SDカードに保存した写真やセーブデータが消失する恐れも 確認しておきたい"メモリ"の仕組み

スマートフォンの「メモリ」って何?

スマホのスペックにある「ROM」って何?

 さてAndroidスマートフォンのスペックを見ると、しばしば「RAM/ROM」という表記が行われている。RAMについては前述した通りだが、「ROM」とは何だろうか。

 ROMは本来「Read Only Memory」の略で、日本語で言えば「読み込み専用記憶装置」となる。DRAMが通電している限り、自由に読み書きできていたのに対し、ROMは一度記録してしまうと、その内容は書き換えられなくなってしまう、一度限りの記憶装置だ。ニンテンドーSwitchのゲームカードは一種のROMだし、家庭用ゲーム機のソフトの多くはROMの形で供給されてきた。光学メディアになってからも、基本的には「CD-ROM」や「DVD-ROM」「BD-ROM」といった「ROM」の形で供給されている。

 もっとも、ROMにもいくつか種類があり、再書き込みや消去できないものは「マスクROM」と呼ばれ、前述したようなゲームカートリッジなどに利用される。これに対して「一度だけ書き込みできるもの」(OTP-ROM)や「紫外線で内容を消去できるもの」(UV-EPROM)、「電気的に内容を消去できるもの」(EEPROM)、そして「電気的に何度も読み書きできるもの」(フラッシュROM)といった種類が存在する。特に身近なのが「フラッシュROM」(フラッシュメモリ)だ。

 フラッシュROMは日本生まれの技術で、身近なところでは「USBメモリ」や「SSD」、「SDカード」などのメモリカード類に使われている。NAND型とNOR型という種類に分かれているが、メモリカードに使われているのは「NAND型」のほうだ。NAND型は大容量化しやすく、当初は数MB単位だったメモリカードも、いまやTB単位まで登場するに至っており、読み書き速度も初期と比べて格段に高速化している。

Pixabayより Photo by Photo Mix

 USBメモリやSSDにフラッシュROMが使われていることを紹介したが、スマートフォンのストレージにも、同じくフラッシュROMが使われている。このことからスマートフォンのスペック表ではストレージを指す単語として「ROM」が使われるようになったと思われる。ところがこの表記は古くからコンピュータに慣れ親しんできたユーザーほど違和感を感じるもので、「自由に読み書きできるストレージがROMとはけしからん」と思えてしまう。しかし厳密にはフラッシュROMなので、表立って文句を言うのもちょっと違うし……となってしまうのだ。

 いずれにしてもスマートフォンで「ROM」表記があれば、それはHDDやSSDのようなストレージの容量を指す。Android端末では比較的低容量の端末が多かったが、最近は本体に64〜128GB程度のストレージを持つものも増えてきた。RAMと違ってROMの容量は直接性能に影響するものではないが、多ければ多いほど写真やアプリなどのデータを保存できる。とはいえ、多くの機種では(micro)SDカードで容量を拡張できるので、ある程度は妥協してもいいだろう。iPhoneではROMではなく「ストレージ」と表記されるが、内容は同じ。iPhoneの場合、メモリカードで拡張できないので、購入にあたっては予算の許す限りストレージ容量が大きいモデルを選んだ方がいいだろう(コストパフォーマンス的には標準の2倍(128〜256GB)程度がお勧め)。

 ところでRAMのように電源が切れると内容が消えてしまうメモリを「揮発性メモリ」、ROMのように電源が切れても内容が消えないメモリを「不揮発性メモリ」とも呼ぶ。フラッシュメモリは不揮発性メモリの一種なのだが、読み書き可能という特性もあってか、不揮発性には寿命があり、具体的に、数年通電せずに放置しているとデータが消えてしまう。このため、USBメモリやSDカードなどのメモリカードをデータの保存用に使っていると、大事なデータがいつの間にか消えてしまうということが起きる。特にデジタルカメラの初期には、フィルム感覚でメモリカードがいっぱいになると、どんどん新しいカードを買って、古いカードは記録用にと残しているというユーザーが(比較的高齢者に)いたのだが、こうしたデータはもはや失われている可能性が高い。同様の理由でSSDも長期保存には向かないので、データの保存に使っている人は、早急に別のメディアに保存しなおすことをお勧めする。

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