ゲームは本当に“時間の無駄”なのか? 専門家が語る、快楽以外に得られる「スキル」とは

ゲームは時間の無駄? ゲームで身につくスキルを専門家に聞く

 長時間ゲームをプレイしたあと、「時間を無駄にしてしまった……」「この時間を自己投資にまわしておけばよかった……」と後悔することは少なくない。しかし、ゲーム中は頭をフル活用する機会も珍しくなく、実は何かしらのスキルアップが図られているのではないか。静岡県立大学短期大学部で講師を勤め、ゲームとソーシャルスキルの関連性などを研究している社会学者の高田佳輔氏に話を聞いた。 

『Apex Legends』でコミュニケーション能力アップ

――ゲームごとに身に着けられるスキルに違いがありそうですが、各ゲームで獲得できるスキルについて教えてください。

高田:おっしゃる通り、各ゲームの特徴によって身に付けられるスキルは変わってくると考えられます。まず、『Apex Legends』や『Fortnite』などのバトルロイヤルゲームをデュオやトリオでプレイする場合、リーダーシップやフォロワーシップといったコミュニケーションにおけるスキルアップが期待できます。『Apex Legends』では、オーダーやコールなど、指示役(リーダー)が他のメンバーに指示を出し、その他のメンバー(フォロワー)も状況報告などを随時行わなければいけません。

 加えて、フォロワーはリーダーの指示に従うだけではなく、状況に応じてある程度自身で判断して行動する必要があることから、リーダーはもちろんフォロワーも批判的思考やコミュニケーション能力が向上する可能性はあります。

社会学者の高田佳輔氏

――ビジネス向きの実践的なスキル獲得が見込めますね。

高田:はい。ほかのゲームの場合、たとえば『パズドラ(パズル&ドラゴンズ)』のような、主に1人プレイを想定して作られたパズルゲームですと、問題直面の時に新しく有意義な着想を生み出す思考 “創造的思考能力”が向上する可能性があります。他者との協働的な集団活動が存在するMMORPG であれば、先述した通り、『Apex Legends』同様、集団での問題解決能力が向上する可能性がありますね。ゲームのジャンルは幅広いため、この場ですべてのジャンルに触れることは難しいですが、「無駄な時間を過ごした」とガッカリする必要はあまり無いように感じます。

ゲームが居場所を作ることも

――仕事ではコミュニケーション関連のスキルを求められるシーンが多いですが、コミュニ ケーション能力向上に特化したゲームなどはありますか?

高田:私はオンラインゲームプレイヤーに対して調査を行ったことがありますが、『ファイナルファンタジーXIV』のようなMMORPGのプレイヤーはチームワーク能力が向上しているという分析結果が出ています。特に、エンドコンテンツというレベルの高いプレイヤー向けのコンテンツに参加しているプレイヤーは、チームワーク能力や集団問題解決能力も向上していることが伺えました。

――仕事前にプレイしておくと能力を発揮できるゲームはありますか?

高田:大体の仕事において、仕事の前後という比較的近いタイミングでのゲームプレイは特に影響はないように思われます。ただし、反射神経を大きく活用する仕事の場合、それらを大きく活用するようなFPSや格闘ゲームであればウォーミングアップに近しい効果があるかもしれません。

――ゲームを息抜きとしてプレイする人も多いです。リラクゼーション効果が期待できるゲームはありますか?

高田:MMORPGで何らかのギルドやフリーカンパニーなど、コミュニティに属している場合、ゲーム内コミュニティがもう一つの我が家のように、自分があるがままでいられる落ち着ける場所になることは往々にしてあります。その場でのコミュニケーションがリラクゼーション効果をもたらすことは、過去に実施したプレイヤーへのインタビューから伺えました。

――むしろプレイするとビジネススキルやソーシャルスキルが低下するゲームはあるのでしょうか。

高田:そういったゲームの存在についてはなんとも言えませんが、1人用のゲームを延々繰り返している場合、その時間で実行可能であったであろうコミュニケーションや勉強時間などを失っているため、得られたであろうスキルを獲得できなかった可能性はあります。しかし、これはゲームの影響というよりは、個人の時間の使い方が問題であり、ほかの趣味でも同様の問題が生じますね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる