するようになりました。

これは今日、ハマさんにぜひお聞きしたかったことなんですが、ご自身の活動の中で「人に何かを伝える」際に重視されていることってありますか?

ハマ:自分の仕事に対してですか。演奏することは一旦置いておいて、ラジオの仕事や、テレビで喋る仕事で「自分の伝えたいことが曲がらずに伝わって欲しい」と思うのは当然のことですが、そのために「偽らないでやる」というか「そのままで発信する」ということをすごく意識した時期があって。

 たとえばテレビでもラジオでも出るときには「これは音楽をやってる人間がやってる番組です」っていうのは絶対言うようにしています。僕はミュージシャンで、タレントさん・芸人さんではないから。で、ミュージシャンが呼ばれる番組なので必然、ゲストに音楽関係者が多い番組になり、音楽の人と触れ合うことが多くなるんですよね。平たく言うとプロモーションに来たミュージシャンが、自分の新譜を宣伝するような場面がある。

 僕はそこで、先輩だろうがなんだろうが、音楽の好みなんだから「自分が好きか嫌いか」っていうのはあるじゃないですか。それに、何にでも「新作最高です!」みたいなコメントをするのもすごいイヤで。でもだからといって、「今回のooさんの新譜は俺は全然良いと思いませんでした」とか言うのもマナー違反というか、絶対違うじゃないですか。だから自分なりにルールを決めたんです。「カッコイイ」って言わないとか、「良い」って言わないとか。違う言葉で、表現できる言葉を見つけていかないと、誰が来たって毎週毎週「イイ!」って言ってる人になっちゃうから。

 いまは「意見や批判」を「クレームや文句」と捉える風潮があるじゃないですか。「自分はこう思う」って言ってるだけなのに、「なんでそんなこと言うんだ」とか「それを好きな人達に失礼だ!」みたいな。でもみんな好きなものを食べて好きな人と一緒にいたりして、そうやって生きてるはずなのに、なんだかみんな一辺倒だし、気持ちが悪いなと思った時期があったんです。だからなるべく、さっきお話ししたようなマインドで表に立つようにしてます。それが「生意気だ」とか「わかりづらい」「よくわかんない」とかになったら、それはそれまでだなと思ってるので。一言でいうと「ウソを言わないようにしてる」という。

 あとはまぁ、自分のバンドもそうですけど、付き合いの長い人たちが僕の出る番組とか見て、「お前こんな奴じゃないじゃん」って思われるのがいちばん嫌だったんで(笑)。それは多分、shu3もグループ(ナポリの男たち)で活動しているからわかってもらえるところもあると思うんですけど、家族とか、ただの友達でもそういうのってあるじゃないですか。人の目は別に気にしないけど、その人たちの視線は気になるというか(笑)。

shu3:わかります(笑)。昔のツレが見たらどう思うか、みたいな感じですかね。

ハマ:そうそう。だからさっきのshu3の喋りの話も、流暢に喋る人とか声が良い人とか……実況者の人でもいっぱいいますけど、shu3が愛される所以はきっとそういう人達にはない身近なトーンと、良い意味で整頓されてない喋り、みたいなところなんじゃないかなって思うし、今日まで顔も知らなかったですけど、これが普段のshu3なんだろうなというのは実況を観ていても伝わるし、それは自分の話したこととすごくリンクしたように思えました。

shu3:「やっぱり凄い人には勝てないな」っていう自信のなさが自分の根底にあって、そこから色んな工夫をしてきたので、そう言っていただけると嬉しいです。

ハマ:僕も音楽のことについて話す場面がありますけど、自分はまだ31歳で、音楽の世界って辞書みたいなマニアが世の中にたくさんいるんですよね。「何年の何月のクレジットが誰だ」みたいなのがパッと出てきちゃう音楽好きが山のようにいて。演奏しかり知識もしかりですけど、やっぱり上には上がいるし、そういう意味では僕にも自信はないんです。ただ、そういった知識の豊富な人が言葉巧みに語ることの説得力とは別に、「俺はこれが本当に好きなんだ」っていう熱量で語る人の言葉には、また違った魅力がある。違う方向の説得力があると思うんです。ご自身のことなんで、shu3のその自信のなさみたいなものを否定も肯定もできないですけど、でもいちファンとしては、shu3のコンテンツが好きだし、魅力のほうが勝ってると思うな。

 例えば映画の良さを伝えるのでも、映画マニアの評論ってとても博識で話もすごいなって思うけど、「それより全然喋れなくてもその映画の良さを伝えられる友達とかって居るよね」って思ったりもするので。shu3の事を勝手に画面越しに友達だとは思っていないですけど、でも本当にそういう温かい伝わり方をしているから、その作風にはすごい魅力があると思います。

shu3:自分の好きなことを上手く伝えたいけれど同時に力不足も感じてしまうので、今日そういっていただいて自分でも気づいていない部分が動画のよさにつながっているんだとわかりました。「好きなだけ」が武器になるというか。

ハマ:はい。でも僕もそれだけでやってます。「好きなんだなぁ」って。僕の友達も「なんかハマがよくshu3の動画を紹介してるから見始めたけど、面白いね」とか連絡くれましたし、だから僕が今回言ったようなことは、僕以外にも伝わってることなんじゃないかな。

shu3:すごく自信が付いたというか、ありがたい話です(笑)。

ハマ:いやいやいや、もうとっくに自信満々でいて下さい!(笑)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる