『Weekly Virtual News』(2022年8月8日号)
海外へ広がる『REALITY』と、広瀬香美を通して広まりそうな「アバター改変」
スマートフォン向け配信アプリ『REALITY』は、国産でありながら海外ユーザーの利用者が多い。8月3日に発表されたデータでは、海外ユーザーは8割を超え、63の国と地域で利用されていることが明かされた。全体のユーザー数も、大きく伸長した2021年からさらなる成長を遂げている。
2018年のリリース時は、著名なVTuberによるイベント配信プラットフォームの側面が強かったが、いまでは多種多様な人がいつでもバーチャルの姿で配信できる場へ発展を遂げている。ここから出世したバーチャルタレントも少なくない。そして国内だけでなく、世界各国の「バーチャルな存在になりたい」という願いを叶えているのは白眉だろう。
そして『REALITY』はいま、メタバースプラットフォームとして拡張されつつある。アプリ内から仮想空間へ入室し、様々なコンテンツが体験できる「ワールド」機能の実装が進行中なのだ。先日のアップデートでは、多人数の同時参加が実現し、「メタバース」のイメージに一歩近づいた。別種のプラットフォームからピボットする形でメタバースへと発展した『REALITY』が、この先どんな場を作り出すか注視してみるとよいだろう。
『VRChat』では先週、「にじさんじEN」の公式ワールド「Obsydia Crossing」が、8月1日から一週間限定で公開された。今年のはじめにも公式ワールドを公開した「にじさんじEN」だが、その時の発起人であるSelen Tatsukiが所属するユニット「OBSYDIA」の活動1周年を記念したワールドだ。
渋谷の街を「OBSYDIA」でジャックしたワールドには、「OBSYDIA」ゆかりのアイテムや、メンバーが実際に使っているデフォルメ3Dモデルなどが配置されており、オフィシャルワールドとしての作り込みは前回以上だ。さらに、「OBSYDIA」以外の「にじさんじEN」ユニットの立て看板も存在し、「にじさんじEN」ファンのための空間として完成している。
「にじさんじEN」のみならず、最近は国内グループの「にじさんじ」も、『VRChat』配信を行ったり、ワールド紹介のツイートを投稿したりするなど、『VRChat』へのアプローチがさらに広まりつつある。活動の軸にするというより、「ちょっとしたお出かけ先」として浸透が始まっているのかもしれない。
驚くべき速度感で『Meta Quest 2』の購入にこぎつけた広瀬香美は、これまた驚くべきスピードで、世界最大のバーチャル空間上での展示会イベント『バーチャルマーケット2022 Summer』への出演が決定した。JVCケンウッドの出展ブースにて、すでに出演が決まっていたピンク・レディーに続き、急遽決定したとのことだ。ステージでは本人の歌唱のみならず、ピアノ演奏も披露されるという。
興味深いのは、『バーチャルマーケット』へ登場するにあたって用意されたアバターが、完全オリジナルではなく、既存品を改変したものだったことだろう。「広瀬香美2号」と本人が呼ぶそのアバターは、人気アバタークリエイター・ひゅうがなつ制作アバターのひとつ「まりえる」のカラーリングや表情などを一部変更・調整したものと思われる。元の「まりえる」に見られる猫耳と尻尾もオミットされているようだ。
既存品のアバターを自分好みに改造する「アバター改変」は、『VRChat』ユーザーの間では一般的な文化になりつつある。オリジナルアバターを制作・発注するのではなく、3000円~6000円ほどの価格帯(これを大きく超えるハイブランド品もある)で販売されるアバターや、対応する衣服などの3Dモデルを購入し、自分に合ったアバターへと組み立てる営みは、現実のファッションに近いものがある。「広瀬香美2号」をきっかけに、「アバター改変」の認知度が広がり、アバターそのものの敷居も下がるだろうか。